第1006話 二人の妖魔召士
「膨大な魔力反応、来るぞ!」
「何だありゃあ……?」
「あれは……、妖魔だけではない!」
大空を飛翔する妖魔が近づいてくるのを見たソフィとヌーは、即座にオーラを纏い始める。
エイジも警戒をしながら目を青くさせると何が何だか分からないと言った様子ではあったが、コウゾウも再び剣を抜いて空に居る妖魔を睨みつける。
次の瞬間、結界がなくなっている『
「何だあれは?」
ソフィが落ちて来る紙を眺めていると、横からエイジの怒号が聞こえてきた。
「まずい! 全員下がれ!!」
これまで聞いたことがないような『エイジ』の焦った声に全員が反応を見せる。ヌーは隣でフラフラとしながら立っていた『テア』を担いで空を飛んで距離をとる。ソフィはこの場に残っていたこの場まで案内してくれた男を掴み下がる。
セルバスも理解せぬままにヌー達の行動を真似て下がると、最後にコウゾウもそのセルバスを追うようにアジトの施設前に移動するが、そこで聞きなれた部下の声が聞こえてくる。
「シグレ!?」
…………
広い中庭のちょうど真ん中にある池の上の橋の上でエイジだけが残り、その場で戦闘態勢を取り始める。中庭の至る所に散らばるように紙が舞ったかと思うと、ボンッという音と共に、十体程の紫色の虎が出現する。
「久しぶりですねぇ。エイジ殿?」
大きな鳥の背に乗りながら空の上から見下ろす格好で、紅い『
「お前は『キネツグ』か! それに『チアキ』……!」
声を掛けて来たキネツグに遅れて、もう一体の大きな鳥に乗った女性も辿り着く。こちらの女性もキネツグや、そしてエイジと同じく紅い狩衣に身を包んでいた。
この紅い狩衣を着た者達がどうやら『
「全く……。我々『
チアキと呼ばれた女性は顔を歪めながら口角を吊り上げて、厭そうな笑みを浮かべながら『エイジ』にそう吐き捨てた。
「別に小生は『
「クククッ! そう思っているのはエイジ殿だけですよ。我々『
「ひゃははははっ!! キネツグもきっついわねぇ! でも確かに頭の固い化石のようなジジイは、さっさとくたばって欲しいのは同意よぉ」
「ほらほら! お前の所為でエイジ殿がプルプル震えてるじゃねぇか。もうエイジ殿も言う程若くないんだからさぁ、あんまり怒らせて頭の血管を切れさせるなよぉ?」
「本当ねぇっ? 震えてプルプルしちゃってるよぉ! ひゃはははは!!」
……
……
……
「何なんだアイツらは? エイジとかいう野郎と同じ格好をしてやがるが」
ヌーは突然現れて空の上で馬鹿みたいに大笑いをしている者達と、とても親し気とはいえなさそうな会話を始めたエイジ達を見ながらそう口にするのだった。
「瞬時に複数体の『式』を使役し、紅い
苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべ『
「と言う事はどうやら、ゲンロク殿の里に居た『ヒュウガ』とかいう男の取り巻きで、間違いはなさそうだな?」
もっと早くに来ると予想していた者達の出現に、ソフィは溜息を吐きながらそう言うのであった。
そして旅籠町へと帰した筈のシグレが、どうやら『
コウゾウとシグレが何やら話をしていたが、セルバスはそちらを無視して『
(『
セルバスは後ろに居るヌーや、ソフィ達の会話を盗み聞きしながら『紫色の虎』の魔物達に視線を向ける。
――『
【種族:妖魔 名前:
(は? 冗談だろ? 魔法の発動に失敗したか?)
セルバスはこれまであらゆる世界を『
世界の支配者級であっても、
それがあの『
――『
【種族:妖魔 名前:
(あ、ああ……? ほ、本当にあんな
セルバスは自分の目が信じられずに慌てて背後を振り返り、自分と同じ魔族であるヌーの顔を見る。ソフィ達と会話をしていたヌーは、突然セルバスが自分に視線を向けてきた事で、訝しそうに眉を寄せて口を開いた。
「んだよ? てめぇ、何ガンつけてきてやがる」
「い、いや! 奴らが召喚した魔物達の戦力値が何やら異常だったもんでつい……」
紫色の虎達に指を差しながらセルバスは慌ててそちらに顔を向けると、つられてヌーも視線を虎達に向ける。ヌーの目が金色に光った事でどうやらヌーも『
「てめぇどこが異常なんだよ!
虎達の戦力値を見た上でいちいち労力を使わせるなとでも言いたげに、ヌーは虎達から再び視線をセルバスに向ける。
「どうやらあれは『エイジ』殿や『シュウ』殿が言っていたランク表記で、ランク『2』から『2.5』の間程のようだな」
「ら、ランク……?」
セルバスはこの世界の事のほとんどを知らず『
――そんな彼にとって、ランク『2』やランク『2.5』などと言われたところで何も伝わらなかった。
「厳密にはあの『
それはどうやらゲンロクが編み出した新術とやらの類の事なのだろう。ゲンロクが居る里で彼が直々に言っていた事でもあるが、ここに来るまでに既にソフィ達は『ケイノト』の裏路地にあるエイジの家で禁術扱いになっている術式の事はある程度教えられていた為、コウゾウの話に相槌を打つソフィ達であった。
どうやらこの場で『セルバス』だけが、初めて知った様子であった。
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