第4話 夏休み
私は連休中、ほとんどパソコンに向かっていた。
ネットでようやく見つけた裏サイト業者。
お金を払えば復讐の手伝いをする、そういう業者だった。
高い料金を払い、角田さんの家に盗聴器を仕掛けた。
恐らく角田さんの死亡でローンは免除になり、新築の家は奥様の物になる。
忌明けしたら浮気相手を呼ぶのだろうか。
考えだしたら憎しみが止まらない。
連休中、ずっと盗聴していた。
ある日、奥様の親しい友人が家を訪ねてきた。
浮気の話は出てこなかった。友人には云っていないのかもしれない。
時々会う友人よりも、毎日会う会社の人間の方が変化に気付く。
小田桐の彼氏からの情報によると亡くなる前の角田さんは、沈んでいる時が結構あったそうだ。
そういった所も女子社員には絶対に見せない。
私は角田さんを思い出して、やるせなくなった。
哀しいのか、奥様が憎いのか、こんな事をしている自分が虚しいのか。
連休もあと二日、土曜の夜だった。
いつもと違う声が盗聴器から聞こえてきた。
「xx様から角田誠様にお届けです」宅配業者が来たようだ。
亡くなった角田さん宛てに届いた荷物。
戸惑っている奥様に、宅配業者の声が続く。
「こちらは懸賞の当選品でして、レトロブームに乗ったウォークマンとカセットのセット商品です。メーカー様から当選者に多数出荷されていますのでご安心してお受け取り頂いてもよろしいかと。不安でしたら受け取り拒否も可能ですが……」
角田さんが生前に送った懸賞の当選品という設定だろうか。
角田さんは音楽が好きだった。
カセットテープを聞いてみたいけれど、中々気に入ったデッキが売っていないと云っていた。
ウォークマンなら気軽に聞ける。奥様、聞いてみてください。
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