第十章 幕間
第720話 魔に関わる者達にとっての死の結界
『
アレルバレルの世界の『魔界』の中央大陸にあるソフィの魔王城の牢獄で、一体の魔族が目を覚ました。
「ここは何処だ。俺は一体……」
彼の名はヌー。
元々はアレルバレル出身の魔族であり、この世界のNo.2まで、一度は昇りつめた魔族であった。
この世界の統治者であるソフィを倒す為に『
体を起こしたヌーが牢の中を見回した後、牢を壊そうと手を伸ばした。
ヌーが牢に手を触れた瞬間、バチチという音と共に、
「チッ、面倒な事だ……」
この牢に施されている神聖魔法『
それならばと半ば諦めながらも『
しかし当然の如く、魔法は発動されなかった。
それどころか回復してきていた魔力が、ごっそりと失われる感覚をヌーは味わう。
「ククッ、どうやら終わりのようだな」
牢の扉には神聖魔法、そしてこの牢の中には結界が張られている。
その結界はブラストや、ディアトロスの領域でさえ、辿り着いていない魔法が使われていた。
この結界はあらゆる結界の中で、
その効果範囲は、術者の魔力に左右されるが、施された場所に居る者が、その場で魔法を発動すると、
魔法の効果は無効化された挙句に、その術者の発動した魔力分を結界を施した者に吸収される。
そしてこの結界魔法を現在、
当然結界内で魔法の発動が行われた場合、術者であるソフィにも伝わる。
つまりヌーが目を覚ました事が、この魔王城の主である、ソフィにバレたという事である。
先程のヌーの言葉は、その事からくる
やはりというべきか、直ぐにヌーの居る地下牢に、姿を見せるソフィとフルーフだった。
「……目を覚ましたかヌーよ」
「ソフィ……か」
ヌーがソフィの姿を見たと同時、隣に居たフルーフが口を開いた。
「感謝するんじゃな。ソフィの温情がなければ、お前は
「フン。どちらにしても同じことだ。それよりもミラはどうなった?」
「……あやつは我が葬った。
大魔王ヌーが大賢者ミラの名を出すと、ソフィは冷酷な目に変えながらそう答えるのだった。
(……化け物がっ! ミラは少なくとも『ダール』の世界で数万以上の命のストックを補充していた筈だ。
ヌーは実際にソフィと手を合わせた事もあったが、このミラの話を聞いた瞬間に、改めてソフィという、大魔王の恐ろしさを実感する。
結局自分がアレルバレルの世界でNo.2だった時を含めても、この化け物がこの世界に君臨する限り、No.1になる事はなかったのだと、
数千年前から自分を鍛え上げて魔力を伸ばし、新魔法をいくつか会得した。
だが結局は差が縮まるどころか、差が広がったように感じられる。
それどころかヌーは程度の低い世界と思っていた『リラリオ』の世界の魔族にさえ、無様な程にやられてしまっている。
もはや今のヌーからは、あの高慢な態度は全く見られなかった。
それどころかあのミラを葬ったという『ソフィ』の言葉を聞いてからのヌーは、更に覇気が消え失せたように見受けられる。
「それで? どうして俺は生かされているのだ。ミラに協力していたんだ、俺もさっさと殺せばいいだろう?」
ソフィが口を開こうとしたが、その瞬間に横に居たフルーフが、目を鋭くして喋り始める。
「言われなくともお主はこのワシが殺してやる……」
激昂するフルーフの肩に手を置き、ソフィは一歩前に出る。
「お主には知っている事を全て話してもらおうと思ってな」
ソフィが話をしている間もその背後では、大魔王フルーフが殺意をヌーに向け続けるのだった。
……
……
……
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