第1000話 目覚めた、新たな力
空から落ちて来るテアを受け止めようと見上げていたヌーに向けて、ヒロキは右拳で思いきり殴り掛かる。
「むっ!」
助けに入ろうとしていたソフィだが、移動の為に『高速転移』を使おうとしたその直前に、ヌーを見てその場で思い留まる。
ヌーの周辺に先程の『障壁』が浮かび上がってきているが、どうやら先程の障壁のスタックが残されていたのだろう。そして再び障壁は見事に展開されているが、ソフィが動きを止めたのは
ヒロキの右拳がヌーの障壁をあっさりと貫いて、そのままヒロキに拳を振り切られて、ヌーは横っ面を思いきり殴り飛ばされた。
先程もこのヒロキの拳で殴り飛ばされたヌーであったが、まださっきは『金色のオーラ』を纏った状態で殴り飛ばされた為に被害はまだ少なく、その後に同じように殴り飛ばされたテアを庇える事が出来たが、今のヌーはそのテアが殴り掛かられた事で怒りの所為で『金色』を纏っていない。
無意識に『
――しかし、ヌーは殴られた事でズザザッと地面を引きずるように数歩分足を動かされたが、それでもそれだけであった。
金色を纏っているときのヒロキの拳でかなりの距離を吹っ飛ばされたのに対して、今度はその
「何だと?」
手応えを感じていたであろうヒロキは、大柄の体格をしているヌーが先程と同じように吹っ飛んで行くと確信していたが、口を切って血は流れてはいるモノのピンピンとしている事に驚きをみせる。
「待ってろや、てめぇは必ず殺してやるからよ」
ヌーはその言葉だけをヒロキに向けて、直ぐに落ちて来るテアを抱き留める。
今が
(な、何だコイツは……!?)
戦闘のプロと言えるヒロキは、過去に妖魔山でランクの高い妖魔連中ともタイマンでやり合った事もある強者である。そんなヒロキであったが、長らく恐怖とは無縁で生きてきたのだが、ヒロキは落ちて来る女を抱き留めるまでの大きな隙があっても足に力が入らずに、震えて動けなかったようである。
…………
(やはりな……。あやつの今纏っている『
ヒロキに殴り掛かられる前、助けに入ろうとしていたソフィが『高速転移』を使うのをやめて、その場に留まった理由であった。
本来、魔族の使う『二色の併用』は、淡く紅いオーラと、淡く青いオーラが混ざり合って併用されるのだが、いくら練度を高めようともオーラの色合いが強くなる事はないのである。
だが、今のヌーの周りを纏っている『
しかし二色の併用は変わってはいない為に、魔力や戦力値も『金色のオーラ』の使用時の上昇値には決して
あくまで彼が今纏っている二色の併用は、二色の併用でしかない為に『
『金色』や『二色の併用』までしか体現した事がない者には、決して理解出来ない領域分の事が、現在ヌーの身に起きているのである。
――それは『三色併用』と呼ばれるモノ。
『紅』『青』『金』の三色が同時に纏われる事で、
魔族が困難を経験した末に体現出来るオーラの種類の事で、紅<青<二色の併用と言う順番に体現が難しくなる。
(※『金色のオーラ』は誰でも使える物ではなく、生まれた時に使えるかどうかが決まる為、先天性の贈り物と呼ばれている)
あくまでオーラの技法は元々の通常時の戦力値や魔力値からの倍率となる為、その使用者の元となる戦力値や、魔力値が重要である。
(※元の戦力値が『1億』程度の場合、金色を纏うと『10億』になるが、元の戦力値が『2億』であれば金色を纏えなくても二色の併用の練度がMAXの場合に『12億』になる為である)
(※紅は1.2倍、青は最大練度で5倍、金色は練度関係がなく10倍。二色の併用は、最大で6倍、三色混合は15倍とされている)
(※しかし実際に効率性を加味せずに『紅』のオーラを併用させる最大練度は1.7倍となる為に、魔力の消費量などや『基本研鑽演義』を無視して『力』だけを求めるのであれば『紅』は1.2倍ではなく、最大練度は1.7倍となる)
『
ソフィでさえも今こうして自分が纏えている『三色併用』ではあるが、分かっている情報は少なく、単に魔力値や戦力値が跳ね上がるだけではなく『耐久力』『魔法耐久力』『攻撃力』『魔力』『敏捷性』それらの因子一つ一つが通常状態や、別のオーラを纏っている状態、更には魔法による上昇とも違い独自の能力を高める事を可能とする技法なのである。
そして今ヌーが纏う『二色の併用』のオーラは、着実に『
先程ヒロキに殴られた時よりも被害が少なくすんでいるのは『青』のオーラが『淡く青いオ―ラ』と明確に異なる変化を遂げているおかげである。
そしてソフィは自身ではなく他者であるヌーのオーラの変化から、今までは知り得なかった新たな知識を得ようとしていた。
(どうやら鮮明な方の『青のオーラ』は、防御率の上昇を意味しているようだ。という事であれば『紅のオーラ』が鮮明になれば『攻撃力』の上昇か……? 我の時は元の我の力の強さの所為で違いを知り得る事が出来なかったが、これは良い機会に恵まれたな)
ソフィはそう考えてニヤリと笑うのであった。
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