第1082話 威圧よりも恐ろしい、不思議な重圧
一方その頃ソフィ達は『サカダイ』の『
「はぁ、何というかキミが話してくれた内容は、どれもこれも俄かには信じ難い話ばっかりだね。君たちが魔族なのだとか、別の世界からこのノックスの世界に来たとか、そういう話は置いておくにしても『コウゾウ』を襲った『
ソフィ達がこの世界に来てから起きた出来事はどれもこれも大きな出来事ばかりであり、まるで創作の話を聞かされているような、そんな感覚でスオウもそのスオウの部下であるサシャも聞いていたようだ。
「でもスオウ組長。この方々の話の端々は本当の事だと思いますよ。会議で副総長が説明を行っていた『
ソフィ達の話を完全に信用しているわけでは無い様子だが、それでもスオウ組長よりもここにきてサシャという副組長の方が、まだ話が出来るようだとソフィもヌーも同じように考えるのであった。
「じゃあサシャ、キミはこの方々が『
どうやら『
ソフィはスオウとサシャが会話をしている横で、あのチアキが使役していた鬼の『式』である『
「何か楽しそうだけど、どうかしたのかい?」
「クックック。お主達が奴らの事を『
そのソフィの言葉に、スオウとサシャは無意識に顔を合わせた。
『
「……」
スオウはサシャと顔を合わせていたが、どうやら興味をそそられたのかスオウは、気づかれないようにそっと机の下で右手を帯刀している刀にあてた。
そして視線をソフィに合わせた瞬間、スオウの全身が総毛立つ。そこには何と先程まで嬉しそうな表情を浮かべていたソフィの目が、まるで別人の目に変貌していたのである。
――覗き込んだその目は、信じられない程に
そしてこれ以上見ていると危険だと『
――それは単なる恐怖ではなく、彼が体験した事のない何か。
不安と恐怖も勿論あるのだが、この目を見ていると全てを投げ出して考える事を放棄して、彼に身を預けてしまいたくなるような、そんな謎の安心感のようなモノが感じられるのである。
彼の不思議なその目に完全に抗えないわけではないが、ここは簡単には逸らしちゃあ行けないとスオウはソフィの目を見続ける。
――彼が感じている感覚は何も間違ってはいない。
大魔王ソフィの抱く願望。その渇望ともいえるものは、百にも満たぬ寿命しか持たぬスオウでは、決して理解の及ばない
『アレルバレル』という世界を離れる前、ソフィが諦観してしまった願望。
自分より強い者と至高の戦いを繰り広げたい。そして可能なのであれば、全力を賭した上でその存在に、
アレルバレルの世界の全てを知り尽くして尚、自身が望む物は手に入らなかったモノ。しかしその一度諦めた願望は『
一度は全てを放棄した夢、そして再び目の前に垂らされた糸。その叶わなかった筈の願望が、再び今ソフィの心に抱かれている。
スオウが重圧に感じたソフィの目は、そのソフィの願望全てが内包されていた。つまり彼がソフィの目を見て、不思議な安心感に包まれたように感じたのは、ソフィの深淵に抱く願望や、諦観、希望、絶望。
――その全てが内包された掛け替えの無い、
(成程、こりゃあコウゾウ達に手に掛けた者達『
「……長、……オウ、……長!」
「スオウ組長!!」
「ああ、聴こえているよ」
先程まで顔を合わせていたスオウ組長が『
「スオウ組長、一体どうしたというのですか!」
スオウが刀に手をあてた所は見ていたサシャではあったが、そのスオウが何をしようとしているのかに注目がいき、そのままソフィの目を見る事はせずに、スオウに意識を向けていたサシャは、突然のスオウ組長の変貌ぶりに驚いて、慌てて声を掛けたのであった。
「いや、何でもないよサシャ」
ようやくスオウはソフィから視線を外して心配そうにしている自分の組の副組長に、安心させるように声を掛けるのだった。
「クックック、大したものだな」
ソフィがそう呟くと隣に居たヌーが反応する。
「ああ、確かに大したもんだ……」
『ソフィ』と『ヌー』が『スオウ』という小柄な少年を認めるような口ぶりを見せる横で『
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