青が短い季節に 太陽編


「狡い人」

あなたっていい人ね、なんて呟いたのは君のほうなのに、置いていくなんて。いつだって狡くて、いつだって風のようだった姿を僕は忘れたりしないけど、時々憎しみに変わってしまいそうで怖いよ。冬が来て春が来て、夏が来るたびに君のことを思い出しそうだけど、この場所を離れることはできないから、できないから、今は届くことのない青を、ちゃんと0時に見つめるね。君の幸せを無条件に願ってしまうこんな僕を、許してね。



「ビー玉」

暑い夏の日だった。あなたはボーダーのポロシャツで風を送りながら、いつものように秘密基地へと私を誘う。少し汗ばんだ手のひらを強く重ねあっては、揃う足並みに胸の奥がピリッとする。こんな瞬間が私は大好きで、思わず揺れる髪の毛に手を伸ばすんだ。そうすれば笑みを向けるから、また弾む心に深呼吸をするだけ。

暑い夏の日の、ビー玉のようなあなたへ贈る大切な物語。



「桃色とブルー」

日差しに光り輝く黄金色が、私を惹きつけて離さない。桃色の唇は微かに動いていて、それは誰に向かっている言葉なのか、ブルーの瞳に映ったその人への言葉なのか、どんなに気掛かりでもそれは私には知り得ないことで。

いつだっていい、時間がかかってもいいから、そのブルーに私を映してほしい。その桃色の唇で、柔らかい声色で、私の名前を呼んでほしい。どんなに時間が経ったっていいから。



「最高に、かっこいいひと」

太陽の陽が当たる窓辺に座って川を眺める君は、いつだっていい人でいたいと呟く。逃げや弱さについて考えるとき、自分には厳しく周りの人にはやさしく接していた。そんな君が、僕はどうしようもなく好きだった。

その厳しさ故、息苦しい瞬間も数え切れないほどあっただろうに、今までちゃんと歩いてきたこと、本当に最高に思う。棘の多いこの世界で、僕のに君は、丸くうつっているよ。



「陽が沈めば」

痛むと言っていた胸は、少しは楽になりましたか。当たり前のように、何ともないように過ぎていく一日一日に心もすり減っているのではないかと気掛かりです。愛の定義は難しく、また幸せだと断言するのも簡単ではありませんが、それでも私はあなたの一日が、心が、楽なものであるよう想っています。

泣かない方法はいまだに見つけられていませんが、きっとこの陽が沈めば、きっとその頃には、平気だと言えるようになるはずです。



「またね、また明日」

あなたの弾くギター、の音色、を聞いたら、愛を浮かべるから気づいてね。風に揺れる影や似たような言葉たちはそのままに、心踊る時間を送ろうね。花も、その妖精もみんなが幸せな時間。私たちは隣同士にいて、茶色いカバーの日記帳に書かれた風船を飛ばして、今夜がやさしいものであるように、透明のお星様にお祈りするんだ。あなたの口づけも今は全部が特別な時間。これを読んでいるあなたの心から、棘が抜けていくようお祈りする時間。



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