ヴェルマーの闘技場編

第234話 ヴェルマー大陸の名物

 トウジン魔国の復興計画が立ち上がってから更に数日が経った。


 徐々にヴェルマー大陸にいる魔族達に冒険者ギルドの存在が浸透していき、ラルグ魔国やレイズ魔国に所属する魔族達の半数以上は冒険者ギルドに加盟していた。


 トウジン魔国の冒険者ギルドはまだ簡易なもので、ギルド長などはレイズ魔国のレルバノンが兼任している。


 修復された小さな建物を冒険者ギルドとし、窓口だけを設けられたトウジンの冒険者ギルドだが、血の気が多く戦闘を好む性格が多いラルグ魔族は8割以上が、トウジンの冒険者ギルドに所属している。


 その理由は加入する事で闘技場への参加が出来る為であり、この新たにトウジン魔国で出来た『闘技場』の存在は大した盛況ぶりであった。


 そして最近ではトウジンの冒険者ギルドに併設された、居酒屋もまた人気だった。クエストの合間の利用に最適であり、更にはミールガルド大陸の中で人気だった食べ物が出されている事も人気の秘訣であった。


 ヴェルマーにはない麺類の食べ物や、ユファ達が良く行っていた酒場の『豚の魔物』のすじ肉が出されている。


 基本的にヴェルマー大陸の魔族達は、単に火で焼いただけの肉を食べる事が多く、味付けなどにこだわりはなかった。しかし一度味付けされたものを食べてしまうと彼らももう元の食事には戻れない。


 こぞってトウジン魔国に集まるようになり、食事はギルドの仕事を終えた後の立派な娯楽の一つとなっていた。


 そんなトウジン魔国であるが、最近ようやく闘技場が完成して簡易ではあるがリングも設置された。今はまだ参加者の多くが勲章ランクが低く、AやBクラスを自分で選ぶ事は出来ていない。


 しかしDクラスでもソフィの配下達がボスな為、十分な難易度で参加者は楽しんでいた。


 闘技場のルールは簡単なもので、ボスに挑戦するまでに2回参加者同士で戦い、勝ち残った者がボスに挑めるというルールである。


 現在は勲章ランクがGランク同士で戦う者が多く、勲章ランクがE以下の者はDクラスしか挑めない。そしてDクラスのボスは、ソフィの配下の魔物から日替わりで選ばれる。


 Dランクボス一覧


『グランドサーベルタイガー』『キラービー』『ハウンドドッグ』『クラウザーワーム』『デスバード』『アウルベア』。


 『平均戦力値』700万(但し『アウルベア』がボスの場合は戦力値は1500万である)。


 どのボスも戦力値が上位魔族階級なので、新規の冒険者となった者だとかなりの苦戦を強いられる。アウルベアの日は運が悪かったと思って諦めるしかない。


 勲章ランクがD以上になれば、Cクラスのコースも選べるようになり、それまで闘技場を利用していればおのずと強くなっているために、闘技場は養成所としての役割も担えるという代物である。Cクラスのボスは『ロード』の五体が日替わりで選ばれる。


 Cランクボス一覧


『サーベル』『キラー』『ハウンド』『クラウザー』『デス』。


 Cランクのボスは基本的に『最上位魔族』階級クラスなので、勲章ランクD以上になったからといって研鑽を積んでいない者は、Cランクボスの前にあっさりと敗れる事だろう。


 ヴェルマー大陸の魔族であっても、この闘技場をCクラスまで攻略する事は容易ではないのである。


 ましてや勲章ランクA以上で挑めるようになる『Bクラス』のボスは戦力値が4億を越える『ユファ』であり『Aクラス』のボスは戦力値が10億を越える始祖龍『キーリ』なのだから、大魔王であっても攻略は不可能に近い。


 もちろんずっとこのままという訳ではなく、報酬リストがしっかりと決められる頃には、AとB両コースのランクボスは変えられる予定である。


 まだまだこの闘技場という娯楽施設も手探り段階であり、完全に完成という訳ではないが、それでもトウジン魔国の名物として今後も活躍していってくれる事であろう。


 そしてそんな闘技場ではあるが、一人の男が闘技場の噂を聞きつけて参加を申し出るのだった。


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