第190話 神に近い種族の復活
魔王レアによって海底深くに封印されていた『ターティス』大陸。
その大陸の半分がレアとの契約によって復活を果たしたが、龍族の始祖であるキーリはその大陸を封印した元凶であるレアの横に並び立っていた。
そしてその契約を交わした事で大陸の半分だけではなく、キーリの同胞である龍族達もまた現世に蘇る事となった。
龍族の始祖キーリは上機嫌で鼻歌を歌っている魔王を盗み見ながら思う。
かつての戦争時の時のレアであれば最初から侮りさえしなければ、同胞達全員と始祖龍である自分が最初から本気で戦えば決して倒せない相手ではなかった。
あの時に中途半端に力を持った『魔族』程度だと侮った所為で、彼女達龍族は『魔王レア』に敗北してしまった。
あの時の後悔から彼女は復活を果たす事があれば、この魔王を今度こそ全力で潰すつもりであった。しかし契約の際に見せたこの
悔しいが、もう自分を含めた龍族達が、如何に結集してもこいつには勝てないだろう。それだけの差をキーリは感じたのだった。
「さぁてぇ、物思いに耽っているところとっても悪いんだけどぉ、キーリちゃん準備はいい?」
キーリは自分の考えている事がバレたのかと内心ドキリとしたが、表面上は何でもないかのように取り繕い頷いて見せた。
しかしその様子を見た魔王レアは、ククッと嫌らしい笑みを浮かべてこちらを見ていた。
腹が立ったが下手に刺激して『復活をやっぱりやめる』と言われても困るので、そっぽを向いて、視界からレアを消してやった。
「ああ、いつでもいいぞ」
何とかそれだけを口にすると、にやにやと笑いながらこの魔王はキーリに頷いた。そして薄ら笑いをやめたレアは、真面目な表情で呪文を詠唱する。
「くっ……!」
戦力値でいえば軽く億を越える龍族の始祖キーリが、隣にいる魔王の呪文の余波を感じて嘔吐感を覚えさせられた。
(こ、こいつの力はどうなっているのだ? 先程まで戦っていた奴と、同一人物だとは思えない)
「最終確認よ、キーリちゃん? 契約中は私の駒として動いてもらうけど、決して逆らわないでねぇ?」
魔王キーリの目は、射貫くようにキーリを視界に捉えていた。
「ああ、問題ない」
レアはニコリと可愛らしく笑って詠唱を再開した。
キーリは前を向いて徐々に浮かび上がる同胞達の影を見る。
その影の数が次々と増えていく。影はキーリのときのように人型ではなく全員が龍の姿だった。
そして完全に現世に蘇った龍族達は、自分達の復活を喜ぶかの如く咆哮を揃えて上げ始めた。
――大陸中が、その咆哮でビリビリと震え始める。
「「――」」
大空を飛び回り咆哮をあげていた龍達は、腕を組んでその様子を見ている人型のキーリを視界に捉えると、一斉に人型に変貌を遂げていき、彼ら龍族の指導者と呼べる始祖龍キーリに向かって集まってくるのだった。
「――」
キーリに向かって一体の龍が何かを告げた。
「――、――?」
キーリが返答すると声を掛けて来た龍がその場に跪いた。そして後ろにいる龍達も一斉に跪く。
「うーん、流石は龍族ねぇ? 一体一体が我々『魔族』顔負けの戦力値だわぁ」
龍族達を見ていたレアだが、やがてキーリに向き直り口を開いた。
「さて、それじゃキーリちゃん。私はもう行くけど約束は守ってねぇ?」
「ああ分かっている。だが力を測るのは別にいいんだが、そいつは別に殺しても構わないのか?」
キーリがそう言うとレアは嬉しそうな笑顔で頷いた。
「ええ、別にいいわよぉ? 貴方達が
そういうと他の龍達を一瞥した後、レアはその場から消え去った。
「行ったか」
「――」(奴を逃がしてよかったのですか?)
「ああ。不本意な事だが、今は奴と契約を結んでいてな、もうあの『魔族の王』は
キーリがそう言うと他の龍達は驚いた顔を見せた。
「それよりもだ。久々に蘇ったところを悪いんだが、お前達も手伝ってもらうぞ?」
「――――!」(なんなりと、お申しつけ下さい、始祖様!)
他の龍達も同意するように頭を垂れた。
――こうしてターティス大陸の龍族達はレアの契約によって、ヴェルマー大陸のソフィを標的に行動を開始するのだった。
……
……
……
そしてターティス大陸から転移したレアは『魔力』を一気に高め始める。
「さぁてこっちも続きを見ていたいところなんだけどぉ、あちらの世界の様子を見ておかないといけないからねぇ」
違う
【種族:魔族 名前:レア(大魔王、通常形態)
魔力値:6100万 戦力値:4億2200万 所属:大魔王フルーフの直属の配下】。
膨大な魔力を消費して『魔王』レアは、違う世界へ転移していくのだった。
……
……
……
遠く離れたヴェルマー大陸でソフィは大魔王の魔力を感じ取り、レアの居た方角を眺めながら笑みを浮かべた。
「クックック、まるでアレルバレルに居た時の『魔力』の感覚だ」
ソフィがアレルバレルの世界の『魔界』を制圧するより昔、過去の群雄割拠の時代を彷彿させる魔力を感じ取り、懐かしさからそう呟くのだった。
――こうして『ヴェルマー』大陸と『ミールガルド』大陸の戦争から、数日が経ったある日の昼下がりに、ソフィは近い内に何かが起こるだろうと予兆を感じ取り、自身に意欲がわいてくるのを感じるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます