いつか、君の名を
ねる
プロローグ
いつか、君の名を
ヒールを鳴らして僕の前を歩く彼女。でも、その姿は曖昧だ。
「ええっと、次の予定はなんだっけ?」
聞き慣れた彼女の声。でも、僕は彼女の声を聞いたことがない。
「たまにはふらっと出かけてみたいな、仕事じゃなくてさ。ほら、空があんなに青いよ!」
楽しげな表情の彼女。でも、その顔はよく見えない。
「……もう。ザクロ、聞いてんの?」
僕の名を呼ぶ彼女。でも、出会ってから九年も経つ彼女の――
――君の名を、僕は知らない。
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