第496話 災厄の大魔法使いは見捨てない
ユファから『
まさに一からのスタートだったが、ラルフは全く焦りを見せなかった。
それもその筈、彼に魔法を使うよう提案したのは『災厄の大魔法使い』である『ユファ』である。そしてユファは無理だと思う事を提案する程、適当な事はしない魔族である。
むしろ『魔』の状態が真っ白な事を好都合として、彼にかつて『レパート』の『
「『
ラルフはその言葉に頷くと、ユファから魔法発動に必要な詠唱と『発動羅列』を教わり覚え始めるのだった
魔法発動に必要な『魔力』はユファからすればそこまで多くはなかったが、それでも魔法使いでもないラルフの元々の魔力値が少なすぎる為、青の練度を高める事も併用して研鑽することとなった。
当然魔力値自体を高める事はこの短期間ではほぼ不可能ではあるが『青』の練度が上がればその分魔力値上昇の加速にもなるためである。
基本値となる魔力値が上がれば『
後は一度発動した 『
殺し合いの場になれば色々と魔力の節約が必要となる戦いの必要性も出てくるだろうが、闘技場のルール内の試合であれば、十分に持つだろうと判断した為であった。
この短期間にユファが教えられることはこれくらいである。後はラルフ自身が今まで培ってきた、エルザを封殺したときのような、冷静に相手を崩す戦い方などを本番で使ってもらう他にないのである。
あくまで今回ユファが出来る事は『ラルフ』の戦いを助ける『
ユファの教えを必死に聞いて『障壁』を覚えた時のように、魔力回路に魔力を充填させながら、ラルフは『レパート』の『
今はまだ完全に教えられた『発動羅列』を読み上げているだけの段階なので、ラルフはメモを読み上げながら必死に詠唱を行う。
そしてラルフは『発動羅列』を詠唱して『レパート』の『
レパートの『
「!?」
――その瞬間。
元々の魔力値が低いラルフはごっそりと自分の魔力回路に補充した魔力が、空になる感覚を感じてフラフラになるのだった。
「やっぱり補助的に魔力を別に『スタック』させておかないと、そのまんまの発動はまだ無理ね」
ユファは多分最初から発動は無理だろうなと半ば諦めていた為、魔法の失敗に咎める事は無かった。
――しかし失敗をする事は決して恥ではない。
失敗を恐れて最初から妥協する事こそ、魔法使いとしてはやってはいけないことなのである。まだ発動が出来ないのであれば、発動が出来るように努力をすればいいだけの事。
すでにラルフは魔族であれば『真なる魔王』の領域に立てる程の強さを持っている。
『青』で魔力を高める事も十分に可能である。
ラルフが諦めない限り、ユファはラルフを見捨てる事はしない。レパートの魔法部隊と『シス』を鍛え上げた実績がユファに自信を持たせるのだった。
――こうしてユファとラルフの修行は、開始されていくのだった。
……
……
……
リーシャはまだこの世界に来てから、大魔王シスが治めている国を一度しか訪れた事が無かった。
その一度目の時は『ラルグ』魔国王であるソフィに新たな配下が加わるとして、ディアトロス達と一緒に挨拶に来た時である。
『アレルバレル』の世界で組織の者達を相手に手玉をとっていた『シス』とは違い、この世界で目覚めた後のシスは、リーシャにとっては普通の魔族のように感じられた為、事情をまだ聞いていないリーシャはシスに一度会いに行こうと、ここ『レイズ』魔国へ足を運んでいたのであった。
「あれ? 誰か戦ってるのかな? ちょっと気になるわねぇ?」
しかしリーシャは『レイズ』城へ向かう途中に『ラルフ』に教える『ユファ』の魔力の余波を感知して、興味をそそられたリーシャはレイズ城へ向かう事をやめて、首都である『シティアス』の方角へと進んでいくのであった。
――この突然のリーシャのきまぐれの行動が、ラルフの修行に少なからず影響を与える事をまだ誰も知らなかった。
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