第29話 臭いの試練なのか!?

 俺達は現在、次々と殲滅している。


『消え去れっ! 氷結!』


 ハクマは氷魔法を放ち、敵は凍らせて絶命させている。


「きゃははははははっ!!!  死ねっ! 死ねっ! 死ねぇぇぇぇっ!!!」


 フローラは高笑いしながら、空間断裂で敵を真っ二つにしたり、空間爆発で敵を粉々にしている。もはや、言葉は笑い声と死ねとしか聞こえて来ない。ハクマはフローラの横でドン引きしている。


 その空間魔法使えば地竜ぐらいなんとかなったと思うんだが……。本人が無理と言うのであれば無理なんだろうな。


 ちなみに、この部屋にいた魔物はゴブリンだ。数は軽く1万を超えていたと思う。


 大きな部屋に集団でいる緑色のゴブリンは正直気持ち悪かった。というか、万がいる部屋は悪臭も酷かった……。


 この不快感を感じさせるのが試練なんじゃないのか? そう疑うレベルだ。


 そして、フラストレーションが溜まりまくった俺達は自由に攻撃して殲滅しているという所だ。


 もはや連携など無いっ!


 凄い勢いで屠られるゴブリン……可哀想な気もするが、俺達も臭いで気持ち悪い。さっさと終わらせよう。


 フローラなんか目が完全に座っている。凄く怖い。


 しばらくすると戦闘は終わりを迎える。


「大した事なくて良かったな」


『まぁ、僕達からすると大した事なかったね。これ普通の人族ならちょっとした国の危機だと思うよ? 上位種も全然いなかったし良かったね』


 そうだよな……まぁ、なんとか一部屋目は乗り越えたな。


「うぅぅ、臭いが体に染み付いてる……お嫁に行けない……」


 フローラは臭いがそんなに気になるのか……。妖精族って女性ばっかで男性いなかったけど、結婚とかするのか?? 藪蛇そうだしスルーだな。


「さて、次は何が出るだろう」


「うぅ……相手にもされないないんてっ……酷いぃ」


 だって、慰めても臭いなんてどうにもならないじゃないか……。


『ここの臭いキツいからさっさと行こうよ』


「そうだな。こんな所で休憩してると気が滅入りそうだ」


 通路に足を運ぶ。次の部屋までそんなに距離はなく、通路は絵画が置いてあったり、鎧が並んでいた。


 そして、しばらくして二つ目の部屋に到着した。扉は少し高級な家のようになっていた。


「これって段々豪華になって行くのか?」


『そういえば、アナ姉さんいるとこもそうだったね』


 だよな。それより、アナは姉さん呼ばわりされてるのか?


「じゃあいってみよー」


 ギィィイ


 いやいや、フローラさんや心の準備してからにしてくれよ!


「はぁ、行くぞ」


 溜息混じりに足を踏み入れると、そこはまた大きな部屋だった。


 ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ


 そして、目の前にいたのは鎧で出来た魔物、リビングマーマーだった。アナの話だと雑魚だと聞いている。


 ガチャガチャ煩い。


 攻撃が通り難いとはいえ、倒せないことはない。しかし、これまた数が多いな。ざっと見た感じでも1000体はいる。さっきみたいな悪臭ではなく、鉄の臭いなだけマシだけど。


 丁度いいし、連携の練習しといた方がいいかもな。


「それじゃ、パーティで戦うための練習するぞ? 指揮は俺が取るからな?」


『「異議なし」』


 君らそのへん素直だね。やりやすいからいいんだけどさ。


「ハクマは氷魔法で足止め、フローラは止まった奴から空間爆発。俺は敵が寄らないように盾役をする」


『あいよ〜』


「芸術は爆発だぁぁぁぁぁっ」


 ハクマは普通に返事したが、フローラ……君はどこかネジが飛んでないか? そんなので結婚とか出来るか心配だ。


「攻撃開始っ!」


 俺の掛け声でハクマが氷魔法を使い、足止めする。


 リビングアーマは動きが鈍り出す。


 俺は両手から出した八岐の舞にて16本の鎖を使い、襲い掛かるリビングマーマーを近付けさせないように束縛したり、足を絡めとったり、余裕があれば迎撃して立ち回る。


 身動きが取れなくなった所で、フローラの空間爆発が発動する。



 ドガァァァァァ



 その結果、リビングマーマー共は断末魔を叫ぶ事なく木っ端微塵である。まぁ喋れるかわからないけど。


 その繰り返しで特に危なげなく、此処もクリアした。


 悪臭もないので、その場で少し休憩する。



「フローラの空間爆発やばいな」


 空間魔法ヤバいな……使ってみたい。


「フローラは空間魔法の超越者なのですっ!」


『実際あそこまでの空間魔法使ってる人はあまり見かけないから大したもんだよ』


 やっぱそうなのか。ネジがぶっ飛んでるだけじゃなかったんだな。


「お兄ちゃん、固有魔法は先天性? それとも後天性?」


 固有魔法に先天性とか後天性とかあるのか?


「どういう意味だ?」


「固有魔法はだいたい後天性なんだけど、ごく稀に普通に初めから使える人がいるんだよ。その場合は同じ固有魔法同士でも威力が変わるんだ〜。お兄ちゃんの鎖はちょっとおかしいから先天性かなって」


 おかしいとは失礼な。


「う〜ん、どっちなんだろう? 父さんが見せてくれて、試しにやってみたら直ぐ出来たけど……」


 元々使えたって事なのかな?


「じゃぁ、先天性かな? だいたい固有魔法って何かがきっかけで使える事が多いからね。直ぐに出来たなら先天性の可能性が高いよ!」


 固有魔法ってきっかけで習得できるものなのか?


 まぁ、鎖魔法色々と利便性があって助かってるけど。


「じゃぁ先天性だから父さんより、強力だったのかな?」


 今となっては比べるのが難しいが……父さん、ちゃんと逃げられたかな?


『ぼちぼち、行こうよ』


 神妙な顔で物思いにふけっていると、気を使ったハクマから声がかかる。


 何気にハクマって普段は適当なのに優しいな。


 そして俺達は歩き出す。




 ◆◇◆◇◆




 次の扉まで辿り着いた俺は一言。


「これは扉というより、門だろっ!」


 と扉の前で突っ込みを入れた。


 今までの扉より、遥かに大きい。高さ5mぐらいだろうか? どこかの王都とかにあるような門だ。行った事ないけど。


「おら、わくわくすっぞっ!」


 この戦闘民族なんとかしてくれ。


『主、また悪臭が酷い……』


 扉? の前なのに臭いがするって……それもう中入ったらヤバイだろ。


 入るの嫌だなぁ。

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