魔王育成専門学園

1-1 魔王城に奇抜な魔族現る

 俺は、ガイル・グリアムズの一人息子カイ・グリアムズだ。一週間前、いつも通りガイルの特訓を受けていたら魔王城から手紙が届いた。学園入学のために魔力と体力の検査をするから城へ来いという内容だった。

 十歳になると学園に入学しなければいけないようだ。面倒くさいがそう決まっているのなら従わなければいけないのだろう。

 などと考え、俺はなくなく魔王城へと向かった。


 俺は今、魔王城の城下町を歩いていた。城下町は出店であちこちに人がおり、地面が見えないほどだった。

 ここは人が多くて真っ直ぐ歩くことすら難しいな。

 俺は、魔王城へ続く坂をなんとか登り終えると眼前に広がる魔王城に目を奪われた。

 ここが魔王城なのか。白い外装に装飾が凝っていて綺麗だな。清潔感溢れる建物だ。それに、庭に生えている木々が風で擦れ合い、良い音を奏でている。

 俺は、庭の奥にある魔王城へ向かった。

 ん?なんだあれは人が多いな。あそこが入り口なのかもしれないな。同世代があんなにいるのか。

 俺は人の数に圧倒されながらも道を歩いた。

 看板があるようだな。試験時間や番号は届いてきた紙に書いてあったが一応目を通しておくか。

 俺は人が集まっている看板の前に行き、看板に貼ってある紙に目を通した。

 周囲の視線を感じるな。俺の格好がそんなに奇抜か?

「おい、お前、あんなやつ見たことあるか?」

「俺も初めて見るぞ」

「なんだあの髪の色見たことないぞ。本当に魔族なのか」

 俺の容姿が気になっているようだな。魔族には白髪に黄色い目などそうそういないのだろうな。確かに今まで会ってきた魔族は俺のような髪色をしたやつは見かけなかったな。

「おい、貴様!!邪魔だ。そこをどけ!」

 考え事をしていた俺の後ろで誰かが叫んだ。

 なんか後ろで騒いでいるやつがいるな。迷惑なやつだな。俺の名前は……あった。

 看板の右下の最後の方に俺の名前が書いてあった。

あんなに端っこにあったら見つけるのに苦労するだろう。五十音順に並べればいいだろうに。

「おい、聞こえないのか!!」

 再び誰かが後ろで叫ぶのが聞こえた。

 また騒いでいるのか。人が多ければいろんなやつもいるものだな。

 声のする方へ振り返った。そこには、青い髪をした男が目の前でこれでもかというほどの鬼の形相をしていた。

「おい、白髪!聞こえないのか、貴様に言っているんだ!」

 青い髪の男は刺し殺しそうな勢いで人差し指を俺に向けていた。

「なんだ、俺に言っていたのか。全く気づかなかった。すまない、今移動する」

 俺たちを見ていた奴らが声を抑えながら笑った。すると、俺の胸ぐらを青い髪の男が首を締める勢いで掴んできた。

「貴様、俺を誰だと思っているんだ!?」

「ん?お前は有名人だったのか?俺は、今日初めてこの国に来たんでな。わからないことの方が多いんだ」

 青い髪の男は気に食わないような顔をした。

「田舎者め!!知らないようなら教えてやるよ!俺はな、魔王軍魔法師団第1班隊長クリウス・サリヴァンの息子、ラフクス・サリヴァンだ!」

 ラフクスの自己紹介が終わると自己紹介を聞いていた周りの奴らがざわつき始めた。

「あいつが、ラフクス・サリヴァンなのか」

「あいつがクリウス団長の息子なのか。将来有望だな」

「へぇ、あいつが噂のラフクスか。それじゃあ、あの白い髪のやつ死んだかもな」

 ラフクスと言ったか。周りの奴らは知っているようだな。知らないのは俺だけか。確かに有名らしいな。

「今すぐ謝れば許してや……」

 ラフクスの話の途中で俺は口角を上げ笑いだしてしまった。

「悪い悪い、気を悪くさせたのなら謝る……が、貴様が親の地位をあたかも自分の事のように言うものだから笑ってしまった」

「なんだと…生意気言いやがって、もう絶対許さねぇ」

 ラフクスが手のひらに魔力を溜め始めた。

「くらえ、ファムス!」

 ラフクスの手のひらに魔法陣が表れ、手のひらから炎が放たれる。手から放たれた炎は俺に向かい飛んで来た。

「そんなもの、こんな場所で使ったら危ないだろ」

 俺は、素手で空気を掴むように炎を握り消した。 

「こんな微弱な炎でも無防備な状態でぶつかればやけどぐらいはするだろうからな」

「貴様!手加減したからって調子に乗りやがって!!」

 ラフクスがさらに魔法を唱えようとした時、

「そこの二人やめたまえ!!そこの者は今すぐ魔法の詠唱をやめろ」 

 誰かが報告したのだろう。役員が城から走って出て来ると止めに入ってきた。

「すまなかった。つい遊びの度が過ぎてしまったようだ」

「そうか、以後気をつけるようにな。そこの者もだ」

 そう言うと役員は元の持ち場へ帰っていった。

 ラフクスに目をやると彼は俺を睨みつけていた。

「後で、覚えてやがれぇ」

 と憎悪剥き出しで言うと、足音を立てながら、行ってしまった。 

 やれやれ、変に目立ってしまったな。仕方ない俺も行くとするか。

 城門をくぐりすぐ目に入ったのは、古代遺跡を連想させるような大きな噴水だった。城の入り口まで敷かれている長いレッドカーペットは手入れが行き届いているのかおろしたてのような鮮やかな赤色をしている。レッドカーペット上には、数えるのが嫌になるほどの魔族が並んでいた。

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