第126話 破壊神ソフィ

 ソフィの魔法で『ケビン』王国に辿り着いたが、そこで目にした光景は予想だにしていない状況であった。


 多くの人間の兵士達が血を流して地面に倒れ伏しており、数多くの魔族が王国を襲っている光景であった。


「な、何だこれは?」


 ソフィの横にいるスイレンが、驚愕の顔を浮かべながら言葉を発した。


「レルバノン卿が囮となって、魔族はおびき寄せられていたのでは?」


 ラルフは冷静に現状を理解しようと試みながら辺りを見回して口を開く。


「ひとまず話は後にするとしよう。直ぐに彼らを助けるとしようではないか」


 ――超越魔法、『終焉の炎エンドオブフレイム』。


 ソフィの放つ魔法の業火で密集していた魔族達を焼き払う。


 一気に数十体の魔族達が消し飛んだ事で王国軍を襲っていた魔族達が、ソフィの存在に気づいて一気に集まってくる。


 ――その数は数百体を越えているだろうか。


「ふむ? これが『ラルグ』とかいう国の魔族達か」


 ソフィは笑みを浮かべながら『漏出サーチ』で戦力値を測っていく。


 一体一体が戦力値100万を越えており、大きい個体の魔族は220万を越える者も存在した。


 スイレンは集まってきた『魔族』に苦虫を噛み潰したような顔を浮かべている。


「クックック、心配する必要はないぞスイレンよ」


 そう言うとソフィは右手を天にかざし始めた。


「さあ……ラルグの魔族共よ、その力を示して見せよ」


 ――超越魔法、『凜潔暴風雨ディグナ・ストーム』。


 ソフィが魔法を放つと天候が変わり、嵐が吹き荒れ辺りを飲み込んでいく。


「グアアアアッ!!」


 恐ろしい程の魔力が練りこまれたソフィの『魔法』は、あれだけの力を誇っていた魔族をあっさりと消し飛ばしていく。


 まさに戦力の違いを見せつけるかの如くである。


「どうした? 抵抗しなければこれで終わるぞ?」


 ――超越魔法、『終焉の雷エンドライトニング』。


 『凜潔暴風雨ディグナ・ストーム』によって、空はまだ雨雲が多く残っている。


 その状態でこの魔法を放てばどうなるか……。


 更なるバフ付加がかかったソフィの『魔法』に、気づいて近寄ってきていた者達だけではなく、数千の『ラルグ』第三軍の魔族があっさりと消し飛んだ。


 先程まで王国軍をあれだけ苦しめていた人間たちにとっての『災厄級』の魔族は、たった数回のソフィが放った『魔法』で全て消し飛ばされたのであった。


 残った『ラルグ』魔国の魔族が後ずさりながら、ソフィから離れようと動き始めた。


「全く、貴様はいつも規格外な事をしてくれるな」


 そして逃げようとしていた魔族の残党を背後から一斉に斬り伏せる。


 ここに来てすでに数百体の魔族を斬り伏せた『リディア』だった。


「む、お主は……」


 ソフィはリディアを見て驚いた顔を見せた。


 つい数か月ほど前に戦ったリディアとはまるで違う戦力値。全くの別人のように感じられたソフィであった。


 人間が短期間でここまで変われるのかと、ソフィを以てしてそう思わせる程の成長ぶりであった。


「ふんっ……! 貴様にそんな顔をさせられる程度には、まあ俺も強くなったという事だな」


 心臓を貫いていた魔族の体から刀を引き抜きながら、リディアは満更でも無さそうに笑みを浮かべた。


 ……

 ……

 ……


「い、いったい、あの少年は何なのだ……?」


 ケビン王は突然この場に現れた十歳くらいの少年を見て、驚愕の顔を浮かべて口を開いた。


 同じ王室にいる一人の貴族が言葉を発する。


「ケビン王、あれが冒険者ギルド最強と噂の『破壊神』殿です」


 周りの貴族やケビン王が、一斉にマーブル侯爵の顔を見た。


「あ、あれがレルバノン卿が言っていた、噂の少年か!」


「違う……! まるで次元の違う存在だ」


「あんな、あんな子供が……! い、一瞬であの化け物たちを!?」


「ば、馬鹿げている」


 王国の大貴族たちが口を揃えて、の名を胸に刻むのだった。

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