第123話 シュライダー襲来

 ミールガルド大陸の西側の空、ついにシュライダー率いる『ラルグ』魔国軍が到着した。総勢7500体。


 その一体一体が、人間や魔物達を遥かに越える力を持つ『魔族』である。


「漸く辿り着きましたね。さてあの魔女はどこにいるのでしょうか」


 ラルグの狙いは『レルバノン』や『ミールガルド』大陸本土の支配も含まれていたが、シュライダーの狙いはやはり『レイズ』魔国の女王『シス』であった。


 あと一歩で『レイズ』の女王を仕留められるというところで『フィクス』であった『ヴェルトマー』に転移魔法で逃されてしまい、完璧主義者であった彼のプライドをズタズタにされてしまった事を今でも『シュライダー』は忘れてはいなかった。


「さて……」


「『漏出サーチ』」。


 ……

 ……

 ……


 シュライダー達が『ミールガルド』大陸に到着した頃、ケビン王国の魔法部隊がいち早く探知して『ケビン』王国の全軍に伝えられた。


 すでに戦争の準備を終えている『ケビン』王国は『ラルグ』魔国軍の到着を待っていた。


 ケビン王が見守る中、数十万という恐ろしい数の兵士全軍の指揮を執っている『デイラー』元帥は、作戦を遂行するために右手を挙げた。


 次の瞬間『シュライダー』が居る西側の空に、王国軍の『魔法』が一斉に放たれた。並の魔物クラスであれば一網打尽に出来る程の威力の魔法が、次々と上空にいる魔族たちに着弾する。


 ――先手必勝。


 『ケビン』王国軍総勢数十万の内、凡そ三割程の膨大な数の魔法使いたち。


 所謂『魔法部隊』が、第二陣、第三陣と次々『魔法』を放ち続ける――。


 休みなく放たれる連続魔法の数に『ケビン王』並びに『ステイラ公爵』は勝ちを確信する。


「ふはははは! これが王国軍の砲火の威力だ!」


 王国軍の放つ魔法の爆音の大きさに自信付けられた『ステイラ』公爵は高らかに声をあげた。


 ミールガルド大陸中に響き渡る程の魔法の爆音と衝撃は、夜中にも拘わらず多くの人間が体験し目にする。


 恐ろしい程の歓声が大陸各地中から挙がる程であった。


 戦争が始まるという事を先日の会議以降、王国から通達があった為に『ミールガルド』大陸全土に知れ渡っていた。


 一部を除いてほとんどの人間が『ミールガルド』の国家の勝利を疑わず、まるで他人事のように感じていた。


 そして戦争開幕からのこの魔法攻撃である。


 歓声があがるのも分かるというものである。


 ――どれ程の時間が経っただろうか。


 デイラー元帥が挙げていた手を降ろすと攻撃は止んだ。


 これ程の連続魔法であれば、敵は跡形もなく消し飛んでいてもおかしくはなかった。


 しかし煙が少しずつ晴れていくと、その場には無傷のシュライダーと魔族達の姿が現れるのだった。


 ……

 ……

 ……


「クックック、何ですかそれは?」


 突如人間の軍隊から『魔法』の集中砲火を浴びせられた事で、多少は驚かされたシュライダーだったが『レイズ』魔国の魔法部隊が放つ、その百分の一にも満たない威力の『魔法』に、シュライダーは余裕を見せて人間達に好き勝手させることにしたのであった。


「予想以上にこの大陸の戦力は低いようですねぇ。さて、大きな戦力値を持つ者を探しに行きましょうか……。おや? ほとんどが一か所に集まっているではありませんか」


 シュライダーは『レルバノン』の屋敷の方角を見ながらそう口にするのであった。


 ……

 ……

 ……


「な、なんだと!?」


 ステイラ公爵は煙が晴れて見渡しがよくなった上空を見た事で、消し飛んでいる筈だった敵国である『ラルグ』魔国の兵達の全員が無傷であった事で驚愕の声をあげた。


 驚いているのは『ステイラ』公爵だけではなく『ケビン』王や側近を含めた王国軍や貴族、見ていた民達に至るまで、皆が一様に同じように唖然とした表情を浮かべているのであった。


 ……

 ……

 ……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る