第1179話 妖魔召士達の意図
「最初に定めた目標に今も一貫して追い続けた結果がお主の強さという事か。そしてそれだけの強さを身につけているというのに、まだ納得をしている様子はない」
シゲンは机の上で指を組んでいた姿勢から、ゆっくりと背筋を伸ばす。
(ソフィ殿の言葉に嘘偽りがあるどころか、自分の掲げた目標を達成しようとする姿には執念すら感じさせる。ここまで愚直に『理想』を追い求める程だ、強くなって当然とも言える)
シゲンはソフィが思い描く強さについての持論を知り、そして彼自身の強さの秘訣を言葉を通して知ったが、ここまで自分を追い込む者が弱いわけがない。シゲンはミスズの話と先程の『
「逆に我もシゲン殿に訊ねたい事がある。スオウ殿からシゲン殿は、この妖魔退魔師という組織で長きに渡って長を務めていると聞いた。組織を束ねるという事は僅かな期間であっても難しい事だと思うが、日夜どのような事を考えてこの組織を束ねているのだろうか?」
ソフィが『特務』の施設に居た頃に、スオウからシゲンという男について耳にした時から、一度聞いておきたかった事をこの場を好機と捉えて訊ねるのだった。
何故そのような事が気に掛かるのかとシゲンは、ソフィの真意を見極めようとするような視線を放つが、その『シゲン』の圧のある目に対しても変わらず返し続けて来るソフィの視線に、どうやらソフィ殿は、本当に知りたがっているのだと理解したようで『シゲン』は頷いて静かに口を開いた。
「組織の中の事に対しては特に私が何かを強制させようとはしていない。その辺はミスズを副総長に任命した時点で全幅の信頼を彼女において任せている……が、我々は『妖魔』の手から力の弱い者達を守る為に存在しているのだという事を隊士全員に最優先に考えてもらっている。そして隊士達も皆、私の願い通りに各町の護衛を行い結果を残してくれている。私はそんな妖魔退魔師達を誇りに思っているし、何かあれば私は妖魔退魔師の為にこの命を常にかけるつもりでいる」
堂々と胸を張りながら腕を組んでソフィに返答を行うシゲンは、確かに言葉に偽りのようなモノが欠片も混じってはいないとソフィは感じる事が出来た。
「ではシゲン殿、先程スオウ殿から受けた報告についてだが、妖魔召士が『コウゾウ』殿を殺めたという事だが、それに対してシゲン殿は妖魔召士達をどう扱おうと思っておる?」
コウゾウは妖魔退魔師ではないが、予備群は妖魔退魔師の下部組織であるようだと聞かされていたソフィは、組織の仲間の為に命をかけると発言したシゲンにどう落とし前をつけるのかを訊ねるのだった。
「無論。誰が相手であろうと組織に属する大事な同志を狙った以上はそれ相応の報いを受けてもらう。しかしそれは相手が何処の誰がやったのかを正確に把握してからだ。同じ妖魔召士であっても現在の妖魔召士組織の暫定の長の立場に居るゲンロク殿や、そのゲンロク殿についている妖魔召士組織としては、前回の会合から省みても預かり知らぬ問題であると、かなり高い確率で言い切る事が出来るだろう。もちろん決定づけるわけでは無いが、今は他に怪しい『妖魔召士』達が居る事から、そちらの方を洗い出す方が先決だろう」
それは少し前に『ゲンロク』殿の里に訪れた時、ゲンロク殿の隣で何やらキナ臭い事を行っている様子であった『ヒュウガ』という男の事を指しているのだろうとソフィは考えるのだった。
(あのヒュウガという男は裏で色々と悪さを働いておったようだが、我らが『ゲンロク』殿の里で色々と森で起きた事などを告げていく内にその隠しておきたい事が次々と明るみになっていき、相当に我に対して恨むような目をしておった。あの『
ソフィは『コウゾウ』を襲ってきた妖魔召士達に命令を出したのが『ヒュウガ』であったのならば、自分達が関係しているかもしれないと言う事をこの場で口にするつもりで、シゲンに再び声を掛けるのであった。
……
……
……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます