1-17 ニア再戦
「そろそろ始めるわよ」
フォン先生が片手を左右に振りながらこちらに向かって叫んでいる。
俺は気持ちを切り替え、ニアを軽く見るとニアも俺を見ていた。
「手加減したら許さないからね」
彼女は、真面目な顔で警告してくる。
「手加減するつもりはない。しかし、殺す気でかかってこい」
俺とニアは試合開始位置まで歩いていく。開始位置に到着した。
「二人とも最終決戦よ。気合を入れてかかりなさい、カイ・グリアムズvsニア・リヴァイアス試合開始!!」
これまでの試合とは雰囲気の違う真面目な顔をし、素手で空気を切り落とす。
「
無数の炎の槍が放たれる。俺は、魔眼に魔力を込め、炎の槍を睨みつける。
「その魔法は、俺に通用しなかっただろ。ふざけているのか?」
しかし、ニアは至って真面目な顔をしなにかに集中している。
「
大きな一つの炎の槍が放たれる。今度は右手に魔力を込める。そして、炎の槍を右手で受け止め握り潰すと辺りに炎が飛び散った。
彼女は、
いったい、いつあの魔法を使ってくるんだ?さっきの煙に乗じて使ってくると踏んでいたのだがな。
「
彼女に掌を向け、魔法を放つ。ニアは、飛んでくる魔法に向かって突撃して来た。そして魔法が爆発する前にスレスレで躱したようだ。
「
このタイミングでその魔法を使うのか。瞬時に魔眼を働かせ魔力を見ると、俺に向かって魔力の粉がくっついてきた。魔力の粉を振払おうとするが一度くっつく微動だにしない。火が上がり始める。たちまち俺の体は火だるまと化した。
「思ったより、熱くないんだな?もしや殺さない程度にと手加減をしてくれているのか?」
ニアは驚愕を隠せないようで、両目を見開き硬直してしまっていた。俺は体から魔力を放ち火を消し飛ばすと、魔眼に魔力を込め今度はニア本人を睨みつける。すると彼女は汗を滝のように流し、崩れる様にその場に倒れた。しかし、勝敗のコールがならなかった。
おかしいな。フォンが何も言わない。相手が倒れた時点で勝敗を決めていたというのにどういうことだ。
「ニアは気絶したぞ。それでもまだ戦えというのか?」
フォン先生は一時停止を解除すると
「カ…カイ・グリアムズの…勝利?」
疑問系で勝敗のコールをした。
フォンだけが呆然としていたわけではなかった。その場にいたカイと気絶しているニア以外は全員目を丸くしただただ俺を眺めているだけだった。
やっとフォンと戦うことができるな。自分の実力が大人の魔族相手にどこまで通用するのか気になる。正直それ以外興味などない。
「次は、フォン。貴様との勝負だな」
俺は笑顔を浮かべる。しかし、フォンは笑顔を浮かべるどころか顔を真っ青にしていく。
「カイ・グリアムズ。あなたは今本気で戦ったんですか?」
「なにを言っている。本気だったぞ」
フォンは安堵の息を吐いた。
「そうよね。そんなに強いわけないわよね。まだ手加減している感を出すから先生焦っちゃったじゃない」
「フォンの言うとおりだ、本気だったが、手加減をしていた。お前との約束だったしな。しかし、生徒に手加減するとはいったが教師にまで手加減するとは言ってはいないぞ」
再びフォンは顔を真っ青にしていく。
「顔色が悪いようだがどうした?」
「なんでもないわ」
「体調が優れないのなら少し休憩を挟むとするか」
俺が休憩を提案すると彼女は黙って顔を縦に動かし賛同すると第一演習場を後にしてしまった。彼女の後ろ姿を見送ると観客席へ移動した。
「お前……なんとも無いのか……?」
珍しくウドが最初に声をかけてきた。
「なんとも無いな。何かゴミでも付いているのか?もしそうなのだったら取ってくれるとありがたいのだが」
「ゴミはついていないよ……。ただあの魔法をまともにくらって火傷一つしていないのか気になって……」
ウドは俺の体を上から下まで何度も往復しながら入念深く見てくる。
「あの魔法をくらう前に体の表面に薄く魔力の層を作っておいた。だから全身無傷なんだ」
俺が説明を終えるとピカトルが興味深そうに聞いてきた。
「どうしたら、魔法の層を体の表面に作ることが出来るんだい?」
ピカトルは体の表面に魔法の層を作ろうと魔力を体から出し続けている。
「そんな事を続けていたら、魔力が尽き果て倒れるぞ」
「それじゃ、魔力量が多い人でないと魔力の層を作ることは出来ないという事なのかい?」
俺は顔を横に振る。
「違う。魔力を出し続ける事だけに意識しすぎていると魔力が一気に尽きてしまうんだ。考え方を変えるんだな」
ピカトルは再び魔力を出し続ける。魔力が分散しない様に魔力を体の表面に固定し続けている。
「その方法もあながち間違いでは無いだろう。しかし」
俺はデコピンでピカトルを叩くと彼は一メートル先まで飛ばされてしまった。
「このようにその方法では威力を殺しきる事が出来ないんだ。魔力を体の表面に循環させる。そうすれば、少ない魔力で相手の攻撃や衝撃から身を守る事ができる」
説明を終えるとまわりの生徒たちは実践しようとするが中々上手くいかないようだった。
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