第654話 最愛の娘の元へ
龍族達の大陸ではスベイキアと同盟を組んでいる全ての国が、イルベキアを滅ぼす為に侵攻を開始していた。
その頃カストロL・K地域に居るフルーフの待つコテージに、エアル王との話を終えたエイネが戻ってきていた。
現在アサの世界の魔族達は、カストロL・K基地に再び姿を見せて駐屯している。
しかし先日までとは何もかもが様変わりし、魔人達は魔族達に対し横柄な態度をとる事はなく、むしろカストロ基地に駐屯している魔族達に魔人達は進んで彼らの護衛を行うようになっていた。
そう言う指示を魔人軍の副司令官である『レドラー・クラシス』から受けているというのもあるが、実際に大魔王エイネの姿を目の当たりにした魔人達は、魔族に逆らうという気が失せてしまっていた。
だが、別に魔人達がエイネ以外の魔族達に媚へつらっているというワケでもなく『ミデェール』を始めとした隷属していた筈の魔族達が、彼ら魔人族にその
魔族側にしても長年魔人達に従っていた為に、当然そういった機微には聡くなっており、自分達魔族を物扱いせずに、まさに
さてそんなきっかけを作ったエイネだが、魔人達の王に話をつけたという報告をフルーフにした後、今後はフルーフも一緒に行動してもらい、龍族の大陸に渡ってもらおうと事情を説明を始めた。
「この世界で私が出来る事は全て終わりました。後はフルーフ様も一緒に、龍族の大陸に向かって頂きたいのですが……」
エイネの話を聞いた『フルーフ』は、無言でエイネの顔を見つめる。
「そうじゃな。ひとまずこの世界の一件を片付けた後にワシはお主を『アレルバレル』の世界に跳ばそう」
「お願い致します。あちらの世界では現在組織の者達の手が、あちこちに回っている事でしょうから、一度『ブラスト』様や『イリーガル』様。そして『リーシャ』と合流を致しましょう」
エイネはリーシャを庇って組織の幹部『リベイル』に跳ばされてしまい、その後の『アレルバレル』の世界での事情を知らず、当然ソフィが『アレルバレル』の世界に戻ってきているという事を知らない。
ディアトロスの指示で『魔界』の各地へと散らばり、機を待つようと言われていた後、リーシャと共にかつての集落に身を隠していた。
(※かつてレアが『組織』の者達に拉致されてきた森の近くの集落である)。
つまり『アレルバレル』の世界に到着した後、ソフィの魔王城のある『中央大陸』へと向かおうと告げるエイネであった。
「この世界で探す事が出来れば一番じゃったのだが、見つからぬのであれば、それはそれで仕方あるま……い?」
エイネの提案に乗っかる形で決断をしようとした『フルーフ』の表情が唐突に変貌していく。
フルーフの表情が突然変わった為に『エイネ』は、何があったのかと『フルーフ』に声を掛けようとする。
「ま、待て……! こ、これは……!! レアの魔力を探知出来た!」
口を開きかけていたエイネだったが、フルーフの大きな声で発された言葉に驚き、口ごもる事になった。
「すまぬっ! 後で必ずお主を迎えにこの世界へ戻ってくる! 今はレアの元へ行かせてくれ!」
直ぐにエイネは事情を理解して『フルーフ』の言葉に頷きを返した。
「わ、分かりました! こちらの事はいいですから、直ぐに向かってあげて下さい! 私達は『龍族』達の大陸でお待ちしておりますので、こちらの世界に戻ってきたら私に再び『
「ああ、分かった! そうじゃ、お主にこの荷物を預けておく。ワシが戻って来るまで持っていてくれぬか?」
そう言って『フルーフ』はベッドの横に置かれていた荷物をエイネの前に置く。
「は、はい! 分かりました。お預かりします!」
「何かあれば自由に使ってくれて構わぬ。それではワシはレアの元へ行く!」
そう言うとフルーフは八割前後まで回復していた魔力を『
『魔力回路』から放出された膨大な『魔力』の滑らかな『魔力コントロール』から行われる『スタック』までの一連の流れは、まさに『魔』に精通する大魔王と呼べるものであった。
エイネは魔力自体の絶対値は乏しいが、それでも彼女は『魔力コントロール』に関しては自信を持っていた。しかしそんな彼女であっても、眼前で行われたフルーフの魔力コントロールの凄まじさに呆気に取られて苦笑いを浮かべる程であった。
「フルーフ様、レアさんにお会いしたら……。私が会いたがっていたとお伝えくださいね」
「うむ、勿論じゃ! 必ず伝えようではないか」
その言葉を最後に『フルーフ』の世界の『
フルーフは一度だけエイネの方を見た後に笑みを送った。エイネもまたフルーフにぺこりと頭を下げて見送る。
そして『フルーフ』の『魔力』が乗った『スタック』が、魔法陣に導かれると『魔法陣』が高速回転をし始めた。
―――神域『時』魔法、『
次の瞬間、カストロL・K地域にあるエイネのコテージの中からフルーフの姿が消え去り、彼は愛する自分の娘の元へと
……
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