【短編】あの頃

@anko37564

【短編】あの頃

あの頃、

永遠かと思われる程長く、小さな私たちの時代はいともあっさり終わりを迎えようとしていた。

卒業、そして門出が近づくその季節

桜が咲き染める兆しと共に、子供らは戦争へと向かうのだ。

生きるための戦争。 社会が決めた戦争だ。

「あんたさ、いつまでそんなふざけてる訳?」

あいつ、探偵になるとか言ってさ

せっせと良い子のレール進む気満々で勉強真っ盛りな私を尻目に、小説ばっか読んでやがったんだ。

まるで勉強してるとこなんて見たことない、ましてや受験が近い今でさえ

大嫌いだった

だから言ってやったよ

「わたし、いいとこ行くから いつまでも子供じゃないし」

寝そべりながら、あいつは言う

「お前は、それでいい訳?」

良いに決まってる

悔しいけど、自分にはこれしかないし

だから、負けられない

でも 悔しくて、憧れていた

あいつみたいな自由な、馬鹿に

それが、ほんのちょっと前のこと

ちょっと前のことだったのに

「落ちた」

受験から、レールから

頑張った 頑張ったのに

それなのに、あいつは、

あっさりわたしより良いとこ受かってた

なんで?

あいつの背中無駄におっきくて、凄く綺麗な女の子と肩並べて

なんだよ、馬鹿の癖に

「あんたさ、探偵になるとか言ってたよね?

やめたの?」

なんだよ…

「いつまでも子供のままじゃいられねえから」

勝手に大人になんかなってんなよ

置いてかないでよ

何も言えなくて、

子供みたいに泣いたよ

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