第228話 帰還したソフィ

「さて、それでは一度レイズ城へ戻るとしようか」


 ソフィがそう言うとシスとユファも頷きを返す。


「俺は、このままソフィ……様についていけばいいのか?」


 慣れない様付けの呼び方に戸惑いながら、キーリはそう言った。


「そうだな。お前にはレイズ魔国やラルグ魔国、その他の外交の場にも出てもらうつもりだ」


「そうか、分かっ……りました」


 そこでユファは堪えきれずに笑う。


「別に無理に敬語は使わぬともよい」


 ソフィの言葉に明らかにほっとするキーリであった。


「そういう事になった。ターティス大陸は頼んだぞ『レキオン』『ミルフェン』? 『ディラルグ』が目を覚ましたらお前らで留守を守れ」


「「御意!」」


 レキオンとミルフェンは即座にキーリに返事する。


「ではレイズ城へ戻る前に我は少しラルグ魔国へ向かう」


「それでしたら、私たちも一緒に行きますよ」


 シスがそう言うとユファも頷くのであった。


「そうだな。もう大体の事情は伝えておるし、今後の関係を踏まえるのならば顔を合わせておくのも悪くはないか」


 ソフィはそう言うと『念話テレパシー』でエルザに事情を説明する。


 エルザはまだラルグ魔国に居て、どうやらレヴトン達から歓待を受けているらしい。


 何やら『念話テレパシー』だけでは伝えづらい事があったようで、ソフィがラルグ魔国へ向かうと説明すると、エルザはほっとしたような様子だった。


「よく分からぬが、早くラルグ魔国へ行った方がよさそうだな」


 『念話テレパシー』を切った後、ソフィはそう結論付けて一行たちに伝えて再度ラルグへ転移するのだった。


 ……

 ……

 ……


 エルザは『念話テレパシー』を終えた後、ちらりとレヴトンたちを見る。


 レヴトンやゲバドンといったある程度力を測るの事出来る魔族は、先程までターティス大陸で戦っていたソフィやキーリ達の力を感じ取ったのか、エルザに何度もレイズと同盟を結びたいと何度も懇願してきたのであった。


 戦意に溢れ強き者に憧れを抱き、その者の為に尽くしたいと考える『ラルグ』魔族の習性だろうか。


 どうやら当初の目的通り、ラルグ魔国の冒険者ギルドへの加盟は問題はなさそうではあるが、同盟の件はエルザの一存では決める事が出来ない為に困惑していた。


 だが今のソフィからの『念話テレパシー』によって、どうやらこちらに戻ってくる事が分かりエルザはほっと胸を撫で下ろすのであった。


 ……

 ……

 ……


 ヴェルマー大陸のラルグ魔国にソフィたち一行は到着する。


 現在ここに居る者達は、相談役となった『ソフィ』、ターティス大陸の王『キーリ』、レイズ魔国の王『シス』、レイズ魔国のフィクス『ユファ』である。


 ソフィたちが転移してきた事で、ラルグ魔国の塔の門番たちが一斉に駆け寄ってきた。


「お帰りなさい! レヴトン軍事司令が中でお待ちです!」


 ソフィはここに来た時の門番の態度と、変わっている事を疑問に思って複雑そうに顔を歪めた。


「うむ、案内をよろしく頼む」


「お任せください!」


 快活な返事をしながら門番の一人が先導して、中を案内し始める。


「まるで自国の王を案内するような態度ですね」


 ユファが今のを見てぽつりとそう呟いた。


「ひとまず中へ行ってみよう。レヴトンとかいう者が待っている筈だ」


 ユファはソフィの言葉に頷きを返すのだった。


 キーリは舌打ち混じりに退屈そうな表情を浮かべていたが、ソフィがちらりとキーリを見ると慌てて引きつった笑みを浮かべて、ソフィを見返すのだった。


 …………


 ラルグの塔の中に入ると筋肉隆々の男の魔族が現れた。


「お帰りなさい、ソフィさん! ここからは私が案内をさせていただきます!」


 そういうと中に居た魔族は門番に目線を送る。


 その視線を受けた門番は、ソフィ達に頭を下げた後に外に出ていった。どうやらここからはこの屈強そうな魔族が案内をしてくれるらしい。


「我はお主たちに何かしただろうか? 前にここに来た時とは明らかに違うように感じるのだが」


 そう言うと案内役の魔族が慌てて口を開いた。


「使者を丁重にもてなすのは当然の事です。前回案内をした者が、粗相を働いたのでしたら申し訳ない!」


 そう言って男はソフィに頭を下げる。


「いや、うむ。もう分かったから頭をあげよ」


 ソフィはそう言って早く『レヴトン』の元へ向かうように促すのだった。


 …………


 ラルグの塔の最上階。レヴトンやエルザ達が居た部屋の前まで戻ってきた。


 部屋のドアをノックして魔族は、ソフィ達を連れてきた事を伝える。


 部屋の中からレヴトンが中へ入るように促す声が聞こえると、ここまで案内をしてくれた魔族がドアを開けた。


「さあ、中へどうぞ!」


 ソフィたちは勧められるがまま、部屋の中へ入っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る