第76話 閑話 〜未来を〜
今日でやっと────
────千年だっ!
ちまちま数えてた甲斐があったっ!
「おいっ────」
この地獄の日々からやっと抜け出せるっ!
「おいっ、弟子────」
自由だっ! ついに俺は自由になるんだっ!
「人の話を聞かんかぁぁぁぁ!!!」
「いつつ、痛いじゃねぇか師匠っ!」
いつの間にか俺はこの男を師匠と呼ぶようになった。性格は爺ちゃん並みに無茶苦茶だが────強さは確かだ。
この千年間の修行は地獄で超が付く程スパルタだったが、今では感謝している。
それより、千年も修行で過ごした俺のメンタルを褒めて欲しいっ!!!
「ったく、この千年で即死回避と超回復だけは一人前になりやがって……これから大事な話をする」
いつものような嬉々として俺を切り刻む師匠の姿はそこにはなかった。
俺も真剣に眼差しを向ける。
「どうしたんですか?」
「これから現実世界に戻る事になるが、その前に────信託を授ける。こいつがなっ!」
こいつ? どこにも人影は見当たらない。
「ボケたんですか?」
「失礼な。そこにいるわっ!」
そこって──俺の隣?
視線を横に移すと。
────わっ!? なんか女の人いるし!? めっちゃ美人だけど、表情がピクリとも動かない。
「私は女神ノルン。運命を司ります。よろしく」
運命とノルンって、確か──北欧神話の女神じゃなかったか?
「えっ、あっ、よろしく?」
俺はなんとか返事をする。まぁこの際、北欧神話云々は置いておこう。
「では、もう時間もありませんし────信託を。じじぃがもう少し根性出せればいいんですがね」
この世界を構築している神の爺さんは女神様からも扱いが雑だった件について。
まぁ爺さんの事はどうでもいい。
信託をくれるらしい。
「信託ですか?」
「そうです。まず────厄災が一つ復活します。場所は貴方の生まれ故郷の国になります。その次に復活するのは、西にある海上都市────────────その次は聖王国の────────────です。この3つは確実に復活します。これらは人的に引き起こされますので、敵は厄災だけだと思わない事です。今の所はこの3つが緊急性が高いです。その次に貴方にとって重要な厄災が復活するでしょう」
「────わかりました。情報ありがとうございます」
俺はもう厄災を討伐する事を決意している。
皆と幸せに暮らしたいからな。その為の
だけど、きっと一筋縄では行かないのだろう。
修行を始める前は討伐には乗り気ではなかった。
だけど────このままだと、厄災である八岐大蛇にアナスタシアは飲み込まれ一体化する。
八岐大蛇とアナスタシアは繋がっている為、
詳しい事は話してくれなかったけどアナを助ける為に──
────やるしかないっ!
笑顔で過ごす為になっ!
「良い返事です。そんな貴方に更に情報を。一つ目の厄災の時────出会いと別れがあります。それは貴方の縁ある者。そして────貴方の恋人であるアナスタシアですが────選択肢を間違えてはなりません────時間切れですね。それでは貴方の運命が切り開かれる事を祈ります」
「ちょっと待って!!!」
そんな俺の言葉と裏腹に目の前の女神ノルンは消える。
アナスタシアにやっぱり何かあるのか? ちゃんと教えてほしかった……。
視線を師匠に移すと、こちらも消えかかっていた。
「レオンよ。必ず討伐し────役目を果たせ」
「あぁ、師匠────俺の
俺の役目は厄災の討伐だが────
「そうだな。愛の力でな」
「もうやめてくれませんかね? 千年ずっとそのネタ引っ張ってますよね? 飽きないんですか?」
「飽きねぇよ。お前が幸せになる事を祈っている。だからこそ────選択肢を間違えるなよ?」
いつものように笑う事なく、真剣に伝えてくる。
やはり、何かあるな……。
「はい、自分の女ぐらいちゃんと守るつもりです」
「……これは選別だ────受け取れっ」
「────これは!?」
「そう、俺の使ってる一振りの刀だ。お前なら使えるだろ? これは──ただ、よく切れるだけの刀だが────未来を切り開くお前には必要だろ? 後で連結しとけ」
消えかかっている師匠から刀を受け取る。
「ありがとうございますっ!」
頭を下げて礼を告げる。
「あぁ、琴音ちゃんを幸せにしてやれよ? じゃぁな────」
────!? なぜここで琴音の名前を!? そう聞こうと顔を上げると既に師匠は目の前から消えていた。
ふと、貰った刀に視線を向けると────
「これって、蔵にあった奴じゃ……」
かつて、琴音を殺した連中を襲った時に使った刀だった……。
そうか……そういう事か。
俺は刀を空に掲げ。
この刀と共に未来を切り開く────そう
パリンッ
この世界が割れた────
どこが、よく切れるだけの刀だよ!?
切れすぎだろっ!!!
そして、俺の体は粒子に変わり消えていく最中。
『なんて事してくれるんじゃぁぁぁぁぁっ』
神様の爺さんの声が木霊した。
うん、なんかすまん。わざとじゃないんだ……。
そう思いながら俺も消える。
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