第77話 ソフィVSエルザ3

 そしてこのまま続けてもジリ貧だと悟ったエルザは、自身の持つ大技で一気に逆転を狙う。


 大刀を頭上でぐるぐると回し始めるエルザだったが、ソフィは特に妨害せずにエルザの出方を窺う。


「お主の決死の大技を、我に見せてみるがよい」


「ウオオオオッ!」


 咆哮と共に大きく大刀を振りかぶって宙を飛ぶ。全体重を乗せたがソフィ目掛けて振り下ろされる。


 ――それは確かに凄い威圧感であった。


 戦力値700万を越える上位魔族が、渾身の一撃を加えようとしているのだ。


 ソフィでもなければ足が竦んで動けずに、そのまま頭から大刀で切り裂かれていた事だろう。


 だが、ソフィは笑みを浮かべたままでエルザの大刀をソフィは、オーラで包まれた手刀で受け止める。


 真っ向からぶつかり合ったインパクトの瞬間、空気が切り裂かれたような感触が身体に伝わった。


 ――エルザの大技は確かにソフィに届いた。


 破壊力は申し分なく、エルザに勝利を確信させる程の満足のいく一撃だった。


 ソフィの顔がよく見えないが、苦悩に歪んだ表情を浮かべているだろうとエルザに確信させた。


 だが、しかし――。


「……


 次の瞬間、ゾクリと感じたことのない衝撃がエルザの身体を駆け巡る。


 その衝撃の正体は、であった。


 エルザはその衝撃の正体に気づかぬままにソフィと対峙する。


「では、次は我の番だな?」


 その瞬間にエルザの体が跳ねた気がした。


 ――超越魔法、『終焉の炎エンドオブフレイム』。


「舐めるなぁッ!!」


 業火が巻き起こり建物を燃やし尽くす程の炎だが、エルザの大刀の横一線に振り切ると、爆風と共に衝撃波でソフィの炎がかき消される。


 流石は上位魔族といったところだろうか――。


 ソフィの『魔法』を打ち消した事で、自らの自信を取り戻したかのように見えたが、ソフィを見てエルザの表情は凍り付いた。


 先程のソフィの魔法は『終焉の炎エンドオブフレイム』で終わりではなく、まさに開始の合図だったのだ。


 ――超越魔法、『炎帝の爆炎エクスプロージョン』。


 ――超越魔法、『邪悪な雷撃フードル・エビル』。


 信じられない事に無詠唱で大型と呼べる『魔法』が、同時にソフィの口から紡がれた。


 炎帝から数百の火球が一気にエルザに放たれる。


「ぐぐっ……!」


 大刀を盾に炎帝の炎から身を守るエルザだが、屋敷の結界を突き破ってエルザ目掛けて雷光が迸る。


「!!」


 ――声にならない叫び声をあげた、エルザのその身にソフィの雷が直撃する。


 そして今も尚の事、無防備となったエルザを目掛けて、炎帝の攻撃が無慈悲に注がれ続けている。


 火球の衝撃によってそのまま身体を投げ飛ばされていく。


 しかし更にそのエルザの周囲には、鮮やかなが追従するかの如く出現する。


「さぁ、いくぞ」 


 ソフィは弱った獲物を確実に仕留るために動く。


 キィイインという音と共に、衝撃が遅れて屋敷中に響き渡る。


 ――超越魔法、『万物の爆発ビッグバン』。


 ピンボールのようにソフィの魔法によって、エルザの身体が弾かれ続ける。


 そこに極大魔法がエルザを直撃する。


 疲弊しきった体に、連続で超越魔法をその身に受けて、二度、三度と蹈鞴を踏んでやがて動かなくなる。


 だが、幸か不幸かここで意識を失った事でソフィの次の大魔法を受けずに命は救われた。


 これだけの大魔法を連発していても、今の形態変化後のソフィの魔力では、十分の一も減ってはいない。


 むしろ、ここでエルザは気を失った事で九死に一生を得たのである。


 何故ならば連続で放たれた超越魔法で耐えていたエルザに向けて、次の用意していた『魔法』は超越魔法よりさらに上の位階、だったのであった。


「ふむ、大したものだ。これ程の『魔族』を従えるレルバノンとやらが、我の予想を越える程の大物だといいのだが……」


 そうしてソフィはこの後に控えているであろう一戦に期待を込めて、顔を綻ばせながら気を失っているエルザをその場に寝かせて部屋を出ていくのであった。

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