第24話 数分前に言い放ったブーメラン




ユシアの放った一撃で、牛鬼はすべてを理解する。





それは、チー牛にとって一番許しがたい事実


「こいつは俺よりもパワーが上だ」


チー牛にとってその事実は、

唯一の自分のアイデンティー、唯一の強み

自分の存在意義さえ、すべてを破壊される事に等しかった。




ひ・・・



ひひひ・・・

呼吸が短くなる。



思考が後ろ向きになった瞬間



さっき、ドヤ顔で、

イキり台詞を、吐きまくっていた『誰か』の言葉が頭にリフレインする。





「それは『パワー』が足りないからだ!・・・パワー!パワー!パワー!力こそが正義、パワーこそが真理だからだ!」



「パワーで負ける奴に存在価値はない!」



「小細工で生き残ろうとするのは、みっともない雑魚のする事なんだよ!」





・・

・・・

・・・・






あ”ッーーーーー!!!!!!!!!!





調子乗って・・・

イキらなきゃ良かった・・・


数分前の過去に戻ってあのセリフを取り消したいーーーー!!!






脳裏に蘇るのは・・・

かつての幼馴染の「牛美ちゃん」の事だ。

大人になるにしたがってどんどん垢抜けて美人になっていった彼女に


「あんたみたいな『陰気な貧弱』を好きになるわけないでしょ?」


こっぴどく振られた過去のあの瞬間だ。



それから、俺は血の滲むような努力を重ねて強くなった、

いつか彼女に「もう遅い」と ざまぁ するために!





その走馬灯のような回想が、チー牛の頭を駆け巡った後

頭に登っていた血が一気に下がる。





落ち着け・・・




負ければ

ここまでお膳立てされた任務をしくじれば

確実に殺される。




・・・たい


・・・いきたい



生きたい!!



たとえ、『みっともない雑魚』に堕ちようとも!!




く、くくく・・・




どんどん頭が冴えてくるのを感じる。


さっきの奴の一撃、

よくよく考えると、リーチも短いし、溜めも多い。




挑発して、攻撃を誘発して、

鉄の棍棒で奴の「間合いの外から」不意打ちしてやればいい。




パワー勝負から逃げるのは、卑怯?


馬鹿を言え、

いつの時代も勝った奴が偉い、勝った奴が正義なのだ。







$$$







牛鬼は顔を上げ、ユシアの方を見る。

鉄の棍棒を担いで、余裕の表情で「隙」を あえて見せる。




「ははは、もう一度やってみろ、そんな 弱い攻撃 では、俺にダメージを与えられんぞ!」




精一杯強がってみる。

案の定、奴は挑発に乗って、攻撃モーションに入る。



ここだ!



ここで一歩下がって奴の攻撃をスカす。


その後!冥一杯の力でぇえええ!




下がる・・・




下がったはずだ。

いや下がれない、何かが自分の体を抑えて邪魔をする。


身体に巻き付いているのは、黒い手

いや、センシの影魔術


「影魔法、十指呪縛」




まずい

これでは・・・奴の攻撃をもろに喰らう・・・


「くそう!卑怯だぞーーー!!」




爆音と共に




ユシアの斧の一撃は、

牛鬼の体を数十メートル後方に魔獣の群れの一部ごとフッ飛ばした。





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