第1161話 魔瞳違いと対策

 『妖魔召士ようましょうし』達と自分達魔族の使う『魔瞳まどう』の違いを考察する事で、自分達の使う『魔瞳まどう』と人間達の『魔瞳まどう』の違いは明白だという事を理解できたソフィであった。


 確かにこの『妖魔召士ようましょうし』達の『魔瞳まどう』であれば、ミスズの告げた発動のタイムラグを狙って回避をする事も可能であると考えられた。だが、誰でも回避が出来るだろうと思ったワケではなく、最低でもソフィの世界でいえば『大魔王領域』に居る者達が最低基準と言えるだろう。


 あくまで現実的に『妖魔召士ようましょうし』達の『魔瞳まどう』を『相殺』ではなく『回避』しようというのであれば、その領域にまで届いていない者達では、流石に『妖魔召士ようましょうし』達の押し寄せる魔力の波の速度に飲み込まれてしまい、回避を行う事は不可能だと断言出来る為である。


 『妖魔退魔師ようまたいまいし』ではなく、その下部組織と位置付けられている『予備群よびぐん』。この『予備群よびぐん』達はこの世界の強さの基準値で、ランク『3』からランク『4』と言われているらしく、ソフィ達の世界の魔族達の基準値で表すならば、このランク『3』から『4』が大魔王『最上位領域クラス』くらいだろうか。


 しかしソフィが『妖魔召士ようましょうし』の『魔瞳まどう』を実際に受けてみた感想になるのだが、現代のアレルバレルの世界の魔族達で『妖魔召士ようましょうし』チアキの『魔瞳まどう』を回避出来る者は、潜在する力を除いた現状では辛うじて『リーシャ』と『エイネ』くらいのものだろうか。 『ディアトロス』や『ブラスト』はどちらかというと可能性があるのは『回避』ではなく『相殺』の方であろう。


 そして今ソフィが例に挙げた者達は『妖魔召士ようましょうし』の『魔瞳まどう』に対して『回避』や『相殺』も可能になるだろうとソフィは断言出来るが、それでも現状では確実に不可能だと言えた。あくまで将来を見据えた上でソフィがそう思っただけの事である。


 そして話を最初に戻す事になるがミスズ殿が告げた通りであれば、目で頼る事をせずに『回避』を覚えられる領域に達成できるのが、このランク『3』から『4』と謂われる『予備群よびぐん』に該当するコウゾウ殿であるらしい。


 現状の『九大魔王』達では『妖魔召士ようましょうし』の『魔瞳まどう』は回避が出来ないのと同様に、コウゾウ殿も将来を見据えれば『リーシャ』達のように『回避』が出来る可能性があるらしい。ソフィが『九大魔王』達の潜在する力に可能性を見出しているのと同じで『妖魔退魔師』組織の副総長ミスズもまた、相当にコウゾウの将来に可能性を見出しているという事なのだろう。


 ソフィにはまだコウゾウが『妖魔召士ようましょうし』の『魔瞳まどう』を対抗できるとは思えないが、それは詳しくコウゾウの事が分かっていないからに他ならないだろう。実際に戦うところを見て見ぬ事には何とも言えなかったが、実際に目の前に居るミスズやナギリであれば『回避』は可能だろうと思える事からも、いずれはコウゾウ殿も可能になるという事だろう。


「ミスズ殿。ひとまず『妖魔召士ようましょうし』達の扱う『魔瞳まどう』についての対策は理解出来た」


「それは何よりですソフィ殿」


 ソフィが理解出来たと告げた事で、ミスズは笑みを浮かべて頷く。


「その上で今度はお主に、我らの魔瞳も同様に『回避』が出来る物なのか、それを確かめて欲しいと考えておるのだが、この場で少し試させてもらえないだろうか?」


「え?」


 『妖魔召士ようましょうし』の『魔瞳まどう』を絡めてコウゾウの有能性を伝えたかったミスズは、ソフィにその事を伝えられて理解してもらえた事で満足していたのだが、まさかその続きがあったとは知らず、驚きの声をあげるのであった。


 ミスズはちらりと同じ部屋の端で、こちらを見ていたシゲンの方を見る。その途中でどうやらミスズとソフィの会話を聞いていた、ヌーやセルバスが慌てて視線を逸らすのが見えた。ミスズはヌー達の事は気にせずに、こちらも会話が聞こえていたであろうシゲンの様子を窺う。


 やはり会話を聞いていたのであろうシゲンは、ミスズからの視線に頷きで反応を示した。どうやらソフィの提案に対して、構わないから試してみろと言う意味の頷きなのだろう。その事を正しく理解したミスズは、視線をソフィに戻して口を開くのだった。


「分かりました。構いませんがもう少し広い場所へ行きますか? 残念ながら特務の訓練場までの広さはありませんが、ここよりは広い部屋がありますので」


 ソフィ達も『魔瞳まどう』は使えるという事は、これまでの話の中から理解は出来ているが、あくまでミスズ達の『魔瞳まどう』の知識は『妖魔召士ようましょうし』達の扱う『青い目ブルー・アイ』でしかない為に、広い場所が必要なのだろうと考えが過ったようである。


「いや、ここで構わぬよ。我達の使う『金色の目ゴールド・アイ』は魔力の波をぶつける必要はないのでな」


「成程、分かりました」


 ソフィの言葉を聞いたミスズは、どうやら同じ『魔瞳まどう』であっても『妖魔召士ようましょうし』達の扱うモノとは別物なのだろうという事を明確に察したようであり、それを理解した上でソフィに承諾の頷きを見せたのだった。


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