組織の計画編
第232話 待っていた現実
そこにはマリス達にとって輝かしい栄光が待っている筈だった。しかしそこに待ち受けていたのは――。
――王の間に居るのは見渡す限りの『化け物』達だった。
絶句して言葉が出てこないマリス達を見つめる数多くの『目』。人間とも魔族とも違う歪で奇妙な『存在』達が居た。
「よくゾ、まイった、ゆうシャ、タチよ」
マリス達は救いを求める様にその声を発する者の方を見るが、この声を出しているダイス王もまた体全身に『目』がある化け物だった。
「い、いったいこれは……!?」
「いつの間に魔物達が入り込んだと言うんだ!」
マリス達はこの異様な光景を目にして戦闘態勢をとる。しかし武器といった類は、部屋の前で兵士達に預けている為に素手である。
「リルト! 魔法の詠唱を頼む」
マリスがそう告げると賢者である『リルトマーカ』は、パーティリーダーのマリスに頷いて直ぐに攻撃魔法を放つ為の詠唱を始めた。
「紅蓮の炎よ、我の声に……」
しかし詠唱の途中に『リルトマーカ』の声が唐突に途切れてしまう。
「り、リルト?」
訝しげに賢者をみると目を虚ろにしたまま呆然と虚空を見つめる、賢者リルトマーカの姿があった。
「ど、どうした! リルト……っ! くっ、ヴァリス! シャダイ! リルトを抱えて一度部屋を……」
部屋を出ようというマリスの言葉が最後まで続く事はなかった。
何故ならすでに戦士ヴァリスと剣士シャダイの二人もまた、何かに捕らわれるように目を虚ろにしていたからである。
「なにを あわてて いる 勇者マリス? 王の眼前 であ る 静かにしたまえ」
ダイス王に扮した化け物の横に並んでいた大臣がそう口にすると、マリスの頭に痛みが響き始める。
「うぐ……! 何なんだこれは! あ、頭が……」
勇者マリスは唐突に頭痛に襲われて、その場に立っていられなくなった。
「終わり、ダナ?」
ダイス王の恰好をした化け物がそう告げると、その場に居た異様な化け物達が一斉に大臣の方を向いてその場で跪いた。
「勇者マリスとその仲間達は勲章を授与された後に『魔界』の地へと再び戻り、魔族の残党を狩りに向かったとでも民達に伝えろ」
大臣であった者がそう言うと、偶像であった王が頷きを返した。
勇者マリス達は歴史に名を残す代わりに、その短い生涯を閉じる事となるのであった。
…………
ダイス王に化けていた化け物に大臣がそう指示を行った後、彼はダイス王城の地下にある牢に出向きそこに収監されている一人の男の牢の前で歩みを止めた。
「ディアトロス殿。これで全て終わりました。貴方はもう用済みです」
ディアトロスと呼ばれた男は、憎々しげに自分と同じ顔、そして同じ姿をした『偽大臣』を睨む。
この牢屋に入れられているディアトロスこそが、本当のこの国の大臣であり『大魔王』ソフィの命により、この国の人間の為に遣わされた魔族であった。
「貴様……。こんな事をしてどうなるか分かっているのか?」
ディアトロスがそう言うと偽りの大臣は、歪んだ笑みを浮かべながら告げる。
「どうなるというのでしょうか? 既に大魔王ソフィはこの世界に居らず、奴の配下の魔族達は我々が始末しました。残すはお前を含めた『九大魔王』くらいのものなのですよ?」
……
……
…
彼らは勇者『マリス』達という偶像を作り上手くソフィの配下達を消していった。
そして一番の問題であったソフィ自体を別世界へ転移させる事に成功し、作戦の八割以上は成功となった。残りはソフィの懐刀ともいえる直属の配下、九大魔王の抹消である。
そしてその九大魔王の抹消もそこまで難しい事ではない。
既に多くの九大魔王は組織の幹部達の手によって、別世界へ跳ばす事に成功しているからである。
組織の幹部達は勇者パーティの賢者『リルトマーカ』などとは、比較の対象にもならない程の魔力を持つ者達であり、更にはこの組織の総帥である大賢者『ミラ』は、過去の時代のアレルバレルの世界に存在した、大賢者『エルシス』と
この大掛かりな計画は『アレルバレル』の世界の闇の部分に生きる者達、力ある者達の総意であり、魔族、人間、精霊その他多くの種族達を巻き込んだ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます