第1180話 本当の狙い

「シゲン殿の言うその他に居る』とやらが『ヒュウガ』という男であるのならば、我も少し関わっておるのかもしれぬ」


「どういう事か説明をしてもらえるか」


 突然のソフィの言葉に少しだけシゲンの目が険しくなった気がするのだった。


「少し前にスオウ殿がお主達に我らの説明を行ってくれたと思うが、我らは仲間の『エヴィ』を探しにこの世界を流浪しておったのだが、その時に『ゲンロク』殿の居る里の屋敷にエヴィが現れて何か一悶着を起こしたのだという話を『エイジ』殿に聞いたので向かった事があるのだ」


「ほう」


(それはまた異な事だ。ソフィ殿の仲間が『妖魔召士』の里に居た理由はイダラマ殿の都合か?)


 シゲンはソフィの話す言葉が気に掛かったが、質問などは先に内容を全て聞いてからにしようと判断して黙って頷くのだった。


「我らはエイジ殿の案内を受けてその妖魔召士の里に居る『ゲンロク』殿に会わせてもらえる事になったのだが、その場には『ヒュウガ』という男が居たのだ」


「ヒュウガ殿は長らくゲンロク殿の片腕として、共に行動をしていましたからね」


「むっ……?」


 ソフィが続きを話そうとしていたところに、いつの間にか部屋に戻って来ていたミスズが言葉を続けるのだった。


「ソフィ殿、話の腰を折ってすみません。私もその話を詳しく聞きたいのですが宜しいですか?」


「もちろん構わぬよミスズ殿。むしろ『ヒュウガ』とやらの話はお主にも聞いておいてもらいたいところだった」


「ありがとうございます」


 ミスズは軽く会釈をするようにソフィにお礼を言った後に、シゲンの隣の席に腰を下ろすのだった。


 椅子に座ったミスズはそのままソフィに、視線で続きをお願いしますと促すのだった。


「屋敷に居たそのヒュウガだが、最初は表向きゲンロク殿の忠実な側近というイメージだったのだが、どうやら裏では色々とよからぬ事を画策しておったようでな。現場を離れて里に隠居同然の生活を行う『ゲンロク』殿は、ケイノトに作ったあやつらの下部組織の『退魔組』を部下に一任しておったようで、その退魔組の現場を預かる者からの報告は全て側近のヒュウガとやらに管理させていたようだが、ある時から退魔組の報告をゲンロク殿には伝えずに重要な組織の情報は全てヒュウガが握り、ゲンロク殿には知らされずに蚊帳の外に置かれていたようだ」


 ソフィは実際に『加護の森』で無理矢理従わされて戦わされていた『動忍鬼どうにんき』の事を思い返し、それらを禁術と知りながらも平気で使用していた『特別退魔士とくたいま』とやらの言動や行動、そしてそれを黙認というよりかは使う事を推奨していたのが、ヒュウガだとエイジから聞かされていた事を思い出しながら、再びソフィは口を開いて『妖魔召士』の現状を『妖魔退魔師』の組織の最上位に居る二人に告げていく。


 徐々にソフィの話を聞いていたシゲンは眉を寄せて険しい表情を浮かべていき、そして横に居た副総長のミスズに至ってはヒュウガに対して、嫌悪感すらを感じている様子であった。


「だが、我々が実際に『加護の森』で『特別退魔士とくたいま』とやらに従わされていた妖魔の事や、それを行っていたタクシンという男の事を明るみに出したところ。流石に驚いた様子を見せたゲンロク殿だったが、その怒りの矛先は当然『ヒュウガ』に向けられたようでな」


 ソフィ達が訪れる前までは、ゲンロクはヒュウガのやる事を信頼して自慢の右腕として扱っていた事だろう。そんな側近であるヒュウガが実は裏では、預かり知らぬところで自分を裏切ろうとしていたのだから、怒りを見せて当然であろう。


「屋敷を出る時ヒュウガは我に対して相当な恨みを込めた視線を向けてきたのでな。何かやってきそうなモノだと考えていたのだが、その後に我らが『煌鴟梟』のアジトに乗り込んだところに『妖魔召士』が現れたのだ。これは偶然とは思えぬと思ったのでな、お主らに伝えておこうと思ったのだ」


「なるほど、そういう事でしたか」


「ふむ……」


 ソフィの話を全て聞き終えた後に二人は色々と考え始めていたが、やがてシゲンとミスズは互いに視線を交わし合うのだった。

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