第890話 新たな特別退魔士達
「タクシンの野郎が殺された……?」
「あやつがやられるとは……」
「『妖魔団の乱』でも相当に活躍を見せた『タクシン』の坊主がか……」
『
「事の重大さが理解出来たか? もう分っているだろうが、別任務で忙しいお前らを無理に呼んだのは『加護の森』に現れた妖魔討伐にあたってもらいたいからだ」
『
「今回の任務はサテツ様が仰られた通り『加護の森』に現れた二人組の妖魔の討伐となりますが、もし二人組がランク『5』以上の存在であったならば、直ぐに戦闘から離脱して相手の情報を持ち帰ってきていただきます」
「この事は『ゲンロク」様にはもう伝えているのですか?」
それまで話を聞いていた額に大きな傷を持つ男『
「いや、まだだ。まだ森に現れてからそんなに日数は経っていない。詳しい情報を得た後に俺から直接話すつもりだ」
「そうですか」
明らかに何か別の理由があるだろうという事は明白であった。
どうせ『退魔組』の監督を任せられている自分の体裁を保つ為とか、そういった下らない事が理由であろうとクキは理解していたが、わざわざそれを口には出さなかった。雑に片付けられてはいるが、椅子やら机の破片の残骸が、床に散らばっているところを見るに短気な『サテツ』が暴れたのだろう。
つまり今の彼は相当に機嫌が悪いとみえる。ここでいらぬ事を言ってもいい事は無いと判断した為であった。
「タクシンがやられた以上は油断が出来ない相手だという事だ。気を引き締めて任務にあたれ」
「分かりました」
「分かったよ頭領」
「承知した」
三人の『
「彼の言う通り、ゲンロク様に伝えなくても宜しいのですか? 既にタクシン殿がやられた以上は遅かれ早かれ上の耳に入ると思われますが」
イツキは部屋にサテツと二人になった後、直ぐにそう口にするのだった。
「分かってるよ。だが出来る事なら全てを終えてから伝えたい。俺の面子に関わってやがるのは、てめぇも理解出来るだろう?」
気の弱い人間であれば今のイツキを睨む『サテツ』の目を見ただけで震えあがる事だろう。しかしイツキはその目を見ても平然としながら頷くのであった。
「面倒な事になりましたね」
「全くだ『
不機嫌さを隠そうともせずに、サテツはイツキを見て舌打ちをするのだった。
……
……
……
その頃イバキの『式』である妖魔『
これまでも『退魔組』や『サテツ』の事を良くは思っていなかった『
劉鷺は他の『退魔士』達とは違い、主である『イバキ』の事は相当に気に入っている。他の『退魔士』達とは違い、強引に同胞達を『式』にはしていないし、彼の仲間や人間達を守りたいという
イバキは『
劉鷺は自分から彼と契約を交わして『式』になっている。そんな主であるイバキに対して冷たくあたるような組織は滅びてしまえばいいとさえ、彼は考えているのだった。
「いつの世も人間達は人付き合いが面倒そうだな。俺達『妖魔』みたいに自由に行動出来ればいいと思うんだがな」
『加護の森』に向かう道中の空で小さく溜息を吐きながら、そんな事を口にする『
……
……
……
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