第1066話 櫓門と跳躍
スオウは町の中の探索を自分の組の若衆達に任せた後、二組の副組長サシャを伴って、サカダイの入り口の一の門に向かった。普段のスオウは、二の門の内側にあるサカダイの町から出る事はなく、基本的には作戦命令が出される時以外は、訓練道場で自分の技を磨いている為に一の門に来ることは珍しい。
一の門へと足を運んだスオウを見かけた、一の門の管理をする『
「これはスオウ様。このような場所に来られるとは珍しいですね、これから外へと出られるのですか?」
「いや君達にも通達がいっていると思うんだけど、俺達はある人物を探していてね。ちょっと櫓門の上から外を見てみようと思ったんだ」
「屋根の上から……? は、はぁ、分かりました。おい! 誰か櫓門にのぼる為の梯子を持ってこい」
スオウが櫓の屋根の上にのぼると告げた為『
「いや、その必要はないよ」
そう言うとスオウは何とその場から跳躍をして見せたかと思うと、器用に石垣のでっぱり部分に足をつき、その場から更に飛び上がっていく。そしてあっさりと十メートルはある高さの櫓門の屋根部分に到達する。
門を守る『
「いいですか? あなたもスオウ組長が町中の隊士達を動かしている事や、この場に来ていた事は忘れなさい。決して副総長達に伝わる事のないように、細心の注意を払いなさい」
「わ、分かりました……!」
「宜しい。それでは貴方は自分の仕事に戻りなさい」
そう言って『
…………
「俺もちょっと
梯子を使わずに華麗にバランス感覚を用いながら壁をのぼって、櫓門の屋根にあがったスオウやサシャを見て『予備群』の兵長も挑戦してみようかなっと考えるのであった。
…………
一足先に櫓門の屋根の上にのぼったスオウは、左手で双眼鏡を覗くような仕草をとりながら、十メートル以上の高さから周辺を見渡し始めていた。
「どうですか組長、何か発見はありましたか?」
数秒程の遅れでスオウの元に辿り着いたサシャは、手で視野を狭めながら遠くを見渡すように見ていたスオウに声を掛けた。
『
当然視力の悪い隊士は少なく、ほぼ全員が十メートル以上離れた場所からでも、敵の動きを見る事が出来る程の視力を有している者が多い。
特にスオウはそんな他の『
そしてどうやらこの高さからでもスオウには色々と見えている様子で『サシャ』の質問から数秒間、辺りを見渡していたスオウだったが、そこで唐突に口を開いた。
「ああ、やっぱり外にヒントが転がっていたようだよ。サシャ」
スオウは左手で視野を狭めながら片目で一点に絞って外を見ていたが、何か発見があったようで、にやりと笑みを浮かべながらサシャに返答をする。
そのスオウが見ていた先には、
――それはソフィ達の姿であった。
(ははっ、いくら探しても町の中に居ない筈だ)
どうやら別の『
(道理で副総長殿が俺にイダラマ殿を見張っておけと告げた理由だ。イダラマ殿の姿は見失ったが、代わりにアイツを捕えて事情を吐かせればいいよね)
「サシャ、俺はあの離れていく『
「すみません……。私はスオウ組長程に目が良くありませんので、何がなんだか分かりませんが、とりあえず町に誰かが来ると言う事は分かりました。私はその者達の相手をすればいいんですね?」
「ああ、そう言う事だ」
言うが早いかスオウは信じられない事に、櫓門の屋根の上の端まで歩いて行ったかと思うと、思いきり助走をつけた後に、その櫓門の屋根の上から飛び降り始めるのであった。
風の抵抗をものともせずに、ソフィ達が向かってくる方向とは、違う方角の地面にそのまま着地したかと思うと、信じられない跳躍を再び見せながら、池を飛び越してエイジを先回りし始めた。
「やれやれ……。総長や副総長だけではなく『組長格』の方々も
櫓門の上に居たサシャはその人間離れしたスオウの動きを見て、同じ『
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