第1248話 恐ろしき捉術再来、空空妨元
妖魔退魔師『三組』副組長の『ヒサト』が『
――捉術、『
その場に居た十数人の内、四人程が迫りくる妖魔の攻撃を回避しようとしたり、妖魔を仕留めようと攻撃を優先していた為、この『上位妖魔召士』達が同時に使った捉術の影響範囲から逃れるのが遅れてしまい、遂に術式の術中にはまってしまうのであった。
しかし今ならまだ助けられると判断した他の妖魔退魔師達は、その四人を術式の影響範囲外まで連れ出そうと再び駆け出して行ってしまう。
――そしてこの仲間を助けようとした妖魔退魔師達の判断こそが、この戦いの結末を決めてしまう事になるのであった。
「カカカッ! 大した魔力も耐魔力も持たぬ腕っぷしだけの妖魔退魔師が、わざわざ展開されている捉術の範囲内に戻ってくるとは愚かな奴らだ」
そう口にする『上位妖魔召士』の男の言葉通り、僅かな時間であれば仲間達を救えると判断して、よく捉術という妖魔召士の使う技法の効力を侮っていた数人の妖魔退魔師は、その『
そしてそこで妖魔召士達の追撃は終わらず、更に周囲に居る妖魔召士達の目が青く輝いて行く。
――
『空空妨元』の捉術の範囲内に最初からいた四人の妖魔退魔師に加えて、その四人を救出しようとした五名の妖魔退魔師達もまた、妖魔召士達の『魔瞳』の影響下に陥ってしまった。
妖魔召士の『魔瞳』は妖魔退魔師達にとっては、過去の産物といえるモノに成り下がったと思われているが、それは回避が容易に出来る事になったからこそいえる事であり、回避が出来ずにこうして直撃してしまえば、それは前時代まで妖魔召士側、妖魔退魔師側、両組織を含めて避けようのない『最強の技法』として定着していた頃の数多ある妖魔召士の『捉術』を上回る驚異的な『技法』の時代へと巻き戻ってしまう――。
『空空妨元』によって妖魔退魔師の隊士達は幻覚を見せられてしまいそれが現か幻か、その認識を司る器官。五感や大脳へ『直接支配』を受けてぐちゃぐちゃにかき乱されてしまった。
空空妨元の捉術の相手の脳への『直接影響』は、同じ捉術技法の中の一つで敵を殺す事に長けた『
幻覚を見せるという一点に絞れば『空空妨元』に近しい術や技法は数多存在するだろうが、この『空空妨元』の捉術は、実際に受けた側がこれまで生きてきた中で経験してきた体験や認知している全ての構築されたその人間が持つ『世界観』を根底から、その人間自身の考える意思によって再構築し直される捉術である。
視界に映る情報、存在する物が発する匂いの情報、音の発信に対する聴力に於けるそれらの情報の制御。更には今回の場合で言えば目に映る視界の情報が支配された事によって、目に映る虚偽の情報は所謂幻覚作用となって価値の判断を狂わせられてしまい、五感から受ける交感神経に作用を及ぼされてこれまでこの妖魔退魔師達が生きてきた中で恐怖を抱いた時の状況再現が、誰でもない本人自らの『記憶』によって再現されてしまうのであった。
つまりこの捉術の影響下に居る人間達が、妖魔退魔師と名乗る前の稚児と呼べる年齢の頃や、初めて妖魔と戦った時の恐怖感、その妖魔の存在の大きさ等が、彼の覚えている脳内の記憶を再現構築されてしまい、
彼ら妖魔退魔師の見ている幻覚を『上位妖魔召士』達が見せてはいるのだが、実際に術中に居る妖魔退魔師がどのような幻覚を見ているのか等は、術を施した側である妖魔召士達にも分からない。
幻覚を見ている妖魔退魔師自身が、これまでこの世界に生を経て経験や体験を通して『世界観』を構築してきたのだから、別の人間である者が術にかけた者の『世界観』を追体験してきたワケでも無く、全てをキッチリと認識が出来る筈が無い事は当然であった。
この術式は強力ではあるが『魔瞳』以上に相手にかける事が難しく、確実に回避を行わないと判断出来るか、相手がどうしようもない程に油断している時くらいにしか使われない『捉術』であるが、確実に当たる前提で言うならば、これ程までに恐ろしい『捉術』もまた数える程しかないだろう。
つまりこの捉術の影響を受けた妖魔退魔師が、どういった行動に出たのか――。
「な、何故入隊試験でランク『6』の妖魔がぁ……!」
「う、うわああっっ!! よ、妖狐『
「よ、妖魔団の首領『
妖魔退魔師の入隊試験の時に感じていた恐怖の記憶そのままに、今の『
彼ら古参の『三組』に属する幹部達が、過去の『ケイノト』の町で実際に戦った『妖魔団の乱』の経験を基に、自分と同じ仲間である筈の妖魔退魔師の情報を脳内で再構築されてしまい、目の前で再び『妖魔団』に属していた『
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