第412話 レアにとっての居心地のいい場所
エイネとの模擬戦で気を失っていたレアは、長老の家で目を覚ました。レアの横でずっと目を覚ますのを待っていたリーシャは、直ぐにレアが目を覚ましたことに気づいて嬉しそうな顔を浮かべた。
「レア! もう大丈夫?」
「んぅ……?」
寝かされていた布団の上でレアは身体を起こして、何があったかを思い出そうとする。
「ああ……。そういえば私はエイネと戦って、そこで気絶したのねぇ」
そこで長老の家には『リーシャ』しかいないことに気づいたレアは、ずっと一人でレアが起きるまで看病してくれていたリーシャの頭を撫でる。
リーシャは猫のように目を細めながら、レアに撫でられてご満悦といった表情で嬉しそうに笑う。
「私が起きるまで看ててくれたのねぇ? ありがとうリーシャ」
「全然いいよ! レアの顔だったら何時間見てても飽きないもん!」
レアにもっと頭を撫でてとせがむように、リーシャはレアに寄り添ってくる。
それからは会話は無かったが、互いに居心地よくのんびりとした時間が流れる。ここに来た当初は森でリーシャと口喧嘩をして、この子とは絶対に仲良くなれないとレアは思っていた。
しかし一緒にご飯を食べたり、修行をしたりしていく内に、いつの間にかレアはリーシャに懐かれていたのだった。
そして徐々にレアはこの世界から離れる事が、名残惜しいなと感じるようになっていた。
「ただいま、リーシャ! レアさんはもう起きてる?」
そこへどうやらどこかへ行っていた『エイネ』が帰ってきたようだった。
「あ! エイネさんおかえりー! レアもう起きてるよ?」
返事をしながら立ち上がったリーシャは、慌ててエイネを迎えに行く。離れて行くリーシャに少しの寂しさを感じたレアだったが、そんな自分にふと気づいて苦笑いを浮かべたあとにレアもエイネを出迎えるのだった。
部屋に入ってきたエイネは、リーシャの頭を撫でながらレアに声を掛ける。
「もう大丈夫ですか? レアさん」
「ええ、大丈夫だとは思うんだけどねぇ。単に気付いていないだけで、貴方に思いきり殴られた箇所の内臓とか、取り返しのつかない損傷とかしてなかったらいいのだけどぉ?」
少しだけイジワルのつもりで言ったレアに、エイネは複雑そうな顔を浮かべる。
「ふふっ。冗談よ。それにしても今までどこへ行っていたの?」
窓から外の様子を見るが、レア達が戦っていた頃はまだ昼過ぎだったと言うのに、今はもう日が暮れ始めていた。
「そう。それなんですがね? 長老が朝から姿が見えないので、近くを探しに行っていたんですよ」
そう言えばレアが朝に起きた時から、すでにバルドの姿はなかった事を思い出す。
「魔力感知でも反応がないのねぇ『
レアがそう言うと、慌ててエイネが止める。
「だ、ダメですレアさん! ま、万が一ですが。組織の残党と戦っている可能性を考えると『
「あ、ええ。これも冗談よ、冗談。貴方やバルドに『
――危ないところだった。
口では冗談と告げたレアだったが、実際はそのことを忘れて『
『レパート』や『リラリオ』の世界では、レア程の力があれば、たとえどんな相手に『
『
魔力差がそこまで大差なくとも激痛が伴う程であり、もし万が一
「まぁ今も長老には、多くの軍時代の仲間がいますし。万が一『組織』と戦っていたとしてもすぐに戻ってくる事でしょう」
どうやらエイネはそう結論付けて、ここに戻ってきたようであった。
「エイネさん。私お腹すいたよぉ」
エイネの足にしがみつきながら、そう不満を漏らすリーシャにエイネは笑いかける。
「はいはい、すぐに用意しましょうか」
レアはここで過ごすようになって、当たり前となった光景を見て嬉しそうに笑う。
――しかし彼女はこの世界の存在ではない。
フルーフの情報を得られない以上は、残してきた『レパート』の『魔王軍』の舵を取るために戻らなければならない。
それこそがレアのもう一つのやるべき事であり、フルーフの居場所を守るために為すべき事なのである。
『魔王軍』の軍団長として、フルーフの魔王軍を一時的に自在に動かせる権限を与えている『レインドリヒ』を残してきてはいるが、あのヴァルテンといった信用ならない『大魔王』が紛れている以上は、レアもいつまでも留守にするわけにはいかないのであった。
…………
「エイネ。リーシャ。夕ご飯の前にね?
……
……
……
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