第5話 偽物勇者
お喋り妖精は、行く道でも話を続ける。
自分は世界樹のふもとに住む妖精で、女神様の命を受けて
勇者のサポートの使命を受けたそうだ。
「やっぱりね、勇者の証の反応がすぐ近くだと思っていたの!」
勇者の証の反応・・・
そんな能力もあるのか・・・
なんとなく冷や汗が止まらない。
だが、ザーコの方が本物って場合も全然ありえる。
ちゃんと腕に発現しているし
崇高な勇者の証が股間に現れるとか、冗談にしても笑えない。
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村の教会には、たくさんの人だかりができていた。
これから、ザーコは聖教会の祝福を済ませた後、
王都へ向かうらしい。
教会の外で、たくさんの人がその様子を見守っていた。
「なんだ、ユシアも見に来たのか」
馴染みのおいさんがこっそり俺に話しかける。
「ええ、『そこの妖精』に勇者を一目見たいって頼まれて・・・」
「・・・妖精?・・・何言っとるんだ、そんなお伽話の存在居る訳ないだろうに」
笑うおじさん、
あれ、ここに居る『妖精が見えていない』?
フェリは、少しむっとしておじさんの髭を引っ張る。
「痛てて、なんだ髭が勝手に」
・・・
半刻後、ピカピカの鎧に身を包んだザーコが現れる。
腕の甲の勇者の証を掲げて叫ぶ。
「村のみんな・・・俺が魔王を討伐して世界を平和にする・・・期待して待っていてくれ!」
わーーー!!!
割れんばかりの声援がザーコに降り注ぐ。
彼の顔はニタリと笑って満足気だ。
ユシアも周りの調子に合わせながら、こっそりフェリに耳打ちする。
(ほら、あれが、勇者の証だよ)
「・・・」
フェリはじーっとそれを見て返事をしない。
そして、ふっとため息を漏らして、こう告げる。
「ぷぷ、あんなの『偽物』じゃない、あの『インクで書いた落書き』が、どうして『勇者の証』なの?」
そうズバリと言い切った。
「・・・インクの・・・落書き?」
驚きのあまり、うっかり声が漏れる。
「あ”?」
しかもザーコに聞かれたみたいだった。
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