第405話 最強の大魔王は人間に興味を抱く

 すでに戦力値が100億以下の大魔王程度であれば、骨すら残らない程のソフィの一撃。大陸はソフィの『普遍破壊メギストゥス・デストラクション』によって粉々に消し飛び、エルシスの居た場所は何も残っていなかった。


 しかしソフィは笑みを浮かべたまま更に『』は増していく。エルシスの体力が全く減っていないのを『漏出サーチ』で感知したからである。


「嬉しいよソフィ。君はどうやらボクの指標になれる存在のようだ……! ようやく、ようやくその存在に、ボクの探していた存在に出会えた」


 消し飛んだ大陸の上空で、無傷のままエルシスは下に居るソフィを見下ろしていた。


「クックック『逆転移』させられた直後に、お主は先程の騎士と場所を入れ替えたのか?」


 ソフィがそう言いながら死霊達の居た場所を見つめる。その場所にはすでに聖者たちによって、死霊達は消え去っていた。


「ご明察だよ。キミの強引な魔力で居場所を強制指定されたボクはその後に、開発仕立てで自信がなかった『魔法』で、聖者の騎士を上空へ転移させて入れ替えたのさ。どうやら上手くいったようでよかった。そして自分のにも自信が持てたよ。


 簡単に言うがあの僅かな時間の攻防の間に慌てずに正確に魔法を選別して、取捨仕切る事がどれ程に難しいことだろうか。それも今この時のソフィは『真なる大魔王』の領域から更に『青』5.0 『紅』1.2からなる『二色の併用』を用いているのである。


 通常の状態ですでに『戦力値』から、もの上乗せされた『魔力』と『戦力値』なのである。


 すでに今のエルシスは『魔界』で戦ってきた『大魔王』達を遥かに凌ぐ強さを見せていた。


「クックック。お主は言っていたな? お主の強さを測る指標のような存在には出会わなかったと」


「そうだね。ボクは人間だから『人間界』ではここまでの力ですらこれまで出した事はなかったかな」


 ソフィはエルシスの言葉に満足気に頷くのだった。


「安心するがよい。我はお主の期待を裏切らぬ。我と同じ孤独を味わいし人間よ。


 ――その瞬間、ソフィは力を開放する。


 吹き荒れる魔力は一瞬だけソフィの周りに体現して、たったその一瞬でエルシスの見える視界の範囲にある大陸全土が消し飛んだ。


「こ、これは……!?」


 エルシスが現在のソフィを『漏出サーチ』で確認した後に驚きのあとにキラキラと目を輝かせ始めるのだった。


 【種族:魔族 名前:ソフィ(真なる大魔王化 限界値) 状態:金色

 魔力値:測定不能 戦力値:測定不能 所属:アレルバレル】。


「さあ、我を楽しませてくれ」


「大魔王ソフィ。どうやら君にならボクは本気を出せそうだよ」


 単純に相手の数値を上回るだけではなく『漏出サーチ』で表示される数値は互いに測定不能。


 つまり互いに力を開放する度に、相手の戦力値を倍以上に上回る結果を示し続けて、目まぐるしく逆転を繰り返しているというわけであった。


 現在のソフィの魔力値は2000億に届くかというところである。


 最早『魔族』や『精霊』に『人間』と、今の『アレルバレル』の世界に生息するどの生物であっても、この領域には辿り着くのは至難といえただろう。


 ここまでの戦いでエルシスが耐えた事だけでも、ソフィのはある程度潤されていた。


 しかしソフィにとっては自分の力を限界まで出せただろうと思えるにはまだまだ程遠かった。この状態でようやくソフィが出せると判断する、想定値のといったところであった。


 だがそれでも今回のエルシスとの闘いは、過去最高の力を出した状態といえた。


『真なる大魔王』の最大戦力値まで上げた状態で、僅かな間とはいっても『青』と『紅』の『二色の併用』を使った状態で『エルシス』に更に上をいかれたのである。


 今までの経験上でここまで『魔族』を相手にさえ、力を見せたことはない。それをただの人間が限りない可能性を見せてくれたのである。


 ――この時、この瞬間からソフィは、の持つ潜在能力というモノに希望を抱くのであった。


「そういえば、主の名はなんだったかな?」


 漲る闘争心を抑えながら『ソフィ』は認めた人間の名前を尋ねる。きょとんとした表情を浮かべたエルシスだが、次には満面の笑みを浮かべた。


「ボクは。同じ人間達からは『』と呼ばれているよ」


「クックック! そうかそうか。大賢者『エルシス』か。お主の名を生涯忘れぬだろう」


 ……

 ……

 ……


「ソフィ様、ソフィ様!!」


「む?」


 過去のエルシスとの闘いを思い出していたソフィは、配下の声で意識を戻した。


「ディアトロス様が話があるそうで、この後出来れば時間を作って欲しいと仰っておられましたが、どうなされますか?」


 今は『人間界』で宰相の立場に居るディアトロスは、いきなり『念話テレパシー』でソフィに話しかけると、迷惑になると判断して配下の者に伝令を頼むのであった。


「うむ。構わぬよ。いつでも我に『念話テレパシー』を飛ばせと伝えてくれ」


「御意!」


 配下が玉座の間から出ていったことで、ソフィの居る部屋に再び静寂が訪れた。懐かしい過去の『友人』を思い出した事により、ソフィの表情には自然と笑みが浮かんでいた。


 ――だが、この後ディアトロスから伝えられる言葉に、折角の晴れやかな気持ちが薄れて、陰鬱な気分に変えられてしまうソフィであった。


 ……

 ……

 ……

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