世界間戦争編
第255話 ヴァルテンの野望
ブラストがイリーガルの魔力によって『根源の玉』で転移する数日前。
遂に魔王レア達の戦争の準備が整い終えた『レパート』の魔王軍は、ソフィの居るリラリオの世界へと侵攻をしようとしていた。
現在はレアの城として使われているフルーフの魔王城に色々な思惑を抱く、魔王達が集まっている。
この世界の大魔王にして魔術師『レインドリヒ』。そして元々はこの『レパート』の世界の魔族ではなくソフィと同じ世界である『アレルバレル』の世界の魔族であった大魔王『ヴァルテン』。
そして『
大賢者の組織に属するヴァルテンは、レアを策略にはめる為に行動してソフィをフルーフを破壊した対象に仕立て上げる事に成功した。
ヴァルテンの狙いはレアが居なくなった後に、この『レパート』という世界の王になる事である。
魔王を冠とする王にとって一つの世界を束ねるという立場は最終目標となる理想であり、それだけ重要視する。
元々は『アレルバレル』の『魔界の王』の座を狙っていたヴァルテンだが、層が厚すぎる『アレルバレル』の世界では彼は王にはなる事が出来ずに諦めた。
次から次に生まれ出る魔族の強者に加えて大賢者『エルシス』に近いと
彼の自尊心は傷つきこのまま二番手、三番手を甘んじて受け入れるしか無いのかと悩んでいたが、別世界からフルーフとユファが転移してきた事で全てが変わった。
大賢者と手を組み計画に協力する事で、フルーフ達の世界をくれると大賢者に約束させたのだ。
計画はとんとん拍子に上手くいって、この世界の王まであと一歩という所まで来たのだが、フルーフの配下を名乗るレアが現れたことにより、またヴァルテンは世界の王の夢が
しかし今また転機が訪れてあの化け物と、レアを潰し合わせる機会を作れたのだ。
レインドリヒは前回のやり取りによって、すでに手中に収めたと言ってもいい状況になり、全てが上手くいっているといえて、ようやく長いトンネルの出口が見えてきたと言っていい事だろう。
リラリオに向かった後、作戦に従うフリをしながらヌーが来るのを待って、奴が暴れ始めるのを見た後にこの世界へ再び戻れば、全てが完遂であり野望は達成される。
――この世界の王となった後の事を考えると、彼は笑いが止まらない。
…………
ヴァルテンの様子を見て『レインドリヒ』は苛立ちまじりに舌打ちをする。ソフィという魔王をこの目で見て会話をした時までは最高の気分だったというのに、この謀りの魔王のせいで気分は最悪である。
そんなレインドリヒは計画に加担するつもりはもう一切なくなっており、なんとかして同胞であるレアを助けて、自分をも謀りにはめた『ヴァルテン』の悔しい顔を見て溜飲を下げたいと思っていた。
(問題はやはり『ヌー』の存在か。
大魔王ヌーは話など通じる相手ではないというのが、世界が違えども多くの魔王達の共通の認識である。
ヌーは平気で約束を破るし、同盟や仲間という言葉を信用してはいけない。あっさりと裏切り、あっさりと同盟相手を背後から殺す。
しかしあまりに強すぎて誰も文句は言えないし逆らえない。そんな化け物がリラリオの世界に来るのであれば、レアが助かる確率は著しく下がる。
何とかしてリラリオの世界へ転移する前に、レアに接触して真相を告げたかったが、あのヴァルテンが常にレアの傍にいる為にそれもかなわない。
『
ここまでやる気になっているレアを説得する事には、相当の時間を要するだろう。
やはりヴァルテンを何とかして殺して『
レインドリヒの頭の中で色々な選択肢が頭に浮かんでは消えていく。そうこうしている間にもレアが転移の為の詠唱を始めようとしていた。
…………
「さて、始めるわよぉ?」
この場にいる多くの魔族を同時に『世界間転移』をさせる為に、膨大な魔力がレアから溢れ始めるのだった。
この魔力を見て勝てると思える魔王が、果たしてどれくらいいるだろうか。
ちらりと先程まで笑っていたヴァルテンを見ると、彼もやはり忌々しそうにレアを睨んでいた。
ヴァルテンも決して大魔王としては決して弱くはない。それは一時的とはいっても、同盟関係を結んでいた『レインドリヒ』が一番よく知っている。
しかしレアは『ヴァルテン』と『レインドリヒ』を同時に相手にして、あっさりと勝利して見せた過去を持つ。
今ならばこの魔力を見れば、圧倒的な差があるのも分かると言うものである。
――現在レアの身体を纏っているオーラは二色。
『青』と『紅』の二種類の色が混ざりあっている『併用』のオーラである。
『
普段であれば『
【名前:レア(大魔王化) 魔力値:測定不能 戦力値:測定不能】。
このように表記されるのがオチだろうと分かるし、何より今のレインドリヒの魔力で自分より格上の存在であるレアに対して『
『
特に相手の魔力を数値化させるにあたり、測る相手の『魔力』そのものを『魔法』で術者の脳に強制的に理解しようとさせる為、その膨大な魔力の情報量に術者の魔力が足りえていない場合は、無理に理解しようとして脳が焼き切れてしまう可能性があるのである。
卓越した魔力コントロールを持つ者であれば、危険だと感じた瞬間にその僅かな時間で魔力を一定までコントロールして、脳に情報が行く寸前に『魔法』を取りやめるといった高等テクニックも使えるのだろうが、そんな芸当が出来る者は限られる。
――そんな芸当が出来るとしたら大賢者級の魔法使いか、それこそ大魔王『ソフィ』くらいにしか出来ないだろう。
他にも出来る者が居るかもしれないが、自分の魔力に自信を持っている『魔術師』レインドリヒでも到底不可能であった。
「レインドリヒちゃん? つまらない事を考えていないで貴方も準備しなさぁい」
どうやらこれだけの魔法を詠唱しつつ、レインドリヒの考えている事も察したのだろう。やんわりと諫めるレアであった。
「……ああ、すぐに始めるよ」
こうして彼はレアを説得出来ぬままに、転移の準備が始まるのであった。
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