1-15 強化魔法使い!?

「カイも……は絶対勝つわね」

「いや、わからないぞ。俺の相手は治癒魔法を得意としているようだからな」

 治癒魔法を使える者はだいたい魔力を見る目、魔眼なども優れている。治療箇所を丁寧に治すという集中力、器用。そこから見るに、魔力制御が得意なのだろう。魔力制御が高ければ高いほど初級の魔法も中級、上級レベルの威力と化ける。それにピカトルは率先して治療を行った。相当な自信があるに違いない。

「二人とも俺の試合を忘れていないか?」

 ラフクスが顔に微笑を浮かべていた。

「すまない。忘れていた。なぜだか知らんがラフクスは影が薄いようだな」

「てめぇ、今に覚えていやがれ。後でボッコボコにしてやるよ」

 そう言うと彼は戦闘位置に着いた。

「ニ試合目、ラフクス・サリヴァンvsウド・グラリス。はじめ!!」

 フォン先生が試合開始の合図をする。

水鉄砲ウォガン

 ラフクスが先に魔法を唱えると魔法陣が現れる。水の球体が指から凄い勢いで発射される。

土壁ソイガ……」

 ウドの前に魔法陣が現れる。地面が盛り上がり水の球体の軌道を変える。

「少しはやるみたいじゃねぇか!!」

 ラフクスは間髪入れずに撃ち続ける。土の壁は見る見るうちに削れていき、ウドへ命中した。

「終わったな」

土檻ソイロウ……」

ラフクスが油断した瞬間土の檻に閉じ込められる。格子には先の尖った突起物が付いている。檻の中は徐々に狭まっていく。ラフクスがそれを魔法で砕いても砕いてもすぐ再生する。

「くそっ!?どうすればいいんだこんなの」

ラフクスが叫ぶと、ウドが初めて喋る。

「そんなの簡単だよ。降参すればいいんだよ?ヒヒヒ。降参が嫌なら刺されて死ね……」

 すると、檻の狭まるスピードが速くなっていく。ラフクスは魔力を切らし立っているのが精一杯のようだ。そんなラフクスに先の尖った鋭い土が刺さっていく。

「うぁぁぁ!!」

「早く降参しないと本当に死ぬよ……」

 瞬間、檻が粉々になり壊れた。

「殺すほどの魔法は駄目って言ったでしょ?」

 フォン先生がラフクスを助けたようだ。

「ウド・グラリスの勝利!!」

「ちっ、早く降参すればよかったんだ……」

 などと、独り言を言いながら観客席へと戻る。ラフクスは先生から治療してもらっているようだ。

 ピカトルが俺に話しかけてきた。

「次は、僕と君だね」

 自分と俺を交互に指さした。

「そのようだな。お前がどのような魔法を使うのか楽しみだ」

 俺は立ち上がりながら言い放つ。

「奇遇だね。僕も君の魔法が見てみたかったんだ」

 爽やかな笑顔で返事をしてくる。俺とピカトルは戦闘位置へ移動した。

「三試合目、カイ・グリアムズvsピカトル・パック。はじめ」

 俺とピカトルは全く動かない。しばらく硬直状態が続く。

「二人とも始まったよ?」

 とうとう耐えきれなくなったフォン先生が口を開く。

「そうみたいですね」

「そのようだな。なぜかかってこない?」

 なかなか、攻撃してこないピカトルに聞く。

「攻撃したいのはやまやまなんだけどね……」

 俺からも直視できるほど彼は冷や汗をかいていた。

「君の魔力が全く見えないんだ」

 なるほど、ピカトルは先程から俺の魔力量を魔眼で覗いていたという事か。

「すまなかったな。魔力を抑え込んでいたのだ」

「魔力を抑え込む!?そんなことができるのかい?君は」

 両目を見開き、驚いている。

「お前は出来ないのか?教官は簡単だと言っていたのだがな」

 ピカトルは、気合の入った眼に変わる。

「やっとやる気になったか」

「そうだね。僕の奥の手を使うよ!!」

 ピカトルは走り出すと、俺の後ろへ移動した。


「おい!?なんだ今の!!全く見えなかったぞ」

 ラフクスや他の生徒も驚いているようだ。


「君、僕の動きが見えているのかい?」

 ピカトルは驚きを顕にする。

「さぁ?どうかな」

 ピカトルは間髪入れずに拳を入れてくる。俺は、それを避け続けた。


「なんだよ。あれ残像しか見えないぞ……」

 ラフクスが固唾を飲む。

「カイの足元を見て!!全く移動してないわ」

 ニアも叫び出す。


「君、化け物なのかな?」

「いや、お前が弱いだけだ。教官が相手ではこんな真似できないからな」

「今の僕には敵わないや。降参だよ」

「カイ・グリアムズの勝利!!」

 俺とピカトルが観客席へ着くと、その場にいた生徒は皆。驚愕していた。

「どうした?皆」

「どうしたって……あなた達の段違いなレベルを真に受けてるのよ」

 ニアがもう慣れたと言いたげに呟く。

「おい、ラフクス」

 ラフクスを呼ぶと彼はビクッとした。

「な…なんだよ」

 語尾が小さくなっていく。

「次の試合が楽しみだな。相当お前は俺と戦いたいって言っていたからな」

 俺が笑いかけるとラフクスは苦笑いしかできないようだった。

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