第589話 捕らわれの身
新魔法を編み出す為に必要な事は、自らがこれまで経験して来た情報を元にする事である。不幸にも別世界の大魔王や、大賢者によってフルーフは決して短くない時間を操られてしまった。
しかしその間に得られた経験は、これまでのフルーフの人生では決して得られない、
その中でもやはり一番大きかったことは、ミラ達が編み出した方の『神聖魔法』を身近で多く見てきた事だろうか。
ソフィに言わせてみれば、ユーミル達が使っていた『ミラ』の『神聖魔法』は、紛い物に感じられただろうが、途中までは『本物』の『発動羅列』を組み入れている為に、羅列だけで見れば遜色はそこまでない。
フルーフにとって今重要な事は、この枷に掛けられている
そうであるならば、紛い物であろうと無かろうと、神聖魔法の羅列の文字を理解して、その羅列が生み出す効力に対して
大魔王フルーフは、ソフィはおろかヌーやディアトロスといった大魔王達にさえ、戦力値では負けるだろう。
だが、こうした『
現在フルーフは魔力を封じられた状態で、魔法の新たな開発を行い続けている。それも常人では理解が出来ないやり方でだった。
『
枷に用いられている魔法は、魔族に特効を持つ神聖魔法『
この新魔法を使う事で『フルーフ』には『
しかしフルーフはエルシスやミラのように、発動羅列を読み解く事が出来ない上に、枷のせいで魔力が遮断される為『
つまりフルーフは『
魔法が発動した状態を見るのでは無く、更には発動羅列を読み解けないフルーフは、可視化された羅列の配列のみからどのような効力をもたらすかを、あえて一から調べているのである。
(既に魔族を縛り魔力を遮断するという効果を理解しながらも、何故その効果になるのかを
今フルーフが開発しようとする魔法は、全て『
一度の『
平常時でさえ『
――彼はミラやエルシス。そしてシスのように発動羅列を読めないのである。
『発動羅列』を浮かび上がらせた後に、一秒間の間に『羅列化された文字の配列』と『形』を覚えているに過ぎない。
更に文字の配列だけでどの文字の部分が『魔族』に対してどういった影響を及ぼすかを見極める為に、繰り返し繰り返し『羅列化する魔法 」を行い続けるのである。
――それは何という根気力であろうか。
それだけに留まらず『|聖動捕縛《セイント・キャプティビティ』の効力を齎す配列部分が分かったとしても、そこから今度はその言語の配列部分に対する『アンチ配列』を組み込みながら、フルーフは『|聖動捕縛《セイント・キャプティビティ』を解除する方法を組み上げて完成させなければならない。
僅かな時間と自由に魔力を使えない状態で、高等技術と高等技術を組み合わせながら『
――『配列の暗記』『神聖魔法の文字の意味』『配列を読むために浪費し続ける魔力と根気』。
フルーフはこの誰もが諦めたくなるような絶望な状況下に身を置きながらも、その表情はパズルを楽しむような満面の笑みを浮かべていた。
どうやらフルーフはユファと同じく『魔』の事を考えている時が一番幸せなのだろう。しかしこの『神聖魔法』を解除する為に『神聖魔法』の研究を続けていたらフルーフは、笑っていた表情が少しずつ無表情になっていく。
自身も多くの神域魔法を生み出してきた存在であるフルーフは『発動羅列』の組み立て方に関しては『レパート』の世界で右に出る者が居ない程に長けている。
そんなフルーフから見て『神域魔法』である『
確かに理論上可能だとは思うのだが、この『フルーフ』ですら理解が出来ない『発動羅列』の組み立て方が多く見受けられており、もっと違う羅列を組み込む事で発動が簡単に行える筈なのである。
ここまで表現力がある者が、
「ええいっ、歯痒い! じっくりとこの魔法を研究させよっ!!」
――正に本末転倒な事を言い始めるフルーフであった。
自身の魔力を縛る『
そして『
一度疑問を持ってしまうと、原因を解明したくなるのが、研究者としての
ただ単に『
ミラやエルシス、そしてシスのように見ただけでは『羅列』を読み解く事が出来ないというのに、自身の新魔法を創り出した経験を基に配列を組み上げながらこの僅かな時間で、発動羅列を読み解いたのである。
後はこの『
――そして迫る時間を思い出した『フルーフ』は、先程の言葉を発したというワケである。
……
……
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