第56話 決着?
〜レオン視点〜
俺は向かってくるミアを足を止め、唖然と見ていた。
ミアが歩く度に地面は草木が生え、俺を攻撃したクリスは植物で絡め取られ、ガイが鉄を飛ばしても木々が防ぐ。
目もやはり見えているようで俺を見据えて進んでくる。
「レオン……」
「ミア……」
ミアは俺の元に辿り着く。
そして俺の胸元に飛び込んだミアを優しく包み込んだ。
ミアは顔を上げて笑顔で言う。
「迷惑かけてごめんね。今度は私が守るね!」
既に無双状態だとミアに伝えるかどうか迷ったが、苦笑して頷き、聞きたい事を聞く事にした。
「なぁ、ミア……見えるのか?」
「何故かわからないけど見えるよ。レオンのカッコいい顔が良く見えるよ。そういえば────自爆みたいな事したらダメだよぉ?」
手を胸に当てながらの上目遣いで笑顔とか素敵すぎるっ! 何この可愛い子。
昔の面影を残しながらも可愛く成長している。今着ている白いドレスアーマー的な服装も凄く似合っているな。
近くで見ると成長してるのが良くわかる。特に胸とか……胸とか……胸? 胸しか出てこないな。
だって上から見てると胸の谷間が見えるんだもん。俺悪くない。
「あぁ、気をつけるよ。とりあえず──ミアも戻ったし一安心だな」
視線を誤魔化しながら、周囲を見渡すと────
ガイとクリスはミアにより封じられており、そこ目掛けてシバが乱打しているのをオリバーが守る為に行動していた。
ジョンは倒れているな……。
アリスとミーラはシャーリーさんに介抱されている。
残りは────シオンのみ。
そのシオンは九尾相手に高速で剣戟を放っていた。
俺は鎖が出せるか確認する。
一応出せる事は出せるが────思った以上に伸びないな。遠距離攻撃は無理で中距離も少し怪しい。
シオンと九尾も先程に比べると大分弱体化してるし────条件が悪くなっただけでそんなに状況には変わりがない?
それにこの不活性化ってどこまでが効果あるのだろう?
魔力と恩恵には効果があるっぽいし────シバを見ても先程までの威圧感もないから闘気も弱体化しているな。
ミアは活性化の効果もあるのか普通に植物操ってるし────ミア最強説?
視線をミアに戻すと、笑顔を向けられる。
うん、可愛いな。抱きしめたくなる。
────近付く気配!? 新手か!?
視界に入る距離になると、到着付近にいた教会らしき服を着た人達だった。
ここに来る前に殲滅したと思ったんだが……まだ50人はいるな。どんだけ今回投入されてんだよ……面倒臭い。
「私がやるね?」
「んん?」
俺が聞き返すと同時に植物は一斉に敵に迫る。
ミアの植物って俺の鎖に似てるよな。しかもこの大量の植物攻撃の嵐なんか避けれる人って限られるだろ……。
「シオン様っ! 我らにお任せをっ! 聖女を捕まえろぉぉぉぉ……お? なんだこれはぁぁ! ぐぁぁぁ」
「魔法が使えない!?」
「ひっ、植物がぁぁぁっ」
「寄るなぁぁぁ」
「やめてくれぇー」
「助けっ……」
案の定、敵は何もする事が出来ず、植物に絡め取られ、樹縛される。
その場は阿鼻叫喚の渦だった。
まるでホラーだ。
「見て見てレオンっ! 綺麗なお花だよ!」
「あっ、あぁ、綺麗だね。ミアは凄いなぁ」
無邪気な笑うミア。
確かに……確かに綺麗なんだが。花が出来上がるまでの惨状を見てしまうと、そこまで笑顔になれない俺がいる。頬がぴくぴくしてるのが凄くわかる。
────!? 九尾が消える。
魔力切れか!?
「……ここまで手こずるとは……ゴホッ……」
シオンは片膝をつく。
「何がお前をそこまでさせるのかわからんが────まだやるなら相手をしてやる」
俺は両手に鎖を出し、左手の鎖に氷属性を付与し【氷柱鎖】を、右手の鎖には火属性を付与し【爆鎖】を発動しながら鞭状態にする。
不活性化のせいか、現状これが限界だ。ぶっちゃけお帰り願いたい。
「大地の聖女は国に必要……こちらに必ず来てもらう」
「ことわ──「嫌よっ!」──る……」
俺の台詞はミアに被せられる。
「私の居場所はレオンの所よっ! 誰が行くもんですか!」
決め台詞を取られ、ちょっと虚しい気分の俺だったが、ミアの言葉にやる気を取り戻し構える。
────!? 俺とシオンの間に光の閃光が通る。
「シオンっ! これ以上は貴方が限界だわ。そもそも連日封印の使い過ぎなのに……引きましょう」
クリスがいつの間にかミアの樹縛から抜け出して近くに寄ってきていた。
「これ以上はこちらも不利か……簡単な任務だと思ったが、予想外の事ばがりだ────次合間見える時は必ず、大地の聖女を頂く」
言葉から察するにシオンは本調子ではなかったっぽいな。そこまで必死になるのは聖王国にとってミアはかなり重要な存在なのだろう。
「今度も来たら返り討ちにしてやるよ」
俺はシオンにそう言い放つ。
「その時を楽しみにしている。引くぞっ! クリス転移魔道具を」
シオンとクリスは、おそらく使い捨ての転移魔道具を使い、目の前から去った。
ふぅ、助かったのかな? けっこう精神的に限界かも……。
そういえば、他の十傑は────
「ガイ、ジョンを拾って離脱するである」
「おぅっ! ジョンは────っと、発見。よっこらせっと」
オリバーの声にガイはジョンを探し出して担ぐ。
「いてぇよ! ガイのおっさん! もうちっと優しくしてくれ。骨折れまくって、体に穴空いてんだからよ」
「おっと、わりぃ。手が滑ったわ」
「おっさん! いてぇって! 俺が1番重傷だから!」
ガイは減らず口を叩くジョンをわざと地面に落とし、ジョンは文句を言う。
「何が悲しくて男なんぞ担がんといかんのだ……オリバーこっちはOKだぞ?」
「逃すかっ!!!」
逃げようとする十傑にシバは近くに生えている木々を引き抜き投げつける。
もはや、完全に野生の熊に見えるのは気のせいだろうか? いや、野生の熊でも木を簡単に引き抜いたりはしないだろうな。
木はオリバーの盾で防がれるが────その影に隠れて
あのナイフはミーラだな。
「ぎゃっ」
3人が転移する瞬間に悲鳴が聞こえる。ジョンは再度ナイフによる攻撃を受けて串刺しになって消えた。
哀れジョン……。
俺、ジョンがちゃんと戦ってるシーン見てないけど、一応十傑だし強いんだよな?
雑魚感が半端ないんだが。
まぁ、なんとか終わったか……。
俺とミアはアリスとミーラの元に駆け寄る。
「2人とも無事か!? なんでいるのか聞いていいか?」
「「…………ごめんなさいっ!」」
「怒ってないさ。むしろ助かった面が大きい。フローラの転移で離脱してもらったはずだけど?」
「え〜っとね、そのフローラちゃん? に無理言って送り返してもらっちゃったっ!」
微妙そうな顔で言うアリス……。
「アリスちゃんだっけ? 凄かったんだからっ! 僕めっちゃドン引きだったよぉ〜。フローラちゃん半泣きだったし」
ミーラが言うぐらいとは……何したんだ??
「アリス……何したんだ? 正直に答えなさい」
「まず、頼んだら断られたから──剣を使って服を剥いだかな? そしたら、空間魔法が飛んで来たからぶった斬ったっ! それを繰り返したら半泣きで諦めて送ってくれたよ? いい子だねフローラちゃん」
悪気もなくドヤ顔で言うアリス……酷いなっ! 後でフローラを慰めよう。
「それで、僕も便乗してこっちに来たのが経緯かな?」
「そっか……ありがとうな2人とも。正直助かった面も多かったよ。あのままだとミアが連れ去られていたからな」
「「えへへへ」」
照れる2人は頬を赤らめて、俺に抱き付く。
「どうしたんだ?」
「ミアばっかりずるいっ!」
「レー君成分補充なのですっ!」
「私も〜〜」
ミアも加わり俺の左右前が埋まる。このまったりした感じ……戦闘が終わったと実感出来るな。
「お疲れさんっ! 疲れたぜぇ!」
シバは熊モードを解除したようで、そこらへんで酒瓶片手に飲んでそうな、いつものおっさんになっていた。
「レオン君、無事にミアちゃんを助けられて良かったわね。これからもちゃんと守ってあげなさいよ? ミアちゃんもアリスちゃんも大きくなったわねぇ〜」
シャーリーさんはミアを助けれた事に安心し、成長した姿にも感心していた。
ちなみにアリスとミアはシャーリーさんの事がわからないようだ。そりゃあ、わからないだろう……村にいた婆さん姿じゃないんだから……。
「2人ともありがとうございましたっ!」
とりあえず俺は礼を告げる。
「かまわねぇよ! 例の約束忘れんなよ?」
「そうよ? ちゃんと借りは返してもらうわ。私達も助けてね? そうしたらお姉さんが彼女になってあげるわよぉ?」
「いや、約束は守りますが、シャーリーさんは別にいりませんので大丈夫……です」
────唐突に殺気が俺に襲う。
シャーリーさん、ほらっ! 周り見てよっ! 絶対零度の視線向けられてるからっ! 殺気も出てるから!
アリスは刀を握り、ミーラはナイフを増やし、ミアは植物育てる。
俺はシャーリーさんを強く睨む。
「冗談よ、冗談っ! ほら女の子がそんな物騒な行動しない。レオン君もドン引きしてるわよ?」
「「「ちっ」」」
3人は俺を引き合いに出され、大人しくなる。
「ガッハッハッハッ、レオンっ! お前いつか刺されるかもなっ!」
うっさいわ! ミーラからは既に何度も刺されてるよっ!
「さぁ、一度ヤマトに戻ろうか! アイリスとも会いたいしな」
とりあえず戻ったら再開を堪能して、飯だな。
アリスとミアにはカツ丼食わせてやりたいなぁ〜。
もちろん、取り調べ室とかじゃなくて────
ちゃんとしたお店でなっ!
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