最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

第414話 ソフィは大事な友の言葉を思い出す

「フルーフよ、お主は一体何処へ行ってしまったのだろうな」

『魔王城』の玉座に座るこの世界の魔界の王『ソ（・）フ（・）ィ（・）』は一人呟く。

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　――かつてフルーフはソフィと戦った後に、ソフィの魔力の高さに驚きつつも興奮しながら喜んでいた。

「ソフィよ！　お前は本当に凄い魔族じゃな？　ワシは自分の世界では負けた事がないのだがなぁ」

　そう言ってフルーフはソフィの肩に手をまわして豪快に笑った。

「うーむ。まだ我は誰にも負けたことがなくてな？　それが悩みでもあるのだが……」

　ソフィは目の前で大笑いをしているフルーフにそう言うと彼は首を横に振った。

「何を贅沢な事を言っておるんじゃ？　強いと言う事は大事な者達を守れると言う事じゃ。誇る事はあっても、そんな顔をしてはならぬぞ？」

『レ（・）パ（・）ー（・）ト（・）』の世界の支配者は『ア（・）レ（・）ル（・）バ（・）レ（・）ル（・）』の世界の支配者にそう語ってきかせるのだった。

「それになソフィよ。ワシはまだまだ自分の強さに限界を感じてはおらぬ。お前が今後も誰にも負けなければワシが新たな魔法を編み出して、強くなってワシがお前を倒してやろう！」

「ふふ。我に大負けした直後によくそんな言葉が吐けるな？　フルーフよ」

　ソフィがそう言うとフルーフは当然だとばかりに頷いた。

「お前も世界を束ねている者であれば、些細な失敗など気にはせぬことだぞ。統治をするモノがいつまでも私事の失敗に拘ってどうするというのだ。負けは負けだ素直にそれを認めて、次は負けないように努力をして見返してやれば帳消しじゃわい！」

「クックック！　フルーフよ、我はお主を気に入った。いつでも用があれば我の城へくるがよいぞ」

「ああ、そうさせてもらうか」

　そう言うとフルーフは閃いたとばかりにソフィの顔を見る。

「そうだ！　お前に『レパート』の『理（ことわり）』を教えてやろう！　そうすればお前も私の世界に来ることが可能だ！」

「ほう？　世界を跳躍するとお主が言っていた魔法をか？」

「ああ！　『概念跳躍（アルム・ノーティア）』という魔法でな。ワシが長年かけて作り上げた世界転移魔法なのだが、これは便利じゃぞぉ？　この魔法はワシが認めた者にしか教えない魔法なのじゃが、ワシもお主が気に入った！　特別に懇切丁寧に最初から教えてやろう」

　戦いの後で顔を腫らしながらも、そんな事を告げたフルーフにソフィは笑う。

「それは楽しみだな」

「この魔法は難しいからそれなりに時間は掛かるとは思うが、お前程の魔力であれば大丈夫じゃろう」

「まずは『理（ことわり）』からであるからな。確かに相当に苦戦しそうなものだ」

「ワシの愛娘にもこの魔法を教えたんだがな。あの子はかなりの早さで自分のモノにしてみせてよぉ？」

「お主に娘がおるのか。それで？」

「あっさりと覚えたもんだからワシは驚いてな？　ついあの子にまだ早いと思いつつも『その魔法を使って一つの世界を支配してこい』と告げてしもうたんじゃ」

「それは、何というか……。うむ。お主らしいことだな……」

　若干顔を引きつらせながらフルーフを見た後に、フ（・）ル（・）ー（・）フ（・）の（・）娘（・）と（・）や（・）ら（・）に（・）同（・）情（・）す（・）る（・）ソ（・）フ（・）ィ（・）であった。

「あの子が帰ってきたときにワシが居なかったら可哀想じゃろう？　だからあの子がい（・）つ（・）帰（・）っ（・）て（・）き（・）て（・）も（・）い（・）い（・）よ（・）う（・）に（・）、ワ（・）シ（・）は（・）元（・）の（・）世（・）界（・）に（・）戻（・）ら（・）ね（・）ば（・）な（・）ら（・）ぬ（・）の（・）だ（・）。だからお主に『概念跳躍（アルム・ノーティア）』を教えるのはその後でも構わぬか？」

「当然構わぬよ。我はまず『理（ことわり）』を覚えるところからになるだろうしな。お（・）主（・）は（・）し（・）っ（・）か（・）り（・）と（・）娘（・）を（・）出（・）迎（・）え（・）て（・）や（・）る（・）の（・）だ（・）ぞ（・）」

　ソフィがそう言うと、嬉しそうな顔をしたフルーフは大きく頷いた。

「ワシはしばらくはこの世界におるから、何かあればお主を頼りにさせてもらうぞ？」

「ああ、構わぬ。いつでも待っておるぞ『フ（・）ル（・）ー（・）フ（・）』よ」

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　――これがフルーフと交わした最後の言葉だった。

　そして次に再会した時にはもう目を虚ろにして、忽然とソフィの前で姿を消したまま、居なくなってしまったフ（・）ル（・）ー（・）フ（・）であった。

「フルーフよ……。お主は愛娘が帰ってきた時に『よくやった』と褒めてやりたかったのだろう？　我が必ずお主を探し出して娘の元へ帰してやる。だから待っておれよ」

　誰も居ない部屋でソフィは再び決意を旨にして、真剣な目をして虚空を見つめてそう独り言ちるのだった。