第153話 予定調和



魔王軍幹部のククモ




自身の何より秀でている点は、『相手の戦闘力を正確に推し量る事ができる事』だ。


相手の実力を視覚、嗅覚、触覚で瞬時に読み取り、確実に勝てる相手、勝てる状態でのみ勝負する。


綿密な情報収集と下準備をおこなった上での戦闘に、敗ける要素は介在しない。


生きてきてただ一つ失敗した事は、エイユに粘られて、聖女を逃した事一度だけ、その失敗も今日でケリがつく。



襲いかかる蜘蛛の爪、


ソウリオは槍で弾き返す。爪から白い煙が上がり蒸発する様に溶ける。



「ほう・・・『聖氣』か・・・」



槍は白い光を帯びて輝いている。

「お前を倒す為の、とっておきだ・・・覚悟!」


ククモが恐れて距離を取ろうとする動きをソウリオは見逃さず、槍を構えて突撃した。


!?


動きがピタリと止まる。



進む事も戻る事もままならない。


「なっ・・・なんだこ・・れ・・・」



「糸だ」



ソウリオの手に細い糸が絡まって離れない。ククモが手を挙げ、ぐっと引っ張ると、糸はソウリオの全身に絡まり、締め上げる。


「ぐっ」


ボキりという鈍い音

これだけで何本か骨が折れたか・・・



はは・・・



ククモは邪悪な笑みを浮かべる。


「なんともつまらない幕引きだ」


結局、お前のその勇気ある行動は無駄だった。いや、せっかく、エイユと聖騎士達が命を賭して守った物を、献上しに来たと言っても良い。


少し頭を使い、状況を俯瞰して考えれば、わかった事だろう?



お前は、エイユの死すら、侮辱したんだよ?



ククモの言葉に、ソウリオの目から雫がポタポタと溢れる。



・・・終わりだ。



そう言って、締め殺そうとした瞬間、




ドゴぅ!!!




爆音と共に、地面が揺れる。

(近い・・・なんだ?)



・・・



(そんなの惚れちゃうだろ!)

(勘違いしちゃうだろうがぁああ!!)


よくわからない叫び声と共に、

一回だけでなく散発的に音が鳴り、その度に、森の大樹が薙ぎ倒される音が響く。


ククモの直感は告げる。

そこに居るナニカは『ヤバい』と


ククモが『ソレ』に気づいたと同時に『ソレ』もこちらの存在に気づいた様だ。

かなり距離があったはずなのに・・・瞬きする間に、詰められて、



「イマの叫ビ・・・聞イタ?」



異様な怒気を放つ、『斧を持った男』がそこに居た。



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