第849話 退魔組の役割
「うむ。どうやらその反応を見る限り、やはりサイヨウはこの世界出身の人間だったようだな」
既にサイヨウはリラリオの世界で式とやらを使い、ラルフ達に修行を行っているのを見ていたソフィは、この世界で同じ式札を使って襲ってきた退魔士達を見て、薄々とではあるが、サイヨウがこの世界から来たのだろうと予測していたのであった。
「そ、そうだ! 何を隠そうサイヨウ様は私の師なのだ。しかし
エイジは色々と段階を踏んでソフィ達から、事情を説明願おうと考えていたのだったが、まさか自分の師匠である『サイヨウ』の名が出てきた事で色々と聞こうと思っていた順序が狂ってしまうのであった。
(ち、父上がここまで焦りを見せる事があるなんて……)
そして先程から自分の父親が、普段の冷静沈着である姿からかけ離れてしまっているのを見て、少年はサイヨウの言葉が出た時以上に驚きを隠し切れないでいた。
「むっ……こほんっ。これは御客人方。すまなかったな『
事情を聞く事に必死になり過ぎていたエイジは、ようやく我に返ると咳払いをしながら少年にそう頼むのであった。ゲインと呼ばれた少年はこくりと頷くと、玄関と土間の間のスペースを通って奥の台所へとお茶を淹れに向かうのだった。
ソフィは少年が戻ってきてから『サイヨウ』や別世界の話をする事に決めたらしく、ひとまずは当たり障りのない話題から切り出し始めるのだった。
「それにしてもこの町は、表通りと裏通りでは全く印象が変わるのだな」
「ああ。それには理由があってな。我々『
「ふむ?」
「元々我らは影のような存在でしてな。本来は妖魔が町に襲ってきた時に我らが出張り、力無き町人たちを守る役目を担っていたのだが、少し前の『妖魔団の乱』以降、町人を守る為という理由でとある『
それだけを聞くと別に悪い事では無く、町の治安を守る為に日々頑張っているように思えるソフィだった。
――だが、話はどうやらここからのようであった。
「町の平和を守る為の組織であれば、別に悪い事では無いのではないか?」
「確かに本当にこの町の事を想って活動を続けるのであれば、確かに貢献は大きく悪い事では無かっただろう」
そこで一呼吸置いたエイジは、話はここからだとばかりに再度口を開いた。
「退魔組の創始者『ゲンロク」という男は、この町の安寧が目的で『退魔組』を作ったのでは無く、全ては彼の野望の為の行動に過ぎなかったのだ」
そう説明をするエイジの声には、先程までとは違い怒気が孕んでいた。どうやら彼は本当に『退魔組』では無いのだろう。ゲンロクという男に対して、エイジは相当に恨みを抱いている。これが演技で行っているようには、長く生きてきたソフィから見ても見えなかった。
「どうやらそのゲンロクという男は、一癖も二癖もある人間のようだな」
ソフィの言葉に強く頷くゲインだった。
過去のアレルバレルの世界の人間達も悪い方に知恵を働かせる聡明で悪い者達も多く居た。しかし知恵はあっても力が伴っておらず、そこまで大した事は出来ずに皇帝のような一部の人間達が『魔界』の魔族と手を組む事でようやく動きを見せる事が出来たくらいである。
しかしこの世界の人間達は『アレルバレル』の世界の『人間界』とは違い、一人一人の癖のある人間に
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