第804話 擬鵺の放つ呪詛の声
黒い煙に包まれたソフィと『
「一体、何だと言うんだ」
大魔王『ヌー』は険しい目をしながら、両手を自分の耳にあてて黒い煙の中を窺う。
『
少し離れた場所に居るヌーには、
(よし、あの距離で直接聞いたのであれば、人間でなく『
ミカゲと呼ばれていた『
そして徐々に煙が晴れて行き、ようやく黒煙に包まれていた『
『
「む……。ようやく辺りが見えるようになったな」
しかし煙が晴れて見えたソフィの姿はいつも通りであった。それも何もなかったかの如く、平然と呟いているのだった。
「な、何……? どうして普通に意識を保っていられている!」
ミカゲはソフィの変わらぬ様子に数秒驚いていたが、やがて目の前に敵がいるというのに、動きを見せない『
「『
『式』を使役しているミカゲのその声が聞こえた以上、使役させられている『式』は、嫌でも命令に従わなければならない。
だが、ミカゲの声が届いているにも拘らず、
「残念だが、こやつにはもうお主の声は届かぬぞ。少しばかり意識を遮断させてもらったからな」
ソフィがそう言うと『
「!?」
「クックック、どうやら化け物対決は、ソフィに軍配が上がったようだな?」
信じられない現実にミカゲは、倒れた擬鵺とその相手であるソフィを見比べながら目を丸くする。
そして対照的に大魔王『ヌー』はソフィを化け物と呼びながら、予測出来た現実に笑い始めるのだった。
「な、何故だ……? 『
「ハッ! 妖魔だか何だか知らんが、
いつの間に移動したのかヌーは、邪悪な笑みを浮かべながら、信じられない現実を目の当たりにしている『ミカゲ』の前に現れてそう口にするのだった。
そしてヌーはどうやら『ミカゲ』と呼ばれていた人間を物言わぬ骸に変えるつもりなのだろう。魔力を集約させた右手を『ミカゲ』の顔の前に翳す。
「ククククッ! 死ね、屑が!」
「まぁ待つのだ。ヌーよ」
魔法を放とうとしていたヌーの横に一瞬で姿を見せたソフィは、そのヌーの肩に手を置いて静かにそう呟くのだった。
「ちっ……! 仕方ねぇな」
舌打ちをしながらもヌーは、素直に手を下ろす。どうやら驚きすぎて九死に一生を得たという事に気づいてすらいないが、虚ろな目をしながらミカゲはその目でゆっくりと視線をソフィに移す。
「もう我達に敵わぬというのは理解出来ただろう。そろそろこちらの話を聞いてもらいたいのだが、聞いてもらえるかな?」
悪い事をした子を叱った後に慰めるように、優しく言って聞かせるソフィだった。
「……」
――ミカゲは何も口に出来ず視線だけをソフィに向けているのだった。
……
……
……
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