レイズの国政編
第210話 スタートライン
レイズの首都『シティアス』にある建物はほとんどが元通りとなった。
シスやユファそして補助として、リーゼやレドリアたちも手伝った事も大きいだろう。
他の冒険者ギルドに所属している者達も遊んでいたわけではない。直ぐに街として機能出来るように、飲料水や食べ物の確保、そしてインフラの整備などもしていた。
街の外に出る時はソフィの配下達を護衛にして作業を進める。
街の中では一日の終わりの癒しの為に、酒場を優先的に開店を急いだ。
元々酒好きが多いレイズの街だった為、協力する数は他の仕事と比べても圧倒的に多かったようである。
そして何と最初にソフィが墓に近づいた時に魔法を撃った『ルキ』を含めた子供達も色々と手伝っていた。
子供といっても『ミールガルド』大陸の『ニビシア』にいた魔法使いよりも格段に戦力値は上であり、この世界の『賢者級』と呼ばれる天候魔法も使えるため、各所的に雨を降らせて飲料水にする仕事は子供たちが主に担っていた。
そんな中で冒険者ギルドでは窓口や掲示板等も作られていった。
――ミールガルド大陸から派遣された『ディネガー』は、40代半ばに差し掛かる強面の男だった。
グランの町のギルド長『ディラック』からの紹介で『ミールガルド』大陸に来たディネガーは、羽を生やした魔族達が自由に空を飛んで移動したりしている『レイズ』魔国の者達を見て、非常に感動を覚えたようである。
「こ、此処こそが私が求めていた冒険者ギルドです! わ、私の冒険が遂に始まる!」
ディネガーは優秀な男だが、趣味に没頭すると周りが見えなくなる男のようで、この光景を前にして『素晴らしい、素晴らしい』と口々に言いながら見て回っていた。
そしてレイズのギルド長となった『レルバノン』を見て、何やらディネガーは感動したようだった。
「こ、これは……! 話には聞いておりましたが、本当にレルバノン卿が冒険者ギルド長なのですね」
そう言ってディネガーは深々と頭を下げる。
「初めまして、ディネガーさん。ギルド長として就任はしましたが、あくまで私は繋ぎのギルド長でしてね。まだまだ勉強中の身なので、色々と教えて頂けると助かります」
ミールガルド大陸で言えば公爵家と呼べる程の大貴族であったレルバノンにそう言われて、ディネガーはあたふたとしながら何とか応対をしていた。
「お、お任せください! このヴェルマー大陸支部の冒険者ギルドを栄えさせて見せますとも!」
目をキラキラとさせながら『ディネガー』は期待を胸にそう言った。
「ええ、頼りにしていますよ、それと隣にいるこの子はエルザ。私の護衛と各種、マネージメントを任せていますので何かあればこの子を通して頂きます」
レルバノンがそういった後、エルザは深々とディネガーに頭を下げた。
手は怪我をしているのか包帯を巻いていたが、どうやら護衛というのは本当らしい。
「分かりました。エルザさん、宜しくお願いします」
ディネガーもまた、そんなエルザに頭を下げるのだった。
「あとは……そうですね。貴方も聞いたことはあると思いますが、シス女王がこのレイズの国の女王で、ユファ殿がこの国のフィクスで『ミールガルド』大陸で言えば『王族』と『貴族』のようなものですからディネガーさん、彼女たちの名前は必ず憶えて下さいね」
「も、もちろん存じておりますとも。特にユファ殿は『ケビン』王国の『
王国室内での出来事は『ミールガルド』大陸中で噂になっているらしい。
そして今や『ステイラ』公爵はユファに首ったけで事ある毎に、
「そして国だけではなく、ヴェルマー大陸全土の王となるお方が、ソフィく……、いや、ソフィ様です」
レルバノンはわざと言い直して、ソフィの大陸本土の現在の立ち位置をそう伝えた。
「……ソフィ様ですね。あれ程の強さに加えて『ケビン』王が直々に『ヴェルマー』大陸全土の王になって欲しいとまで仰られたとか。いやはや、あまりにも凄すぎますな」
「見た目は若いですからね。王とは何かの冗談かと思われるでしょうが、非常に智慮深い御方で、彼を本当の意味で王と呼んでも差し支えありませんからね」
ディネガーはレルバノン程の男がソフィをこれ程持ち上げるので、改めてソフィという存在を胸に刻むのだった。
「さて、ひとまずはこれくらいでしょうか。後はお互いにギルドを盛り上げて、これから頑張っていきましょう」
そう言って『レルバノン』はディネガーに手を差し出した。
「宜しくお願いします。レルバノンギルド長」
二人は固く握手を結び『ヴェルマー』大陸支部の冒険者ギルドは、こうして新たにスタートするのであった。
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