転生無用!バスターエルフ~最強賢者は無能力になっても諦めない!?~
ながやん
第1話「エルフとは?という哲学的な出会い」
悲鳴が絶叫を連れてきた。
平和に思えた村の光景が、一変する。
少年はすぐに、逃げ
少年の名は、シズマ……
ここではない時、今ではない場所から来た
「モンスターだ! 逃げろおおおおおっ!」
「
「お、おいっ! ボウズ、なにを――まさか、お前っ!」
そう、そのまさかだ。
シズマは、
手にした
彼に振り返った何人かが、脚を止める。
だが、気にせずシズマは巨大なモンスターの前に立った。目の前に今、そびえる
荒ぶる巨体の前でも、シズマは
彼は
「おいおい、こんな
シズマを見下ろし、サイクロプスが両手を振り上げる。
サイクロプスは、古くは神々に
だが、その野望を挫くために現れた少年少女たちがいる。
「悪いがこの村は気に入ってんだ……平和でのどかで、オマケに飯が
シズマは、高速で呪文を唱え出した。
この世界で全ての人が持つ、内なる魔力を
魔法の術式を組み立て、シズマはカッと目を見開いた。
「
誰もが言葉を失った。
サイクロプスさえ、ただならぬ覇気に固まり凍る。
シズマは杖を敵へと突きつけて、ポーズを決めていた。
――数秒の、沈黙。
見守る村人たちも、その
だが、思い出したようにサイクロプスが両腕を振り下ろす。
間一髪で避けたシズマは、地べたを不格好に転がり叫んだ。
「……うん、やっぱり駄目だな! 魔法、使えねえ!」
そう、シズマは知っていた。
自分が魔力を失っていることを。
そして、周囲の人々も思い出したように声を張り上げる。
「ああっ、やっぱりだああああ! あいつっ、
「抜け駆けして魔王の城に突っ込んだ
「そうだ……
シズマは心の中で、大正解だと
噂は真実で、シズマにとっては現実だ。
この異世界は、魔法文明。人々の暮らしは中世にも似た封建社会だが、衣食住の全てに魔法の技術が取り入れられている。魔法を使えない人間でさえ、持って生まれた魔力でマジックアイテムを使って生きていた。
そのための魔力が、今のシズマはゼロなのだ。
そんな彼を
「クソッ、やっぱり無理なのか!? こうなりゃ……逃げの一手だ! あばよ! もっと田舎の方で、毎日だらだら暮らせる場所を探すしかねえ!」
自分でも最低だと、シズマは思う。
でも、もう自分にできることはない。
認められずに飛び出したが、現実は非情だ。
かつては仲間たちと共に、英雄だった。剣と魔法の世界で、世界を救う大冒険の旅をしていたのだ。その理由がシズマには、確かにあったのだ。
だが、それはもう今は過去。
魔力を失い、
そして今は、滅びゆく世界の
そんな生活も今、サイクロプスによって破壊されつつある。
「さあ、トンズラだ! 最強ってのは、勝てる相手としか戦わねえことだからな……ん? いや、待て……待てよ、待てって!」
周囲と同じく、シズマも逃げようとした。
だが、その目は見てしまった……むしろ、
「いやああああっ! 助けて、パパ……ママッ!」
逃げ遅れた小さな女の子が、へたり込んでいる。
そのすくむ身体を、サイクロプスの黒い影が
思考を
身体能力は
「大丈夫か!? クソッ、俺はなんて馬鹿を」
迷わず女の子を抱き締め、全身で
他に選択肢はなく、選択を許さない瞬間だった。
死んだ、ゲームオーバーだ……そう思った。
腕の中で震える、女の子一人救えない。
そう思ったが、最後までシズマは
諦めないことだけが今、彼ができる唯一の戦いだった。
肩越しにサイクロプスを睨み返した、その瞬間だった。
「――そこまでですっ! 人々を
同時に、
そして、シズマは見た。
目の前に今、完全武装の少女の背中がある。
巨大な剣と盾を構える少女は、まばゆい金髪から
「一撃必殺っ、燃えませ
エルフの少女は、全身をよじって筋肉をバネに変える。
そう、エルフだ……美しくも
だが、彼女が引き
それは、村を襲う驚異と一緒に、シズマの中のエルフ像をも
「な、なんだ……誰だ、脳筋エルフ! お前はっ! ――ガッ!?」
あまりにも大振りな、それは全身全霊の
サイクロップスは縦に真っ二つで、そのまま剣は大地を
飛び散る
遠のく意識の中で、自然と女の子を守るようにうずくまる。
それがシズマと、ハイエルフの
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