第457話 精霊の大陸へ
リーシャは組織の者達を倒した後に部屋に二人を連れて戻った。そして直ぐに次に取るべき行動をとり始める。
「ここも奴らに見つかったから場所を移動しないと行けないんだ。私の信頼する仲間達の所へ案内するからさ、そちらへ移動しようか」
自分一人であったならば『組織』の奴らをばらけさせるために、囮行動をとるのも悪くはないと思っていたが、今のレア達を連れて各地を潜伏する事は、非常に危険性が高いとリーシャは判断したのであった。
一度はディアトロス達と合流して今後について相談した方がいいだろう。そう考えたリーシャだったのだが、そこでレアが口を開いた。
「リーシャ。その前にいいかしら? 私達がここに来たのには理由があってねぇ?」
実際は組織の者達に拉致をされたレアだったが、現在の事情を語った方がいいと判断して『ソフィ』の仲間であり『ブラスト』と同格と呼ばれていた者達の事をレアは救出したいと語り出す。
そしてその話を聞いたリーシャは最初こそ驚いていたが、唐突に笑い始めるのだった。リーシャは何を笑っているのかとレアは、きょとんとした表情を浮かべていたが、そこでリーシャは口を開いた。
「それなら安心していいよ? レア達が言っている奴と私が案内しようとした方は『
……
……
……
リーシャ達は襲撃があった後に仲間の元へと避難をする為に移動を開始した。どうやらあの場所にあのまま居続けていると、先程と同等くらいの組織の者達が次々と送り込まれてくるらしい。その言葉を聴いたレアは、改めて組織の者達のヤバさを再確認するのだった。
三千年前の時でさえソフィの持つ『魔王軍』と『組織』の戦争は、レアが手出しが出来ない程だったが、更にこうして『
先程リーシャがあっさりと片付けた組織の奴らでさえ、もしレア達だけであったならばどうすることも出来ずに倒されていたかもしれないのだ。
そう考えてレアは移動をする間中、自分の力の無さに悔しい思いを募らせるのだった。そしてそのレアの背後でシスもまた悩みを抱えていた。
(最近わたしの意識が飛ぶことが増えた。自分が自分でなくなるのを肌で感じる。ユファに会いたい)
どうやらリラリオの世界とは違い、この世界の魔族の強さを知るたびに、シスの中に眠る大魔王の
シスはいつか自分が自分の中の
「さあ着いた! ここが『精霊』達が現在住む大陸よぉ」
リーシャの言葉にレア達は顔を上げると、リーシャの見据える視線の先に大きな陸が見えた。しかしその大陸全土を包み込んでいる、何やら禍々しい『魔力』をレアは察知するのだった。
「結界? それも恐ろしく研ぎ澄まされた魔力」
『レア』はこれ程の結界を見たことがなかった。
普段『ユファ』が使っている結界や、あのソフィの屋敷にやってきた『ブラスト』という、大魔王が屋敷で見せた『結界』でさえ、ここまでの練度のモノではなかった。
「二人共離れていてね? 今から私が来た事を『
そう言うと『リーシャ』は『レア』と『シス』を後ろに下がらせた。そして安全だと確認した後に『リーシャ』は瞑想を始める。
レアとシスはぞわぞわした感覚を肌で感じ始める。リーシャの目が金色に変わり、自身の身体の周囲を『金色のオーラ』が纏われ始める。そして『リーシャ』は、その状態でゆっくりと手を前に出す。
レアの目に映っていた『禍々しい結界』に、リーシャの手が触れた瞬間――。
結界は左右に分断されていき、一筋の光が一直線に伸びて行くのを見た。
「これでよし! もう入っても大丈夫よぉ!」
リーシャの目が普通の色に戻ると同時、彼女は後ろを振り返ってレア達に安全を伝える。レアとシスは互いに顔を見合わせた後、リーシャに頷きを返すのだった。
そしてレア達一行は『アレルバレル』の『精霊』が住む大陸へと入っていくのだった。
……
……
……
精霊女王『ミューテリア』は、この大陸に入ってくる大きな魔力を感知して顔を上げる。
「どうやら『リーシャ』がこの大陸に入ってきたようだの?」
「しかし一人ではないようです。感じた事のない『魔力』が二つ程ありますが、一体何者なのでしょうか?」
「……」
ディアトロスは特に警戒をせず、無言でリーシャの来る方角を見据えるが、ミューテリアとイリーガルは少しだけ警戒をするように小さく魔力を開放し始めるのだった。
そしてイリーガルの側近『バルク』が、配下達に力を開放するように指示する。
やがて上空からリーシャが姿を見せて、笑顔でディアトロス達に向けて大きく両手を振っていた。
それを見た『イリーガル』と
「カッカッカ! 相変わらず
ディアトロスはそう言うと、孫を可愛がるような表情になり、嬉しそうに静かにリーシャに手を振り返すのだった。
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