第495話 矜持と信念
リディアはヴェルマー大陸に渡った後、研鑽に次ぐ研鑽を続けていた。
人間達の住む大陸『ミールガルド』を離れてから、自分の身体を痛めつけるかのようにひたすら魔物と戦い続けて、やがて『柄のない二刀の光り輝く刀』を覆う『金色のオーラ』を自らの身体に纏わせるまでに至った。
幼少期。すでに『金色の体現』に必要な先天性の輝きに、手を伸ばして手中に収めていたリディアは、ソフィやユファとの戦闘を経て遂に完全に『金色』を体現する事に成功していた。
――それからの成長速度は、今までとは比にならなかった。
祖先に『魔人』の血を持っている彼は、魔族の持つ
彼は金色の体現者であり『スクアード』を使えるという
しかし両親が共に人間であり、魔人としての力の扱い方を知らない彼は、才能という資質だけで、これまで戦い続けてきた。蓋が開いたのは他でもないソフィとの戦いからであったが、それからは自己研鑽に努めてやがてユファとの戦いで完全に才能が開花したのである。
ソフィに告げた通り、今更
リディアは勘違いしているであろうラルフに、弁解などするつもりはなくむしろ好都合だとばかりに、勘違いさせたままにしておいた。
「……魔族に囲まれた時に見せた、あの意地をもう一度俺に見せてみろ」
シーマが率いた魔族達を相手にした時、まだまだ弱いあいつは自分より格上の魔族数体を倒してみせた。その時にリディアは、ラルフを認めたのだった。
「人間だからとか、魔族だからとかは関係はない。そんな物差しで強さを測られてたまるものかよ」
かつて最強と呼ばれた剣士『リディア』は静かにそう口にすると、同じ人間のラルフに向けて再び口にするのだった。
「ラルフ。俺を越えるつもりで鍛え続けやがれ……」
やがて『ヴェルマー』大陸の荒野を再び歩く『リディア』だった。
……
……
……
ソフィはシチョウと別れた後、自分の屋敷の庭へと戻ってきていた。
傍には『サーベル』や、新しく配下に加わった『ベイル』がソフィの傍に集まってきて、撫でてくれとばかりにソフィの手の下へと頭を滑り込ませようとする。
「これこれお主達、我は今から『
ソフィがそう言うと相手をしてもらおうと思っていたサーベル達は、残念そうにしながらも修行の邪魔をしないようにと、離れたところから見守るのだった。
「全てが終わったら、皆で山へでも遊びに行こうではないか」
ソフィがそう言うと嬉しそうに喉を鳴らして、返事をする配下達だった。
「皆、喜んでおりますね」
そう言って声を掛けてきたのは、アウルベアの『ベア』であった。
「ベアか。配下達の警備は順調か?」
四百を越えるソフィ達の配下達は今『ラルグ』魔国の警備にあたっている。
その指揮を執っているのが、同じソフィの配下であるベアの役目であった。
「はい。何かあれば直ぐに私に連絡が来る事になっております」
「……うむ、そうか」
主の邪魔をしないように『
「……ベアよ」
「何でしょう?」
「もし我が元の世界へ戻ると言ったら、お主はどうする?」
「当然ついていきますし、我が同胞全員がソフィ様の世界へついていくことを選びます」
即答するベアに思わず『
「お邪魔でなければ我らは最後まで、ソフィ様の元に居させていただきたいと思っています」
「そうか……。我はお主達に何もしてやれてはいないというのに、それでもついてくると言ってくれるか」
「私どもを含めたこの世界の魔物達は、この世界のどこかに居た筈の魔王様から生み出された存在ではありますが、我々は今は、
本来このリラリオの世界に居た筈の『魔王』は、
ヴェルマー大陸に生きる多くの『リラリオ』の魔族達でさえ、レパートからこの世界へやってきたレアをこの世界で
ベア達にとっては一度も姿を見た事がない生みの親である魔王より、今目の前に居るソフィを主と認めて何処へでもついていこうという志を持っているのだった。
「そうか。お主の気持ちは理解した。我についてくるというのであれば、もう我は止めはせぬ。これからもよろしく頼むぞベアよ」
「御意!」
その場でソフィに跪いて頭を下げるベアであった。
そして少し離れた場所に居た『サーベル』達も話を聞いていたのだろう。ソフィに向けて頭を下げていたのだった。
……
……
……
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