第571話 発動羅列の変換

「よし、ひとまずはこれでいい。」


 ミラはフルーフに翳していた手を下ろしてそう呟いた。魔神が最初に使っていた『高密度エネルギー波』と次に多くの信徒達を一撃で大魔王達を浄化させた『浄化の一撃』の二種類の攻撃を吸収する事に成功した。

 まだミラが実際に使ったのは『高密度エネルギー』の方だけだが、すでに『発動羅列』に置き換えているためにミラは、問題無く『浄化の一撃』の方も『魔法』に置き換えて放つことを可能とするだろう。


 更にここから『発動羅列』をイジる事で『魔神』の使っていた『技』自体を改良する事も出来る。


 ――これこそが『神聖魔法』すらも自らの扱いやすいように作り替えた、であった。


 最強の大魔王ソフィを倒して、ミラ自らが尊敬した大賢者エルシスを越える為に、彼は遥か高みを目指し続ける。ミラは最大戦力値では『ソフィ』には劣るだろうが『神聖魔法』や『魔神』の『技』を会得した今では魔族に負ける事は、限りなくゼロになった。


 しかし防御面でまだ不安が残ると考えたミラは、どうにかもう少し『魔神』から能力を吸収したいところが本音である。

 本来の計画では、九大魔王である『女帝』エイネや『怪傑』の大魔王『ホーク』のような、相手の魔力や魔法を吸収して魔法自体を無効化させる『対魔法無効キャンセル・マジック』と呼ばれる対策を『魔神』から吸収する予定であった。

 その為にヌーの前情報から得ていた『魔神』の使う『時魔法タイム・マジックの無効化』の『発動羅列化』を試みようとしたのだが、実際はどうやら無効化は『自動パッシブ』で使われていたようで読み取ることは出来ずに終わり、その作戦は失敗したといえた。


 『時魔法タイム・マジック』の無効化自体には『次元防壁ディメンション・アンミナ』を無効化する力くらいしか魅力はないが、ミラが『時魔法タイム・マジック無効化』の『発動羅列化』が出来れば、更にそこから羅列をイジって、あらゆる『魔法無効化アンチディフェンス・マジック』すら出来ていた可能性があるのである。


 そこまでの領域に至ればもう、ミラに怖いもの完全にはなくなる。自らは『生命ストック』をいくつも持ち『死』という概念を失くしながら相手に『次元防壁ディメンション・アンミナ』や『概念跳躍アルム・ノーティア』を使わせず、そして更には相手からの魔法攻撃を無力化させる。


 ――そんな事が可能になれば、いくら『』に至る『、ミラは負ける筈が無いと考えたのであった。


 あくまでこの計画は『セカンダリ』のものであり『メイン』であったソフィのがあのまま上手く行っていれば、この計画自体はまだまだ先延ばして『組織』自体をもっと強化した後に行う予定であった。


 しかしそのソフィはシスという存在のせいで『アレルバレル』の世界へと戻る算段を手に入れてしまった。もう悠長な事を言っていられる余裕はなくなってしまったのである。


 …………


「あの魔族はルビリスとか言ったか? アイツの事は回収しなくていいのか?」


 ヌーはそっぽを向いた状態で口を開いて『煌聖の教団こうせいきょうだん』のNo.2で司令官の立場に居る『ルビリス』の事を告げる。


「そうだな。どうやらかなり『魔力』はだいぶ消耗しているようだが、まだ生きているようだ」


 ミラはそう言うと『金色』を纏い始める。


「お前の体力は元に戻しておいてやる。を頼んだぞ」


 ラテールとフルーフの事を言っているのだろう。ミラは片手でヌーに手をかざすと、青い光がヌーを包み込んだ。そして一瞬でヌーの体力が元に戻るのであった。


「『魔力』までは戻せんが、代わりに保険をかけておいてやろう」


 最後にはそう言うと『聖なる護守アミナ』や『滾る戦の要アグレセス』といった『能力向上』を目的とした『魔法』を『ヌー』にかけてそのまま魔神達の居る場所へと『高速転移』していくのであった。


 …………


 ミラの姿が見えなくなった後、ヌーは溜息を吐きながらフルーフの方を見る。


(かなり奴に水をあけられてしまったな。今のままではソフィどころか、ミラにも勝てねぇな)


 かつて『アレルバレル』の世界でNo.2まで登りつめたヌーは、現状に置かれている状況を素直に認めて、どうにかしなければならないと考えるのであった。


「まずは城へ戻るとするか」


 そう言うとヌーの目が金色に輝き、ラテール達を操って自らの居城である『イザベラ』の魔王城へと向かうヌーであった。


 ……

 ……

 ……

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