第7話 助ける為に進む──

 ミアを助けるためには薬師の婆さん曰く、万能薬が必要だろうとの事。


 ならその万能薬はどこにあるのか?


 今住んでる国の首都まで行けば高価ではあるが売っているそうだ。



 正直、馬車で片道2週間もかかる道のりを行っている時間はない。それに金なんかそんなに無い。



 申し訳ないと分かっていながら、他に手はないか薬師を問い詰めたら────可能性の話をされた。



 今いる所より、更に北に行ったら洞窟があるらしい。


 そこには魔女が昔から住んでいるらしく、その魔女が貯め込んだといわれる金銀財宝や武器防具、魔道具、薬、なんでもあるという噂だ。


 一昔前に、財宝を求めて冒険者や、軍が向かったそうだが────誰も帰って来なかったそうだ。


 それからは物好きな冒険者ぐらいしか行かないらしい。もちろん帰って来ないらしいけど。


 それでも俺はそこに行くしかない! ミアの残り時間はそんなに多くない。



 魔女の洞窟まで身体強化したら半日ぐらいで着くはずだ。


 話が通じるなら話し合いという手もあるが、通じないなら薬だけでも持って全力で逃げる。


 薬師の婆さんからは散々注意もされたし、餞別に体力回復と魔力回復ポーションを数本ずつ渡された。

 ありがたい話だ。絶対帰って婆さんに再度お礼を言おう。


 体力回復ポーションは母さんに渡してミアに飲ませるように伝えた後直ぐに出発する────



 ────俺は全力で荒野を駆け抜けながら────ふと思う。



 ん? そういえば魔力回復ポーションを渡されたが、使……それに何でそんなに親切にしてくれるんだろう?


 ポーションとか高価なはずなんだが……。


 走りながら考えていると────目の前に洞窟が目に入る。


「やっと、着いたか……」


 思ったより、早く着いたな……。


 俺の全力は以前より限界値が上がっているようだ。訓練しておいて良かった。


 魔力回復ポーションを飲み、洞窟の中に入ると、広い空間に切り替わる。


 おそらく空間に作用する魔法でもかけてあったのだろう。


 そして、そこには大量のリザードマンがいた。討伐ランクは確か父さんに聞いた話によるとC────だったはず。


「数はおよそ……100は超えているな。やることは変わらねぇ! 八岐の舞!!!」


 8本の鎖が俺の右手から放出される。蛇のように蛇行しながら進み、絡み付いては動きを封じ、尖った先端で顔面など、防御の薄い所を貫いていく。


 俺はなるべく、囲まれないように鎖を上手く使い、適度な距離を保ちながら戦う。


 たまに近くに寄ってきたリザードマンは素手で殴り飛ばして、戦線を維持する。


 もちろん身体強化は常にかけているので2メートル近くあるリザードマンであっても、身長140ぐらいの俺でも軽く吹っ飛ばせる力はある。


 リザードマンも馬鹿ではないのか、隊列を組んで波状攻撃を始めていた。


 トカゲの癖にやるじゃねぇか。


 戦闘が開始して30分……。


 体力的にも魔力的にも限界が近いな。


 このトカゲ共はどこから湧いてくるんだ? さっきから倒しても倒しても数が減っている気がしない。


 魔力をかなり使うけど、あれを使うか。


 これだけ広ければ問題ないだろう……。



 俺は避けながら、集中する。


 イメージは極太の鎖、そしてこのフロア限界近くまでの長さだ。


 ────よし、完成だ────


「おらぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


 俺から上に具現化して、そのまま重力の力を借りながら振り下ろし、地面に当たらないように横薙ぎにしながら360度回る。


 すると、圧倒的質量に一気にリザードマンはドンドン押しつぶされていった。


 断末魔がそこら中に響き渡り砂埃が舞う。


 俺は魔力を使い果たし、酷い頭痛に襲われので、俺は直ぐに魔力回復ポーションを飲んで迎撃体勢をとる。



 砂埃が少しずつ落ち着いてきた。


 視界がクリアになってきたので、周りを注視するが、周りにリザードマンの影はない。どうやら全滅させれたようだ……。


 ホッと一息着く。


 まだ奥があるようだ。まだ始まったばかり、泣き言など言ってられない。


 しかし、入った瞬間からこの難易度とは。この洞窟の主は性格が相当悪そうだ(主がいるのかわかないけど)


 こんな所で足踏みしてる場合じゃない。体力も超回復により戻りつつある。


 最後の魔力回復ポーションを飲み────足を進める。



 ────次の部屋で待っていた魔物は討伐ランクBの牛の化け物、ミノタウロスだった。


 ────数が50体ぐらいはいるな。


 まだ入って2部屋目でこれだと、昔の軍が帰って来ないのもわかる気がする。無理ゲーだろこれ。


 俺の力がどれだけ通用するのだろうか。せめてこれが対人戦だったらな……。


 泣き言なんて言ってられない────やるしかない。


 ミアのために必ず、薬を手に入れる……そう自分を奮起させる。


 一体のミノタウロスがこちらに向かって、手に持っている斧を振りかぶる。


 俺は身体強化を行い、捌いていく。手には一応、何もないよりはマシだろうと、先程のリザードマンが使っていた片手槍を持っている。


 爺ちゃん譲りの槍捌きで凌ぐしかないか。


 受け止めると間違いなく潰される未来しか見えないので、出来る限り受け流している────が、意外と攻撃速度が速く、俺の反応速度を少し上回っている。


 その為────次々と攻撃を放ってくるミノタウロスの斧が段々と擦り始める。


 身体強化を解くと吹き飛ばされそうなので節約など出来ない。


 一体でこれなのに、全部を相手にできるのだろうか……。


 たかが、開拓村の子供が討伐ランクBのミノタウロスを相手に良く戦っていると思う。


 諦めの思考に入ってしまった俺の眼前に斧が迫っていた。


 そして────



 グジャッ



 俺はミノタウロスの斧により、ミンチになり視界が途絶えた────

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