5.こちら探索少女二名、探索準備中です。



 二人で一緒になってシャワーを浴びた。

 天国だった。

 というわけで、パジャマな二人である。


「――じゃあ、明日の準備を始めるよ!」


 と、ふわふわパジャマのマリーが言った。


「わかった」


 と、パジャマ姿でも脚を出してるフーコ。


 まだ活きているコンセントを見つけ出し、マリーの私物のダンジョン産ドライヤーで自分の髪を乾かし、それからフーコの髪も乾かしてあげた後のことである。

 そして、明日からは探索開始なのである。 

 もちろん前日の準備は必要だった。


「道具の確認だよ! フーちゃん!」


 と、自前で設置したテントの中で叫ぶ。


「でももう夜だから静かにね!」

「おーけい」


 残念だが、完全に外まで聞こえている。

 丸聞こえだ。


「まずは、明日履いていく、ぱん――」

「聞こえてるっすよ。静かに」


 アリソンが注意した。

 見事なガードだった。

 マリーは声を潜めた。


 それほど大きいとは言えないテントの中、ふわふわパジャマのスカートから次々に取り出される道具の確認は、水と携帯食から始まって、ライトやナイフやロープや工具箱を経由し、ハンカチとちり紙なんかもきっちり網羅していって――そして最後に、ずらり、と並べられたのは、物騒極まりない武器の群れ。幾つもの銃火器と、その弾薬。それに交じって手榴弾も幾つか。その他にもいろいろ。


「もちろん、これも持ってくよ」


 そう言いながら、マリーが手に取ったのは、一つの拳銃。この世界で生産されているものではなく、ダンジョン産のものを修復したもの。弾薬も色々と「お願い」して作ってもらった特注品だ。

 マリーは、まず弾が抜かれていることと確認し、安全装置を確かめ、それからその拳銃を明後日の方向へと構え、ばきゅーん、と口で言った。


「50口径のおーとまちっく! 古き良き最強拳銃だよ!」


「おー」


 ぱちぱちぱち、と。

 フーコが拍手する。


「まー、ただのお守り代わりだけどね――ママが仕事に行くとき、45口径じゃ悪足掻きにもならないって言って、いつも私物でこっそり持っていってたの」


 ぱちん、と。

 フーコの拍手が止まる。


「実際は至近距離で撃っても『熊』には効かないかも。たまにスラッグが弾かれるって聞くし、やっぱりライフル弾で遠くから狩るのが確実。ママなんか5.56ミリでも微妙で、7.62ミリじゃなきゃ安心できないって言ってたくらいだから」

「今のマリーは『熊』狩りのプロ。大丈夫」

「……あのリーダーのおにーさんがさ」


 と、マリーは言う。


「今日『熊』に襲われたみたいだよ。接近されるまで気づかなかったって。信じらんないよ。もー」

「じゃあ」


 と、フーコは聞く。


「ちょー強い?」


 ちょっと唐突な感じの問いである。

 そりゃもちろん「よりにもよって『熊』に接近されて攻撃された上で、あんな風にへらへら生きたまま、いまいち頼りないリーダーを続けられているということは」という途中の説明を容赦なく省いているわけなのだから、そうなるのは当然だ。

 普通の人間ならちょっと面食らうところだが、とっくに慣れているマリーは、


「うん」


 とあっさりと頷いてみせた。


「『空飛びディーン』って、結構有名だよ。一番は空を飛べる便利なスキル持ちの探索者としてだけど、もうちょっと詳しく知ってる人は――」


 くるり、と。

 宙に目を向けたマリーは、それを教えてくれた探索者たちの、如何にも恐ろしい人物について語るような顔を思い出している。


「――とんでもなく強い探索者だって言ってた。威力探索に参加しないのがおかしい、って。武装してる『熊』の集団を一人で相手にして、そのまま壊滅させたこともあるんだって」

「全然見えない」

「ねー」


 マリーは笑顔で同意してから、


「……今日の『熊』さ。『鈴』が反応しなかったんだって。たぶんその個体だけだと思うって言ったけど」


 と、ため息を一つ。


「もし私だったら、死んじゃってたよ」


 そのまま言葉を続ける。


「前みたいなラッキーは、たぶんないから――だから『鈴』頼りじゃなくて、きっちり警戒しないとね」

「私も『熊』は嫌い」


 ぽつん、とフーコは言う。


「大嫌い」

「大丈夫だよ」


 そう言ってフーコは、ひょい、と今度は自動小銃を手にして、やっぱり弾が抜かれていることと安全装置を確認してから、銃口を明後日の方向に向けて「ばきゅーん」と再び口で言った。


「追っかけてくる悪い熊さんは、近づかれる前に私が撃っちゃう。私にもフーちゃんにも、もう二度と近づけさせないよ」

「うん」

「だから、フーちゃんは私を乗せて、ひたすら走って。全力疾走だよ」

「いつも通り?」

「いつも通り」


 そう言って、マリーはくすくす笑う。

 そう聞いて、フーコも少しだけ笑う。


「それじゃあ、今夜はちゃんと銃の整備をしないと。『銃は大事なお友達だから大切にすべし!』ってママが言ってた」

「手伝う」


 ふんす、と。

 フーコは例のガッツポーズをした。


「また暴発させるからダメ」


 しゅん、と。

 フーコのガッツポーズが終了する。

 ぐずぐず、と。

 いじけたように何かぶつぶつ言う。


「それよりも聞いて聞いて!」


 と、手際よく銃を分解しつつ、落ち込んだ様子でいじけたオーラを発してぶつぶつ言っているフーコに、マリーは一層潜めた声で言う。


「ディーンさんとアリソンさんの関係について! 付き合ってないみたいなんだけど、でもじゃあ『どんな関係?』って聞いてもはぐらかされるし、絶対怪しいと思うんだよ! なにか大人のかんけーだよきっと!」

「興味ない」


 と、まだちょっといじけたオーラを出しているフーコはそう言って、そっぽを向く。いつもの無表情無関心の姿勢である。

 が、マリーは「にまー」と笑って、銃の整備を行いながら、何とも鬼畜小悪魔ちゃんらしい声でフーコに囁く。


「……ほんと? ほんとに興味ない?」


 その囁きにも無表情無関心を貫くフーコ。

 が、頬やら耳やらをちょっと赤くした。

 そのまま数秒、数分が経過して。

 フーコは観念した。


「……聞きたい」


      □□□


 二人の恋バナが始まった、ちょうどその頃。

 一人の男が戻ってきた。

 今日の仕事の進捗状況の確認もせず、もちろん各種道具の後片付けもせず、夕飯の準備も手伝わず、アリソンとマリーの愛が込められた「餌」も食わず、夕飯の片付けも手伝わず、明日の準備もせず――つまり何もしなかった。

 その間中、完成途中の拠点の周囲をぶらぶらして帰ってきた。そんな奴である。

 控えめに言って、探索チームのリーダーから見せしめに八つ裂きにされても仕方がないレベルの独断行動である――問題は、八つ裂きにすべきリーダーがそいつ自身であるということだ。


「すっかり夜になっちゃったな……」


 もちろん、ディーンである。

 一切悪びれた様子もなく、空のダンジョンらしい強い夜風に前髪なんかなびかせながら、さも大物であるかのような風情で独りごちる彼に対して、横合いから、


「あんた何やってんすか」


 と、即座に声が掛かる。

 もちろん、アリソンである。

 厄介ごとを片っ端から押し付けられている腹いせに、リーダーを八つ裂きにやってきた副リーダーだった。


「やあ、アリソン」


 ディーンは笑顔を浮かべた。

 至近距離で「熊」に遭遇して、もうどうしようもないと悟った探索者が浮かべる笑顔とちょっと似ていた。


「まだ起きてたんだ。珍しい」

「リーダーが不在だったんで」


 アリソンは笑顔を浮かべた。

 遠距離から「熊」を発見して、銃火器を取り出し照準に捉えた探索者が浮かべる笑顔とちょっと似ていた。

 


「『もう知らん』とか言って寝るわけにはいかねっすよ」

「真面目だなあアリソンは」

「ぶん殴るっすよ」


 ひい、と情けない声をディーンは上げる。

 はあ、と呆れた吐息をアリソンはついた。

 もちろん、二人とも理解している。

 本気で戦り合えば、アリソンはディーンに触れることすらできないし、その気になれば、ディーンはアリソンをどうとでもできる。

 ちゃんと、二人とも理解している。

 でも、そういうことにはならない。


「で、何してきたんすか」

「えーと……さ、散歩?」

「そのついでに『熊』狩りっすか」

「……分かる?」

「ったりめーっすよ。ディーンはそういうの誤魔化すのが下手過ぎなんす」

「ははは」

「……それで、何体仕留めたんすか」

「とりあえず、近寄ってきた五体だけ」

「『五体も』って言った方がいいっすよ」


 探索者を統括管理している「協会」と呼ばれる組織があって、そこが出している対モンスター用のガイドラインというものがある。

 そしてその中で「熊」についてのガイドラインは現在、このように書かれている。


『まず「熊」を一体を相手にするときに推奨される探索者の数は四人。全員が最新のライフル銃か、それ以上の威力を有する武器を装備していることが望ましい』


 ガイドラインは、さらにこう続く。


『一定の距離を保ちつつ移動。相手がこちらを感知して冬眠から目覚めたことを「鈴」を使って逆探知。すぐに他の冬眠中の「熊」を起こさないようその場に留まって、同時に四方を警戒。こちらに向かってくる相手を発見し、近づかれる前に撃ち倒すこと』


 このガイドラインだが、最初に出されたものが素人が作成したとんでもない代物だったため、高名な探索者たちがぶちキレて「俺たちに書かせろ」と修正された経緯があり、この手のものとしては、意外と優秀だ。


 ただし、所詮はガイドラインである。


 実際には、地形を利用されて奇襲を食らったり、うっかり複数の「熊」を起こしてしまったり、ただ単純に撃ち漏らしたりして、一人、二人食われたり、酷いときは全滅したりすることがしょっちゅう起こっている。


 そして、そんなガイドラインなんてまったく無視して、散歩がてらに「熊」を捻り潰す、ディーンみたいな例外もいる。


「そういうこと平気で言うから、他の探索者に怖がられてるんすよ」

「え、そんな怖がられてるの?」

「かなり」


 そうか……、と少しショックを受けている様子のディーンに、アリソンは尋ねる。


「それで……『鈴』はどうだったんすか」

「ちゃんとどの『熊』にも反応してたよ」


 と言って、ディーンがぶら下げてみせるのは、「鈴」と呼ばれる、ストラップの付いた小さな卵みたいな魔術装置。ダンジョンを探索すると幾らでも転がっている代物で、専門の魔術者がちょっと弄ってやったものが「熊」対策の道具として探索者に支給される。

 何でも「熊」は魔術的な感知手段を持っているらしく、基本的に、冬眠中のときはそれで人間を感知し、目を覚まして襲ってくるらしい。その「熊」が周囲に放っている感知手段を逆探知するのがこの「鈴」なのだという。ちなみに、びぃいいいっ、と如何にもやばそうな音で知らせてくれる。

 そして。

 何かの拍子に、冬眠から覚めたまま活動している「熊」が稀にいる。その中に、この魔術な感知手段を使わず、五感を頼りに人間を襲ってくる個体がごく稀に、本当にごくごく稀にいる。

 その場合、当然に「鈴」は鳴らない。

 気づいたときには、もう背後にいる。

 熟練の探索者でも容赦なくやられる。


「だからたぶん、最初の一体だけが例外だったんだと思うよ」

「そっすか……」


 ほっとした顔をするアリソンに、冷や水を浴びせるようにディーンは付け加える。


「たぶんだけど」

「たぶんすよね……」


 探索者は割とよく死ぬ。

 どれだけ経験を積んで、どれだけ油断せず、どれだけ慎重に行動しても、ほんの些細な不測の事態一つで、死神の鎌が首元を狙ってくる。それをどうにか避けられなければ、そこで全てがおしまいになる。


 アリソンがディーンに尋ねる。


「あの娘たちのこと、心配してるんすか?」

「それは君だってそうだろ」

「そりゃまあ」


 と、あっさりアリソンは認める。


「あの二人、あれで結構優秀みたいっすよ。通信相手の『協会』の人がめっちゃ太鼓判押してました」

「へー。有名なのかな」

「知ってる人は知ってる、って感じらしいっすよ――最近だと『大古洞』の新生成箇所への強硬経路探索で奥まで潜ったところで、貸与されてた転移魔具の不具合で戻れなくなったって」


 うわあ、とディーンは思わず言った。

 それ絶対死ぬパターンだ。


「で、死んだと思われてたら、そのまま自力で戻ってきたらしいっすよ。しかも途中で他の探索者救助してきたらしいす」

「そりゃ優秀だ」

「特に、あっちのマリーって娘は、とんでもなく優秀っすね」

「え? 可愛いだけの普通の子だろ?」

「いや、騙されてるっすよそれ……あの子、何であんな格好にしてるかは知らねっすけど、アレたぶん、魔術的な装備すよ。下手な防護服より頑丈っす。もう一人のフーコって娘は……まあ、その、よくわかんないっすけど

「ああ、あの子。たぶん強いよ」

「は? ただの変な子じゃないっすか?」

「あの子、めっちゃ脚出してるだろ」

「あー、はい、めっちゃ出してるっすね……なんすか。あの子のそゆとこ見てるんすか。確かにめっちゃ美脚っすけど」

「違うって」

「何が違うっていうんすか」

「足出してるのに怪我してない」

「それがどうしたんす――」


 ――か、と言おうとしたところで、アリソンは黙った。

 何たって、ダンジョンはいろんなものが転がっていたり生えている場所である。

 もちろん、このダンジョンも例外ではない。肌を露出していれば、ただ普通に歩いているだけでも、擦り傷の一つや二つはできてしまうはずだ。ちなみに、アリソンは今日の朝、その辺に突き出ていた何かの装置にけっつまづいて見事にすっ転んだ。防護服を着ていなかったら、プライド以外もきっとズタズタだっただろう。


「……何かのスキル持ちっすかね?」

「スキル持ちだろうけど、それとは別かも」

「別?」

「ただ単に上手に歩いてるだけなんじゃないかな。怪我しないように」

「……それ、まじで言ってるっすか?」

「まじ。似たような奴を知ってるから」


 あーもー、と。

 アリソンは一つ呻き声を上げて、それからため息を吐いて、言う。


「……凡人としちゃ嫌になるっすね」

「そうだね。若い子ってやっぱすごいよ」

「何さらっと自分も凡人の枠に入れてんすか。あんたも大概すよ? ディーン?」

「割と無能って怒られてるんだけど……」

「そりゃ、支援の仕事ばっかやってるからでしょうが。私から言わせれば、スキルの無駄遣いっすよほんと」


 そう言ってから、アリソンはふと黙り込み、不意に改まったような口調で言う。


「ディーン」

「な、何?」

「私のことどう思ってるっすか?」

「え」


 ディーンは目を丸くする。

 アリソンは返答を待った。


「それは――」


 と、ディーンは何とか言葉を絞り出した。


「――男女の関係として?」

「や、普通に仕事仲間としてっすね」

「紛らわしいんだよっ!!」


 ディーンは思わず絶叫した。

 近くのテントの中で固唾を呑んで聞き耳を立てていた探索者――例の料理のできる、真面目そうな女性である――がその叫びを聞いて、びくり、と身を竦ませた。


「わざとだろそれっ!?」

「男女としては――まあ、うん、他に良い男もいないですし、ディーンにその気があるなら別に一緒になってもいいかな、ってくらいの感じっす」

「嫌だなその微妙にキープされてる感じ!」

「お互い良い歳になったとこで『まあこいつでいいか』くらいな感じでくっつきそうな感じなんすよね」

「そんな妥協したような結婚は嫌だ! くそっ、見てろっ! 僕だってこれでも一応スキル持ちだ! 『きゃー! かっこいー!』とか言って好きになってくれる女の子の一人や二人――」

「ああ、いるっすね」

「ちくしょう馬鹿にしやがって!」

「や」


 と、アリソンはそこで首を横に振って、軽く笑ってみせる。


「これ、真面目な話っす」

「……」

「女の子にきゃーきゃー言われるかってのは、まあ、知らねーすけど。でも、そこら中の威力探索チームから引く手数多でしょ? なんせ『空飛びディーン』すから」

「……まあ、それなりには」

「今回みたいに、私みたいなフリーの便利屋と組んで、慣れない仕事のリーダーやって――みたいなことばっかやってていいんすか? 宝の持ち腐れっすよ?」

「そうかな。楽でいいと思うけど」

「本当に? 本当にそうっすか?」

「妙に食い下がるな」

「私はっすね」


 と、アリソンは片目を閉じて言った。


「ディーンと一緒に仕事するの好きっすよ」


 ディーンはちょっと返事ができなかった。

 幾つかの感謝の言葉は思い浮かんだ。

 でも、それじゃあ全然足りなかった。

 そんなわけで、返事ができないでいる内に、アリソンは言葉を続けた。


「でも、ディーンはどうなんすか?」


 と、アリソンはさらにそう続けた。


「私に気ぃ遣ってくれてるんすか?」


 何だ、と。

 ディーンは思った。

 何だそんなことを気にしてたのか、と。


「もし、そうなら――」

「違うよ。アリソン」


 と、ディーンは言葉を遮った。


「それは違うんだよ。ただ、僕は――」


 ディーンは、少しだけ、思った。

 今なら。

 アリソンになら。

 あの「竜」の話をできるかもしれない。


「――僕は、あのとき」


 そこまで言いかけ、でも、結局やめた。

 代わりに、聞いた。


「ねえ。アリソン」

「……何すか」


 結局、答えをはぐらかされた形になって、ちょっと不満げな顔で答えるアリソン。そんな彼女に、ディーンは尋ねる。


「小さい頃にさ、夢ってあった?」

「家族が欲しかったっすね」


 即答だった。

 しかも思った以上にマジな答えだった。


「素敵な旦那と一緒になって、可愛い子どもをたくさん産んで、みんなで仲良く暮らすんす。いい夢でしょ?」

「叶うといいな」

「そこで『なら、僕とその家族を作らないか?』とか言わないから、ディーンは男として何かこう微妙なんすよ」

「うるさいな」

「それで、ディーンの小さい頃の夢は、どんな恥ずかしい夢だったんすか」

「ええっと、その――」


 何か勝手に恥ずかしい夢として決めつけられているのが癪だったが、まあ、確かに恥ずかしい夢だった。


「――竜を倒せるようになりたかった」

「……何すかそれ?」


 きょとん、とした顔をアリソンにされた。

 無理もないよな、とディーンは苦笑した。


「物語に出てくる英雄みたいになりたかったんだ。竜とだって戦えるくらいに、すごく強くて、そして勇敢な夢物語の中の探索者――でも、そうは成れなかったんだ。成れなかったんだよ。僕は。だから、威力探索チームに入らないのも――」


 ディーンは、目を閉じる。

 目を閉じれば、あの「竜」のことは、昨日のことみたいに思い出せる。

 あのときの自分のことも。


「――ただ、それだけが理由」

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