第390話 大魔王ロンダギルア
『ロンダギルア』が『魔界』の南方にある大陸をその手中に収めた後、ついに残り半分程で完全に魔界の制圧が完成するというところで、中央の大陸の侵略に乗り出した。
ロンダギルアは南方の大陸の出身であり、魔界中央から上の情報など皆無に等しかった。
アレルバレルの『魔界』は想像を絶する程に広い。過去に多くの種族が暮らしていた領土も現在はその全てが『魔族』が支配しているために、同じアレルバレルの世界であっても『人間界』とは雲泥の差といえる程の広大な大陸がいくつも存在しているのである。
だからこそ魔族である『ロンダギルア』でさえ、
――それまで好調に支配領域を増やしていたロンダルギアだったが、この件を境に全てを失うのだった。
その中央の大陸の中心人物だった魔族の名は『
争いの絶えない『魔界』だが『ソフィ』という存在を知る者が多い中央周囲の大陸では、住む魔族達も争いを好む性格ではない事が功を奏して、この大陸の周りは平穏そのものでまさに『砂漠のオアシス』のような場所だった。
しかしそんな中央の大陸にロンダギルアの配下の軍勢たちが乗り込み、好き勝手に暴れてしまう。
普段温厚なソフィではあったが、決してそれはソフィの性格の全てではないのだ。当然魔族らしく戦闘を好む一面もあるし、仲間のために何か出来ないかと考える優しい一面もある。
――そして仲間をやられた時、普段眠っている彼の本来の
そしてこのソフィの持つ一面こそが、周りの大陸に住む魔族達が決して
仲間を襲撃された事を知ったソフィは、一夜にして大陸に乗り込んできたロンダギルアの魔族を消滅させた。それも二度と蘇ることをさせないように『魂』ごと消滅させる徹底ぶりであった。
更にそれだけに留まらず『ソフィ』の怒りは、自分の暮らす大陸を攻めるように指示を出した『ロンダギルア』に向かった。
そして中央大陸の大魔王『ソフィ』が動いた事を知った周りの大陸の大魔王の領域にいる魔族達もまた、ソフィに付き従うように足並を揃えて『ロンダギルア』の軍勢に敵対し始める。
――彼らの目的は一つ。
ソフィの狙いはあくまで『ロンダギルア』とその一味だけだったが、他の『魔界』に生きる大魔王達にしてみれば、ここで戦争に参加してソフィと行動を共にしなければ、自分達もロンダギルア側にみられるかもしれないと傍から見れば
この時のソフィは『アレルバレル』の魔界の支配など一切行っていない。あくまで中央大陸で仲間達と静かに暮らしていただけである。
しかしそれでも『ソフィ』を怒らせるとまずいと考えている魔族は、この『アレルバレル』にはあまりにも多かった。
そしてその理由は
何千年経ってもその時の出来事は風化する事は無く、争いが次から次に起きる『アレルバレル』の『魔界』であっても、必ずソフィの居る中央大陸付近には波風を起こすことだけは避けられていた程であった。
それが今回『ロンダギルア』という勘違いをしているたった一体の魔族の手によって、静かにしてくれていた『最強の大魔王』を怒らせて表舞台に引きずり出してしまったのである。
数千年という決して短くはない期間を使ってようやく、過去の過ちを風化出来るかもしれないと考えた『魔界』の魔族達は、この勘違い野郎一体のせいで全てが水の泡となったのである。
そんな中北方側で一番最初にソフィに同盟の表明の意を示した大魔王の名は『ディアトロス』。
かつてこの魔族もまた『ソフィ』と手を合わせたこともある魔族だった。結果はソフィが勝利を手にすることになったが、悔恨を残さずにいずれ再戦をソフィに約束して力をつけている途中だったところに、今回の事件が起きたのだった。
ディアトロスにとってはソフィは大事な再戦を約束を交わした間柄であり、自らの矜持をかけた大切なライバルだと思っている。そんなソフィに手を出そうというその考えに苛立ち、ソフィ側に加担したというわけであった。
ソフィとディアトロスという魔界の中央大陸から、北方側にかけての
過去の歴史を何も知らない若い者達も膨れ上がっていく『ソフィ』の軍勢に恐れをなして、気が付けば北方にある大陸全ての魔族達が『ソフィの軍勢』となっていた。
対して『魔界』の南方に存在する大陸を支配圏に置いているロンダギルアは、次々と中央大陸と北方大陸に同盟がなされていく『ソフィの軍勢』に対抗するべく『人間界』の『皇帝』にも参戦要請を出した。
そして『皇帝』は『ロンダギルア』に
人間界の皇帝が要請に応じたことで、帝国の軍隊は次々と魔界に向かっていく。皇帝の懐刀である大賢者とその魔法部隊も勿論参戦した。
ロンダギルアにとっては人間界の帝国軍というよりも、大賢者の力を欲した上での要請だった。
これで全ての準備が整ったロンダギルアたちは、ソフィと魔界の北方側大陸連合との戦争に乗り出した。
そしてこの戦争は『
……
……
……
ロンダギルアの戦力は、ロンダギルアが率いる南方勢力と、皇帝が擁する帝国軍の大賢者。そしてその魔法部隊。
対するはソフィと北方大陸連合。幾万を超える魔族達と人間たちを巻き込んだ戦争が始まり、至る所で戦いが始まった。
――『アレルバレル』という世界の長い歴史の中でさえ、多くの魔族が参加したこの戦争は壮絶を極めた。
北方側も南方側も魔族達の戦力値は数百億を超える者たちばかりであり、戦闘経験も豊富な魔界の大魔王たちの戦争は実に壮観だった。
青の練度が4.5を越える者たちが幾万と居る場所で互いに敵を殺そうと本気で戦うのである。それは地獄と呼んでもおかしくはないだろう。
しかし『人間界』の人間側も負けてはおらず、大賢者ミラは仲間の能力を向上させながら自身もまた億を超える魔族と戦い勝利していく。
『エルシス』の『大賢者』という称号を継ぐような真似をしているだけあり、この『ミラ』という当代の大賢者が使う魔法の多くは『神域の領域』であった。
魔族達の『
この『
北方大陸側の魔族達も大賢者ミラの戦いぶりに驚き、人間の強さを初めて目の当たりにするのだった。このままでは戦争は長引くだろうと、戦争に参加した者たちの多くは思ったことだろう。
しかし『ソフィ』や『ディアトロス』が戦場に顔を見せ始めた頃。急激に局面は北方側に傾いていくのだった。
『ディアトロス』の『神域魔法』である『
つまりディアトロスの魔法影響下に晒された魔族や人間は、手や足、耳や目、魔力に至るまでの一部分を削り取られてしまった。それもディアトロスの魔法の範囲内、数千人規模である。
突然欠損させられた者たちはパニックに陥り、普段の戦力の半分以上を刈り取られてしまう。それは大魔王といった領域同士での戦い中であれば致命的である。
更にそこに『真なる大魔王』の領域まで、戦力値や魔力値を上昇させた『ソフィ』が『魔神域の魔法』である『
『ソフィ』や『ディアトロス』の真に恐ろしいところは、魔法の影響が単体ではなく全体に行われることである。
南方側の魔族は局地的での戦いでは、とてつもなく強い力を持つ大魔王達が揃っていたが『ソフィ』や『ディアトロス』のような
局所的な部分ではまだまだロンダギルアの軍勢が勝ち越しているようなところも多く見られたが、このままのペースで戦争が続けばソフィ達が勝利するだろうと思われた。それ程までにソフィやディアトロスが居る戦場では勢いが違っていた。
だが、ここでそんなソフィ達のいる戦場で一人の人間が姿を見せる。
『二色の併用』のオーラを纏うその若者を見て、怒りの形相を見せていた『ソフィ』の表情が素に戻る。
「ソフィよ。あれの相手はワシにやらせろ。お前が本当に倒さねばならない相手は他にいるじゃろう?」
いい玩具を見つけたといった表情を見せたディアトロスの言葉にソフィは頷く。
「あの人間とは我もやりたかったが仕方が無いな。お主に譲ろう。確かに我はあの『
ソフィがディアトロスにそう告げた後『高速転移』で一気にこの戦争の総大将である『ロンダギルア』の元へ向かっていった。
ミラは遠ざかっていくソフィの後姿を目で追ったが、追いかける素振りは見せなかった。
「さあ選ばれた人間よ、その力をワシに見せてみよ」
「仕方ないな。俺はまだ死ぬわけにはいかない。俺の野望の為に」
後に『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます