第925話 テアの中での神々の常識
ソフィはどうするべきかと悩んでいたが、ひとまずはテアがヌーに対してどう思っているかを理解出来た為、一番知りたかった事を知る事が出来て大方の満足はしていた。
「時折、このように結界を張って、お主に通訳を頼むかもしれぬが構わぬか?」
ソフィはこちらを見ている魔神にそう告げると、魔神は何度も首を縦に振った。
「――」(迷惑をかけていると誤解して、遠慮はしないでねソフィ。貴方が望むのならば、
ソフィに対して魔神が嬉しそうに本音を語っていると、それを聞いていたテアは頭を両手で抱え始めた。
(
余りにも非現実的な光景を目の当たりにして、流石の死神貴族のテアであっても、混乱させられるのだった。彼女はソフィの事を
魔神は『天上界』死神は『幽世』、
世界という表現は平行する数多の世界という意味ではなく、この場合の
そしてそんな『天上界』に生きる者達は、人間や魔族、精霊族、魔人族、龍族が暮らす世界を『下界』と呼ぶ。
この下界に死神が含まれていないのは、少し複雑な理由がある。
死神は下界の現世ではなく『
だが天上界に存在していない神々だとしても死神も立派に神格を持ち、人間と契約を交わす事で、寿命を超越出来る存在である。
だが、同じ神格持ちの神である『死神』と『魔神』には、そんな事が些末だと思える明確な違いがある。
――それはやはり圧倒的な力の有無であるといえる。
『死神』も神位自体は『魔神』に劣るとはいっても相当に力を有しており、先程も述べた通り寿命も超越出来得る存在である。しかしここでいう力とはそういう次元の話ではない。
天上界に居る魔神や、それ以上の神々には、下界を管理を許される程の力を有しているのである。
具体的に説明をするならば、天上界に存在する事を許されている神々達は、まず下界に存在する種族達の編み出した一切の『
精霊族や魔族が生み出した『
その中でも顕著な『
『
魔力が足りないとか、力が届いていないという理由ではなく、世界に干渉するという『概念』そのものが、天上界の神々には捻じ曲げられて破壊されてしまい、元々あった本来の概念から技法を再構築されてしまい、天上界の存在には本来の効力を抹消されてしまうのである。
『
(※中にはその枠組から外れる存在が下界に存在するが、その存在を天上界は一切認めない為に、
(※2異物=生物という枠組には収まらず、その他一切の天上界が認めない『下界』の存在を
――これこそが下界を管理する『天上界』の神格持ちの神々の『力』なのである。
こういった概念を司る力を死神も当然持っている。そしてその『力』は『
このような力を持っている死神にも当然『神位』を有して神々と呼ばれている。
だが、天上界に棲んでいる魔神のような神々と比べるとなると、干渉する概念の規模が異なっているといえるだろう。
同じ神々であっても下界に近しい存在が死神で、その下界を管理する存在が、天上界の神々である魔神達という事である。
――これこそが神々同士の
つまり『
だからこそ人間や魔族を相手に、死神は固有の概念を用いて、生命を対象に契約を執行したりしているのである。
そんな魔族達と近しい感覚を抱いているテアにとってはこうして目の前で、魔族と契約を行っているだけではなく、まるで一介の魔族相手に崇敬、崇拝と言った様子で付き従っている目の前の魔神の存在は、決して彼女の常識内では、説明のつかない不可思議な光景が繰り広げられているという
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