第1065話 出世欲と貴重な手柄
「あーあーお前のせいでずぶ濡れだよ。てめぇどうしてくれるんだ」
ソフィはエイジの後ろ姿を見ていたが、やがて聞こえて来た声に振り返ると池に落とされた不満を愚痴るセルバスが居た。
「いちいちお前はうるせぇ野郎だな。殺されなかっただけでもマシだと思えや」
「なんだよ、いつも通りのお前に戻っちまったな」
ヌーが先程のエイジに感謝の言葉を告げたり、旅籠の屯所でテアを相手に世話を焼いていたところを見ていたセルバスは、自分に対する扱いだけは良い事なのかどうかは分からないが、昔とこれっぽっちも変わっていないと口に出して告げるのだった。
「俺はいつも通りだろうが? 何を言っていやがる」
「はいはいそうだったな、お前はいつも通りの嫌な奴だよ」
セルバスは溜息を吐きながら諦めた様にそう言っていたが、それを見たヌーはイラっときたのか、再びセルバスを蹴り飛ばして池に落とす。
「テア、ソフィ、そろそろ行くか」
「ぐぉ……っ! て、てめぇ……、待ちやがれ!」
ソフィ達に声を掛けた後、ヌーは池に落ちたセルバスを無視して橋を渡って行ってしまうのだった。
「お主らは本当に仲が良いのだな」
まるでコントをしているように池に落ちまくっていたセルバスに、手を貸しながら声を掛けるソフィであった。
……
……
……
サカダイの町の外でエイジと別れたソフィ達だったが、同時刻『サカダイ』の町の中は普段よりも騒がしさを見せていた。その原因はスオウ組組長の発した命令の所為であった。
『
「まだあの『
「す、すみません! うちの組員だけじゃなく、町中の『
サカダイの町中を探し回った後に報告に来たスオウ組の若衆は、自分の組の長であるスオウと、副組長の『サシャ』の前で報告をするのであった。
「これだけの人数で探して見つからないのです。もう連中は自分達のヤサに移動して『サカダイ』から去っているのではないでしょうか?」
二組の副組長サシャは、冷静に判断をしてスオウに告げる。
「サシャ、それじゃまずいんだ。あのイダラマって『
スオウ組はかつて『
今や営利関連実績だけではなく、組員の数でも大きく水をあけられている状態である。何とかして『一組』の座に返り咲きたいと考えているスオウは、今回副総長に頼み事をされた事で好機だと考えた。
副総長ミスズは強さだけでも十分に『
これだけの戦力が揃っている『
この『
それ程までに組織の管理に関しては、他の人間に追随を許さない程の完璧な副総長なのである。そんな副総長ミスズに頼まれ事をされた以上、スオウは絶対にその頼まれ事をこなして信頼を得ないといけないのであった。最高幹部の座に居て圧倒的な戦力を誇るスオウを以てして副総長ミスズに対しては、一目置いていたのであった。
久しぶりの好機だと考えていたスオウだったが、まさかその対象であるイダラマ達一派が、あの会合以降忽然と姿を消してしまい、何処に居るのか分からなくなってしまったのである。
スオウはこのままミスズの信頼を裏切ってしまえば『一組』に戻るどころか『三組』の立場にまで落ちてしまうかもしれないと考えて、自分の組の人間だけではなく本来はサカダイの町の護衛が仕事である管轄外の『
勝手な真似をしている事は自覚しており、こんな事が副総長や総長にばれてしまえば、それこそ『三組』に落ちる可能性もある。しかし総長たちが『
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