第230話 新たな縮図

 現在ラルグ魔国では新たな王が誕生したという知らせを受けて、ラルグ魔国の属国となっている数多くの国の魔族達が集まっていた。


 シーマがミールガルド大陸との戦争で戦死した事も合わせて伝えられた為に、ラルグに所属する魔族たちの全ての者達が集まっていると言っても過言ではない。


 ヴェルマー大陸とミールガルド大陸の戦争で多くの犠牲を出したラルグ魔国だが、それでも各国に常駐していたラルグ魔国軍の数を合わせると、レイズ魔国の数の比ではなかった。


 集まったラルグの魔族達の中には王となるソフィという存在がどういったものか、見極める為に集まっている者もいる。


 魔族達は自分より強い者でなければ決して認める事はない。それがヴェルマー大陸を統一した『ラルグ』魔国の者達であれば尚更の事である。


 シーマの代わりに王となったソフィという魔族が、大したことがないと判断したならば彼らは認めないだろう。そしてそんな多くの魔族達の前にソフィ達が姿を見せた。


 ――それは、いつものソフィの姿ではなく『真なる魔王化』を果たした魔族の姿であった。


 見た目は子供の姿であるが背中から羽が生えており、鋭利な牙と威圧的な青いオーラを纏っているその姿はまさに威厳のある『』であった。


 力をうまく測れない中位以下の魔族達は、?と言ったような疑問の顔を浮かべていたが、魔力を感じられる上位以上の魔族は、すでに脂汗を浮かべながらソフィを見ていた。


 そしてソフィの横には現在の冒険者ギルドの長である『レルバノン』と、その配下の『エルザ』『ビレッジ』そして『レヴトン』と『ゲバドン』が並ぶ。


「よくぞ集まってくれた。我がこの国の王となったソフィという」


 ただソフィがそう口にしただけで、登場した時にざわついていた声が止んだ。


 力の測れない中位魔族以下の者達も脳髄に直接響くような、ソフィの圧倒的なオーラに目が釘付けとなる。


「まずお主らに最初に言っておかなければならぬ事がある」


 ソフィの風格と声は長年アレルバレルを統治し続けてきた、本当の『王』としてのオーラが溢れていた。


「前王である『シーマ』魔国王は我がこの手で殺した」


 その言葉はソフィ以外の者が発していたならば、ラルグの魔族達はざわつき、怒りを引き出していただろうが、ソフィの言葉を妨げる者はおらず誰もがソフィの言葉を待つ。


「理由は一つだ。それはシーマという男が道理を外れた行いをした為だ。我がこの国の王となる以上、お主らに信念を持って生きてもらいたい。我々魔族という生き物は力がある生き物だ。弱き者を救えとは言わぬが、弱き者を馬鹿にして自分を下げるな!」


 ソフィは集まっている者達の表情を見ながら、その表情に会わせながら抑揚をつけて演説を行う。


「よいか? せっかく魔族として生まれたのだ。下らぬ事に時間を費やさず自分を高めよ」


 ソフィの発声する音。その一つ一つがラルグの魔族たちの耳に入っていく。そこでソフィは一度口を閉じる。


 時間にしては数十秒の間であったが、聴いている者達に十分な思考を整理する時間を与える。


「お主達は誇りある魔族だ。だが決して驕るなよ? 人間であれ魔族であれ、他の種族であろうとも努力をし続ける人間に怠惰で生きる者は必ず負ける。我がこの国の王として君臨している限り、お主たちを虐げるような事はせぬ。お主たちは何も心配する必要はない、安心して自らの力を高め見聞を広めよ。お主達が必死で毎日を生きている限り、。我がラルグ魔国の王となるソフィだ」


 数秒間の静寂の後、魔族達のソフィ『王』を称える声が木霊した。


 ――こうしてヴェルマー大陸のラルグ魔国に新体制が発足された。


 ・ラルグの魔国王『ソフィ』(レイズ魔国相談役)


 ・ラルグ魔国王補佐『レルバノン・フィクス』(レイズ・冒険者ギルド長)


 ・ラルグ魔国統括軍事司令官『エルザ・ビデス』(ナンバーズ)


 ・ラルグ魔国外交担当長『ビレッジ・クーティア』(ミールガルド大陸・最大手『ヴェルザード』商人ギルド所属)


 ・ラルグ魔国統括軍事副司令官『レヴトン・トールス』。


 ・ラルグ魔国軍管理部長『ゲバドン・ディルグ』。


 ――――


 ▼ソフィの治めるラルグ魔国と同盟関係のある大陸や国。

 『ターティス大陸全域』キーリ王。


 『ヴェルマー大陸 レイズ魔国』シス女王。

 『同・大陸 トウジン魔国』シチョウ。

 『ミールガルド大陸 ケビン王国』ケビン国王(ケビン・ダ・ブルモス・七世)。


 ――――


 ヴェルマー大陸ターティス大陸、ミールガルド大陸。


 この『世界』に現存する全ての大陸は『大魔王』ソフィによって、三大陸同盟が結ばれた。


 こうしてソフィは仲間たちに支えられながら『リラリオ】の世界で王としての道を歩み始めるのだった。


 そしてその裏で色々な出来事が動き始めているのだが、この時のソフィ達にはまだ、知るよしもなかった。

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